表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/22

1-5

■1-5


 一瞬後。


「ぐえ!」


 僕は地面に投げ出され、ごろごろと転がった。


「い、痛い……」


 どうやら爆風に飛ばされたようだった。


「うぐぐ……。ま、真空(まそら)さん!?」


 見回すと、真空(まそら)さんが五メートル向こうにいた。真空(まそら)さんは立ったまま、ぽんぽんと服の裾をはたいていた。


真空(まそら)さん!」


 僕が叫ぶと、彼女もこちらを見つけたみたい。真空(まそら)さんのきょとんとした顔が、急に、泣きそうになった。


二重(ふたえ)君……、怖かった……」


 真空(まそら)さんは両手を力なく広げ、よろよろと、こちらに歩いてくる。


 僕の胸がきゅっとなった。僕は起き上がり、真空(まそら)さんへと走った。


 抱き締めてあげなくちゃ! 抱き締めて、安心させてあげなくちゃ! 僕にはそれをする義務がある! や、やるぞ! 抱き締めちゃうぞ!


二重(ふたえ)君……」


真空(まそら)さーん!」


 僕は両手を広げ、真空(まそら)さんの目の前まで来て、そして、彼女の鼻先が僕の胸に触れそうな段階で、両手を閉じた。


真空(まそら)さん!」


 ずきゅーーん!


「……ん?」


 僕は、自分の体を抱き締めていた。腕の中には真空(まそら)さんの柔らかな体はなかった。


 あれ? どういうこと?


 振り返る。真空(まそら)さんの背中があった。彼女もこちらを振り返った。


二重(ふたえ)君……」


真空(まそら)さーん!」


 僕はもう一度、彼女を抱き締めた。抱き締めようとした。


 ずきゅーーん!


 そして僕は、今度も自分の体を抱き締めていた。真空(まそら)さんと背中合わせに立って。


「……なにこれ」


 真空(まそら)さんと向かい合う。両掌を上げる。真空(まそら)さんも同じように手を上げ、二人の手と手を合わそうとする……。


 ずきゅーーん!


 僕の体が前に引っ張られ、と思ったら、目の前から真空(まそら)さんの姿が消えていた。振り返ると、真空(まそら)さんがいて、彼女もこちらを振り返った。


「これって……。僕らの体が……」


「すり抜けちゃったよね……?」


 まさか、幽霊になったのか? 霊体? 死んだのか? 爆発に巻き込まれて。


「なんてこった……」


 僕はよろけて、公園の池の周りを囲む柵に手をついた。


「……ん? でもこういう物には触れるんだな。幽霊なのに」


「おかしいねえ。……あ、宇宙人!」


 真空(まそら)さんの指差す方を見ると、宇宙人が四つん這いでこそこそ逃げようとしていた。


「あいつめ! ちょっと待てよ!」


 急いで追いかけ、通せんぼする。


「お前のせいで死んだぞ! お前のこと呪ってやるから! 覚悟しろよ!」


「直接関係のない孫や曾孫も不幸になるからね」


 真空(まそら)さんも腕組みをして言う。


「ヒイ! おたすけー!」


 宇宙人がぺこぺこする。


 ……あれ?


「お前、僕らの事が見えるのか?」


「見えるよ! 死んだとか気持ち悪い事言わないでよー。ほら、ちゃんと生きてるでしょ?」


 宇宙人が僕の肩をぽんぽん叩いた。


「あれ? 確かにそうだな。でも……」


 僕は手を上げて、真空(まそら)さんの肩に触れようとしてみた。


 ずきゅーーん!


「ああーっと、ほら! やっぱりすり抜けちゃうじゃん!」


「すごいよねー」


 僕は宇宙人の肩を掴んでガクガク揺すぶった。


「どういう事だよ!? 僕らの体、どうなっちゃったんだよ! なんですり抜けるんだよ!? なんで真空(まそら)さんに触れないんだよ!? そんな悲しい事ってあるかよ! あのUFOが爆発したからなのか!? どういう事か説明しろよ!」


「ちょ、ちょっと、待って、ちゃんと言うから」


 宇宙人を解放すると、奴は額を抑えて、それからコホンと咳をした。


「あー、ワープのビームを……。ええと、だね、それはつまりね、ええと、ちょっと待って思い出すから。受験の時ちゃんと勉強してきたから。大丈夫大丈夫、えっと……」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ