翼の砂糖付け
ある所にしょうゆという人と、さとうという少年がいました。
さとうは人々に甘い言葉をかける詐欺師でした。しょうゆは辛く、厳しく街を守る警官でした。
そんな二人だったのです。そう、だったのです。
さとうは言います。騙される奴が悪いと。
しょうゆは言います。騙すやつも悪いと。
さて、君はどっちが悪いと思う?目の前に座る少女の形をした化け物はそんな問いかけをする。しょうゆだ。
「そんなもの知るか、そういうのは二人でやれば良いだろう」
「俺は生憎お前達のような悪と正義を体現するような奴の事は理解出来ないのでな」
答えたのはほぼ反射的だった。いらっだっているのだろう。俺はそんな話をして欲しいのではない。
「まあまあ、そう冷たくしないでくれよ」
這いよるような混沌がため息交じりに呟く。こいつ、本当に人間なんだろうかという疑問が頭に浮かぶ。
不思議だ。相手が男のそれもただの人間なのについそのまま答えたくなってしまう。
「俺の答えは参考にならんぞ……」
その時、俺がなんて答えたのかは忘れた。少なくとも次の瞬間俺は間違いなくベッドの上にいた。
「酒を飲んだか……」
俺が意識を失うなど酒以外にあり得ないと本能で理解する。……それにしても、久しぶりに翼がうずくな。
……ん?
翼……待て、俺の体に翼などなかったはずだ。久しぶり?何のことだ?俺は今まで……頭が、頭が……。
……!いや、違うこれは俺の記憶ではない!誰のだ?
急速に頭が冷えていくのが分かる。自分が自分であって自分でない。
俺が知る翼も持っていない生物など……いや私は元々翼など……くそっ分からなくなってきた。
バリンッという音が辺りに響く。そこには狩人らしき服を着た男と小学生くらいの少女が佇んでいた。二人とも何処かで見たことがあるはずなのに思い出せない。男は徐にこちらに銃口を向ける。
無機質なリロード音が辺りに響く……嫌だ嫌だ死にたくない!
ん?俺が死にたくない?何の冗談だ?むしろ死にたいと望んでいたはずだ。
いや違うのか?怖いのか?
また思考が覆われていく。どうなっているのか全く分からない。
怖い怖い怖い怖い怖い生きたい生きたい生きたい生きたい!
獣の咆哮が狩人達に向けられていた。
「……可哀相」
小学生ぐらいの少女がそう呟くと銃口が火を吹いた。
おそらく目の前にいる大きな化け物にされた彼は死んだのだろう。
「やっぱり騙すのが一番楽しいよ」狩人はは言いながら銃を肩に担いだ。
そう、それはさとうだった。
「いくら“ドラゴン”自身が死を望んでいたからと言って罪のない人間を無理矢理合成して弱体化させてわざわざざ恐怖心をあおる必要はなかっただろう?」
小学生ぐらいの少女、しょうゆがさとうを睨む。
「そうかなぁ~?どうせ死ぬんだったらスリルあった方が楽しいでしょう?それに無理矢理、人間を合成したんじゃないよ?大きな力が欲しい?て聞いたら喜んで協力してくれたんだよ?僕のやり方が一番でしょ?」
さとうは無邪気な顔で笑った。
しかし、答えを出す者はその場にしょうゆを除いて誰一人居なかった。
MさんMさん
……やってやった




