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ひととあやかし  作者: 西園晴彦
4/8

4.

「婚儀って……その、結婚ってこと……ですよね?」

「ああ、駄目か?」

まるで自分と結婚するのが当たり前とでも言う様な顔をして言う然紋。

「いや、あの、急過ぎますって!」

本当に急過ぎて戸惑ってしまう。真剣な眼差しの然紋。そこに冴累が結と然紋の手を離し、割って入る。

「然紋、結はダメだぞ、俺のだからな」

然紋が驚きの表情で冴累を見つめ、言葉を発する。同じく驚きの表情の結と同時に。

「わっ、私が冴累さんのっ……!?」

「冴累!貴様、どういうつもりだ!」

二人の顔を見た後、冴累は

「ハッハッハ!冗談だ、冗談」

と笑って続けた。

「貴様!冗談でもそういうことを言うなんて信じられないぞ!いやらしい奴め!」

「ハッハッハ、まあ、そう怒るな」

冴累はまだ心底愉快そうに笑っている。どうやら私達の顔が相当面白かったようだ。

と、そうそう、と付け足すように冴累が話す。

「ところで結、俺のことは冴累で良い。あまり畏まった呼び方は好きじゃないんだ」

「そうですか?じゃあ……冴累」

控えめに呼び捨ててみる。

「うん、それが良い」

そんな結と冴累を羨ましそうに見つめる然紋だが、その表情は何とも言えない複雑な表情をしている。

「しかしまあ、取って食うかと思いきや攫って嫁にするとはなぁ……なぁ、然紋?」

「まだ攫ってなど居ないだろうが……」

チッと舌打ちした然紋は結に向き直り、極めて紳士的に話す。

「俺の事は然紋で良い。先程の答えもまだ先で良い。だが俺は真剣なんだ、だから結も真剣に考えてくれ」

「はい……あの、気になってたんですが、二人のご関係は?」

すると冴累と然紋は同時に言った。

「友人だ!」

「ただの宿敵だ」

和かに友人だと言う冴累と真顔になって対立関係だと言う然紋。

「え?あの……?」

すると冴累が

「なぁんだ然紋!恥ずかしがらなくても良いぞ!俺とお前は仲の良い友人同士だろう!」

それに対して然紋は

「は!?気持ちの悪いことを言うんじゃない!お前と誰が友人だ?最悪の気分だ!」

と怒鳴る。

「さては照れてるな?そういう所は可愛げあるのになぁ」

と冴累は然紋の肩に手を乗せる。その手を然紋はさっと払い

「本当に意味の分からん奴だな、お前は!俺に近寄るな!」

そうまた怒鳴ってから私の手を取り、顔を至近距離までぐいっと近付け小声で話す。

「……結、婚儀の話、きちんと考えておいてくれ。また来るからな」

「えっ、あっ、はい……」

返事を聞いた後、然紋はよし、と一呼吸置いてからその場を後にした。

「あの人、嵐のような人でしたね」

私がそう言うと冴累は

「照れ屋なんだ、大胆だがな。ああ見えて良い奴でな、仲良くしてやってくれ」

と言った。

また一人、不思議な友人が増えた一日だった。

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