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イエローガールズ  作者: ノネ(仮)
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2話 入学式の悲劇 後編

 綾乃の高校デビューは入学式から計画失敗した。

体育館から教室に戻った綾乃は、机にうつ伏せのまま起き上がることはなかった。


放課後、綾乃はフラフラしながら学校を後にする。

後ろを追いかけるように由貴が近づく。


「アヤノ大丈夫?」

「大丈夫だよ・・・はぁ」


この世の終わりのような目で答えた。

明らかにテンションが下がっている。


「じゃ、じゃあそこでお茶していこうよ。いろいろ話したいこともあるしさ」

「うん・・」


由貴の提案で駅前のファーストフード店に入る。

綾乃はコーラとポテト、由貴はアイスコーヒーを注文し二階席に向かう。

相変わらず元気のない綾乃は、この世の終わりのような目で黙々とポテトを食べ始めコーラにアイスコーヒーのシロップとミルクを入れ始めた。


「そんなに映画部入りたかった?」

由貴がそう言うと、綾乃は語り始めた。


「私ってさ、中学時代部活もやってなかったし、塾も行かなかったから流行とかもよくわからなかった」

「毎日家に帰って少し勉強して、時間潰しに録画した映画見てて、『あっ私、映画好きなんだ』って思ったの」

「これを趣味すればテレビで毎日放送してるし、レンタルもしてるし、毎週新作映画も上映している」

「生涯映画を見続けても見終わることもない、素晴らしい趣味だと思った」

「高校生になったら部活に入ってみたかったし、映画をもっと知りたい、語りたかったからこの部活に入りたかったんだ」

「少しは変われるかなって思ったのに初日から高校デビュー失敗だね」


思いをぶちまけてスッキリした様子の綾乃は、先ほどまでの死んだ目とは違い、小学生の頃よく遊んでいた時の顔に戻っていた。

それに続いて由貴も話し始めた。


「高校入試の時、親が横浜に戻ると言って嬉しいと思った反面、少し怖かった」

「あたしが住んでいたところは茨城の鉾田ってところで、家の周りになにもない訳ではないけど田舎だった」

「転校して友達もできたし、向こうの生活も楽しかった」

「また横浜に戻ってきてまた都会の生活に馴染めるか不安だったけど、今日校門でアヤノに会えてあたしすごく安心したの」


明るく振舞っていた由貴も、不安を抱えながら高校に入学していた。

そして、綾乃の手をぎゅっと握ってこう言った。



「だから、これからの高校生活、私たち二人で楽しく新しいことしよう!」



綾乃も笑顔で手を握り


「うん!」


どこにでもあるハンバーガーチェーン店内の片隅で、二人の友情は深まった。

明日から何をするか決める前に、お互いの中学時代を語り合いお店を後にする。



――翌日、綾乃は放課後、職員室に呼び出された。

由貴と共に職員室に向かうと、担任の倉持先生が待っていた。


「早速呼び出してごめんね、ちょっと付いてきてくれる?」


「は、はい・・・」


入学早々先生とマンツーマン。

先生の後に付いていくと、鍵の掛かった教室の前で立ち止まった。


「先生、ここは?」


「元・映画研究映像部、部室よ」


「!?」


「さぁ、早く入りなさい」


綾乃は驚いた。

廃部になった部室になぜ先生は連れてきたのか?

先生は椅子に座ると話し始めた。


「川嶋さん急に呼び出してごめんなさいね。私、元映画研究映像部の顧問だったの」


「昨日の部活説明会のあなたの質問、教員たちの中で話題になっていたのよ」


「流石に部活を復活することはできなかったけど川嶋さんにこの部室の中を見せてあげたくてね」


綾乃はまるで宝物を発見したようなギラギラした目で部室を見渡していた。

部室の中にはDVDプレイヤーと数十本のDVDが置いてあった。

映像関連の物は写真部に持っていってしまったようだ。


「しばらくこの部室は使用しないから川嶋さんに開放してあげる」

「ただし、1ヶ月だけよ。もし他にやりたいことがあるなら私にいいなさい」


「先生ありがとうございます!」


そういうと先生は部室を後にした。

由貴と部室でなにを始めるか話し合いという名のティータイムが始まった。


「新しいことって言っても何をすればいいんだろう?」

「んーテニスは?」

「ここの高校ってテニス結構強かったよね?」

「じゃあ初心者入っても場違いだね」


「他は?」

「文化部だとアニメ研究部と鉄道研究部、写真部に囲碁部しかないね」

「アニメは好きだけどなに研究するかわからないし、鉄道もよくわからないし、写真部は・・・ちょっと気まずいね」

「確かに(笑)」



「あーなんかアクティブで高校デビューっぽいのないかなぁ?」


由貴は椅子に座りながら後ろに倒れこんだ。

腕が本棚にあたり荷物が降ってきた。


「うわぁ!」


映画のチラシに混じって一枚のパンフレットが落ちていた。



自動車教習所案内



「吉野自動車学校、高校生になったらまずは軽自動車・・・?」

「クーポン割引+学割12万・・・」


綾乃はチラシを力強く握りながら

「ゆ、由貴、由貴!これは?」

「えっ、もしかして免許取ろうとしてる?」

「してるしてる!由貴、教習所行って免許取ろうよ!」



こうして二人は、軽自動車に乗るための第一歩を歩みだした――。

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