表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/22

1-8

■1-8

 

 軽トラがいなくなったので、僕らも茂みから出た。


「あーあ、行っちゃったねー」


「そうだね。まったく」


 なんか、自殺を仄めかされたから思わずこの宇宙人を助けた(?)かたちになってしまったけど、本当にこれで良かったのだろうか。だって、こいつは地球を侵略に来たんでしょ? あの政府直属の組織っぽい人達に引き渡した方が良かったんじゃ……。


「アタシのUFO……持ってかれちゃった……」


 当の宇宙人は呆然としていた。


 その姿を、改めて見てみる。どう見ても僕らよりも年下のただの女の子だ。日本人としては髪や肌の色素は薄いし、目元もぱっちりし過ぎている気はするけど、まあそこまで違和感があるわけではない。せいぜい外国人とのハーフかクオーターって程度だ。


 あれ? そういえばさっきは頭から変な触覚が突き出ていた気がしたけど、そんな物もなかった。あれは見間違いだったのか? そんなわけはないと思うけど……。


 格好は宇宙人らしく(?)銀色のピッチリしたスーツを着ている。そのスーツが肌に密着しているせいで、体つきが丸分かりだった。宇宙人は、地球の日本人の基準で言うと、中学生の……もうちょっと頑張れって感じの肉付きかなあ?


 それと腰にはベージュ色のコルセットだか幅広のベルトだかを巻いている。


 手には白い手袋。足にも白いブーツ。だけども、どう見てもゴムっぽい質感で、ゴム手袋とゴム長靴にしか見えない。魚屋さんみたいだ。


 さっきまでは僕も興奮状態で、このエイリアンめ! って気持ちで見ていたから気付かなかったけど、顔も、まあ、可愛いとは思う。真空(まそら)さんに比べるとさすがにあれだけど、……可愛いよ、うん。


 呆然とした弱々しい表情になっているものだから、なんだかちょっと、僕も変な気持ちになってきた。こいつ、本当に宇宙人なのかな? いや、確かにUFOに乗ってたし、僕と真空(まそら)さんを酷い体質に変えたりしたわけだけど、こうやって見ると、あまりに普通の女の子っぽくて……。


「ねえねえ、宇宙人、あなた名前は何て言うの?」


 僕の心が揺らいでいると、真空(まそら)さんがそう言った。


 そうだよ、宇宙人だもん。さすがは真空(まそら)さん、ブレない! 強い!


「私は真空(まそら)みちる。こっちは二重(ふたえ)陽太(ようた)君。あなた、名前なかったら私がつけていい? オチコは? 空から落ちてきたから。あとはねえ、じゃあ、銀河ツルツル丸。銀色のツルツルしている服着ているから」


 ぐいぐい攻めていく真空(まそら)さん、さすがだ。


 ぼんやりしていた宇宙人の方も、なんだか目が覚めたようだ。


「ちょ、ちょっと、勝手に名付けないでよ! さっき名乗ったじゃん! 私は……チロ。チロ・ペキンパーよ。泣く子も黙るペキンパー一族の末裔よ!」


 凄んでみせる宇宙人だったが、


「チロってなんか犬みたいな名前だな」


 思わずそう言ってしまった。


「あんた達だって、何だっけ、陽太、みちる……、変な名前!」


「そうそう、陽太とみちるよ」


 胸を張る真空(まそら)さん。


「うん。陽太とみちる……だよ……。み、みちる……」


 この際、僕も真空(まそら)さんの事をみちるって呼ぶ事にしよう。


「ちゃん……」


 まあ、ちゃん付けで。


「みちるちゃん……えへへ」


 僕が、多分だらしない顔で笑いかけると、


「うん! 陽太君!」


 みちるちゃんが輝くように笑ってくれた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ