3.
それから翌日。天気は清々しい程の晴れ。私はまたここへ来た。
「さっ、冴累……さん?」
驚く程静かな森におどおどしながら、冴累の名を呼ぶ。
「冴累さーん……キャッ!?」
後ろから何者かに肩を掴まれる。
「ハッハッハ!驚いたか!?」
愉快そうにケラケラと笑う冴累。
「も……もぉ〜〜……」
「ハッハッハ!許せ!少しばかり驚かせたかっただけだ!」
と、その瞬間、柔かだった冴累の顔が強張る。
「結」
結の肩を抱き、神木の上に飛び乗る。
「きゃっ!」
「静かに……此処に居るのだぞ」
其処へ「おい」という声がした。
「おい、冴累。居るんだろう?」
その声に応じて冴累が神木から飛び降りる。
「やぁ、これは珍しいな」
冴累に声を掛けた人物は矢張り和服姿で、額には二本の角、目玉が一つの青年であった。
「フン、今日も今日とて暇しているのだろう?良い加減に……」
苦々しい顔をした青年が言い切る前に
「あぁはいはい、お前の相手はまた今度。今忙しくてな、暇ではないのだ」
冴累は両手を広げてハッハッハと豪快に笑う。
「確かに。人間の匂いがする。……今も居るんだろう?出せよ」
そう言う青年に対して笑いながら冴累は言う。
「おいおい、如何する気だ?取って食うか?攫って嫁にするか?」
「茶化すな。この神木をぶち壊しても良いんだぞ」
「それは止してくれ、ちょいと待ってろ」
そう言うと、ひょいと神木の上に登り、結を抱き寄せピョンと降りる。
「紹介しよう、友人の結だ。結、此奴は然紋、山の下の神社に住む者だ」
「あ、あの……結です、よろしく……」
然紋と呼ばれた青年は呆然と立ち尽くしている。と、思いきや
「……美しい」
ぽつりと呟く様に言う。
「……へ?」
突然の事で、結は間抜けな声を出す。
「美しい、何と美しい女性だ!」
然紋は結の手を取り、跪く。
「おい冴累、何故お前なんかにこんな美女が会いに来ているのだ!」
「何故と言われても……なぁ?」
理不尽な怒りを向けられ、困り果ててしまう冴累。と、そこで流石に戸惑った結が提案をする。
「あの、そろそろ手を放してもらっても……?」
「そうだ、結と言ったか、俺と婚儀を執り行うのはどうだ?」
「婚……儀?」
あまりにも唐突なプロポーズにただ困惑する結であった。