表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひととあやかし  作者: 西園晴彦
6/8

6.

……私達は確かに道を歩いていた筈だ。それなのに何故。何故、宙を舞っているのか。

事の発端は帰り道にあった。

私と然紋は二人で歩いて帰る事になった。日も暮れはじめていたので、少し早足で歩いていた。

今日は良い場所を教えてもらってありがとうございました。また来いよ。なんて、何でもない普通のやり取りをしていた最中であった。

突然、突風が吹いたのである。

「きゃっ!」

「うおっ!?」

何が起きたのかサッパリだったが、砂埃の中に微かに見えた大きな尻尾が、結に現実を理解させた。

それは狐だった。尻尾は二つ。普通こういう時は九つではないのか。漫画ではそうだと、状況の割に呑気な事を思った結。

「フハハハハ!人間だ、人間だ!」

そう言った二尾の狐は結の腕を掴み、引き寄せた。

「結ッ!!」

咄嗟に然紋が叫ぶ。

「フハハハハ!食ってやる!人間は全て食ってやる!」

絵に描いたような悪だ。分かり易すぎる。

「助けて!然紋!」

結は然紋に助けを求めるが、彼は何故か動かなかった。

いや、動けなかったのだ。黒い影のようなものが彼に纏わり付いて離れなかったせいだ。

「くそッ!結!今助けるからな!」

そう言いながら影と格闘している然紋。

そうしている間にも、結の耳元で狐が囁く。

「今直ぐ食ってやるからな……先ずは何処からが良いかな……手?足?それとも頭か?」

このままじゃ本当に食われてしまう。誰か、助けて。

そう思った瞬間、結は宙を舞っていた。そして冒頭に戻る。

「おっ落ちるうぅぅ!!」

宙を舞いながらそう叫ぶと、ぽふっと、柔らかく温かいものに触れる。

「迎えに来たぞ、結」

優しい声音がそう言うと、不思議と安心感に包まれる。

「……冴累!!」

そう、冴累。冴累が来てくれた。だがしかし、結が宙を舞っていたのは冴累のせいでもあった。

「もう大丈夫だ、安心しろ」

結をお姫様抱っこしながら、ふわりと優雅に着地する。

「おい狐、貴様、私の結に何て事をするんだ」

そう言いながら、冴累は然紋に向かって指を振る。すると然紋に纏わり付いていた黒い影が、一瞬にして消えてしまった。

「狐よ、貴様、覚悟は出来ているのだろうな」

怒りの混じった、しかし冷静な声でそう言うと、冴累は結を然紋に押し付けた。

「さ、冴累……大丈夫なの……?」

「……結、奴なら大丈夫だろう。……悔しいが、奴の実力は計り知れない」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ