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宇宙人の説明は長かった。そしてつっかえつっかえでたどたどしく、分かりづらかった。何度も言い直すし。
真空さんなんてしゃがみ込んでウトウトしていた。つまらない授業ってこうなるよね。
宇宙人の下手な説明を、僕が自分の中で苦労して再構成してみると、どうやら次のような事らしい。
UFOのワープは、ワープビームを機体が纏うことで行う。ワープビームというものは、二種類のビーム、すなわちスイート波とビター波を、二重螺旋の形に寄り合わせたもの。
しかし僕と真空さんは、その二種類のビームがばらばらに別れた状態で、片方ずつを浴びてしまい、それをそのまま肉体に纏ってしまったらしい。一方だけのビームには何の物理的な効果もないので、具合が悪くなったりもしないし、通常の物質に触れる事も問題ない。
だが、このスイート波とビター波が接触すると、瞬間的に、同軸に二重螺旋を形成、ワープが発動するのだ。
でも、僕らの体に纏っているビームは、波動の流れ的には内から外へと向っている。すなわち、僕と真空さんが触れ合う際には、必ず、互いのビームが対向するように走る。同じ方向に流れるわけではないのだ。
すると、スイート波とビター波、二本の螺旋は対向している為、そのまますれ違うように通過し(この瞬間だけワープが起こる!)、通過と同時に一本ずつの螺旋に戻る。
つまり、二人の体が接触すると同時にワープ開始、その直後にワープ終了となり、結果として互いの体がすり抜けてしまうのだ。
「そうそう、つまりそういう事よ! 結構理解力あるじゃん、地球人」
「なんだよ、自分はしどろもどろで説明していたくせに」
「これぞ限定的接触ワープである!」
宇宙人が偉そうに胸を張る。
「えー、つまりあんた達は、すり抜け体質になったってわけ。あんた達二人がくっ付こうとする時限定で」
「ふーん。なんかよく分からないけど、私と二重君はお触り出来ないんだねー」
真空さんが目を擦りながらそう言った。
お触り! 出来ない! だとう!?
「ふっざけんなよ! 僕らを元の体に戻せ!」
僕は宇宙人の襟元を掴んでガクガク揺すぶった。
「ぼ、暴力はいけない! 戻せって言われても、UFOのワープ装置が壊れてしまったので……イヒヒ……ダメみたい」
確かに、周囲には、金属の部品がばら撒かれている。まさに丼を落として割ったみたいに。あのオレンジ色に光るUFOは、壊れてしまったのだ。
……だからって何だってんだ。
「じゃあ直してよ! お前の乗り物なんだから!」
「しかしアタシは文系なもんで……機械とかは……ウヒ」