3-2
■3-2
「ふい~。ちょっとした危険はあったけど、毛穴の奥のダークマターも洗い落としてすっきりした」
風呂から出て、すっきりした顔のチロ。
僕の方は、結構気まずい気分だったんだけど、チロの方はそうでもないみたい? やっぱり宇宙人と地球人では貞操観念も違うのかな?
「どっこいしょ」
チロが腰を下ろした。
それから、「いやあ、ダークマターも流せてすっきりよ」と言った。
ちょっと黙る。
「ダークマター、流れたなあ」
もう一度言った。
黙る。
見れば、チロは右手で絨毯をひたすら擦っている。真顔で。
何だよ、やっぱり、なんか気まずいじゃん!
こういう時どうすればいいんだ? ええと、ええと。そうだ。
「おいチロ! UFO! UFOだよ!」
「え」
チロがビクッとした。
「UFOがどうしたの?」
「どうしたって、取り戻すんだろうが。さっきの書割モータースにユーフォワの軽トラは停まっていたけど、UFO自体は見当たらなかった。もしかして、誰かが運転して、飛んで行っちゃったりしてないかな?」
「ああー、それはないよ。心配ない」
チロがウヒっと笑った。
その笑いに、僕はちょっとほっとした。気まずい雰囲気が崩れた気がして。
「地球人風情にUFOが動かせるわけないもん。特殊な同調装置が必要なのよ」
「同調装置?」
「そう、こいつよ」
そう言って、チロは自分の頭を指差した。
「なに? 頭の中に組み込まれているの?」
「そんな怖い手術するわけないじゃん! これよ、この……あれ?」
自分の頭を撫で撫でするチロ。
「ない! さっきのマイクロ・ブラックホールに吸い込まれたんだ!」
「だから何をだよ!」
「ここに、こう、ぴょろんと付けてたの」
「それって……もしかして、触覚みたいなやつ? 先っぽにピンポン玉が付いている」
「そうそう、それ!」
寺ヶ白公園で最初にチロと遭遇した時に、頭から生えていたアレだ。やっぱり見間違いじゃなかったんだ。
「あの触覚、UFOが爆発した後はずっと付いてなかったぞ」
「そう言われるとそうかも……。じゃ、あそこで落としたんだ。あの公園で」
なんてこった。
「ユーフォワに拾われちゃったかな?」
と僕。
「分かんない……。UFOの部品ぽくはないけど……。どうしよう~。あれを原住民に取られたらUFOを乗っ取られちゃうよ~」
「そうだな。とにかく、公園に探しに行こう。明日の朝だな。夜中に懐中電灯で探すのは効率が悪いし、お巡りさんに見つかったら面倒だ」
「うん……」
僕はスマホを取り出し、みちるちゃんに電話をした。みちるちゃんも当事者だもんね。
「ええー、あいつはいいよ……」
チロは後ろでブツブツ言っている。気にしない。UFOの操縦アイテムを失くしたのは不安だけど、みちるちゃんに電話する口実が出来て嬉しくもあったのだよ。
「もちろん行く行く!」
みちるちゃんは二つ返事でOKしてくれた。のりのりだ。ピクニックにでも行くみたい。
「明日の朝、皆で探しに行こう!」
なんかみちるちゃんの声を聞いて、僕もワクワクしてきた。本当は焦った方がいいのかもしれないけど。ふふふ。明日もみちるちゃんと会えるのだ……。
「なんでニヤニヤしているの……」
チロは不満顔だけどね。
「よっし! 明日も早いぞ。僕も風呂入ってこよっと!」
とは言え、シャワーを浴びるだけだけどね。チロのバカが湯船のお湯を抜いちゃったもんで。チロの……バカが……裸で……!
「うっ! みちるちゃん、ごめん!」
「ええ!? みちる!? もう来たの!? 怖い~」




