表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/22

2-7

■2-7


 その後は邪魔な連中が消えてくれなくて、僕とみちるちゃんが二人きりになるチャンスは全くなかった。僕と同じようにやきもきしている雰囲気の男子どももいたけど、お互いにチャンスを伺いつつも、決定的な行動を起こせなかった。


 そうして夕方になり、タイムアップ。


 しかもみちるちゃんは、女子達に手を引かれて、あっという間にいなくなってしまった。何やら女子だけで喋りたい事もあるんだとか。あれだな。きっと今日の僕ら不甲斐ない男子達の評価を、厳しく付けるのだろうな。女の子特有の、裏でこそこそ他人を評価したり笑ったりする、アレだ。みちるちゃんにはそういう小癪さがないから、僕はみちるちゃんが好きなのだ。


 ……まあ、今日の僕ら男子のダメさは、女どもに何を言われても仕方の無いところではあったけど。


 僕と男どもは顔を見合わせ、ため息をついた。誰も抜け駆け出来なかったというわけだ。


 まあ、他の男に取られなかったから、今日のところは諦めるとしよう。


 それに、僕とみちるちゃんの間には、チロの捕獲という共通の秘密がある。これだけでも他の連中よりもずっと抜きん出ているわけだしね。


 頭をかいて、チロを横目に見る。


 チロの肩にはコロボウが乗っていて、それが右肩に乗ったり左肩まで転がったり、また右へと戻ったりと、本当の生き物のようにじゃれている。


 チロは「くすぐったいよー、よせよー、マパッチ」なんて言って、ウヒウヒ笑っている。良い気なもんだよ、まったく。


「ん? マパッチ?」


「この子の名前。かっこいいでしょ」


 もう好きにしてくれ。




「仕方ない。父さんにお土産でも買って、僕らも帰るか。はあ」


 ゲートに向いながら、思わずため息が出ちゃう。


「まあ良かったじゃん。あんな凶暴なメスにそばにいられたら気が休まらないよ? 生きた心地がしないって」


「お前な~。そんなわけないだろ! みちるちゃんは天使だぞ? あんなに素敵な娘は地球に一人だけだよ。ま、宇宙人のお前には分からないだろうけどさ」


「分かってないのは陽太の方だよ。世の中にはね、馬鹿なオスを餌食にしようとするメスがどれだけ……ああー!? あいつら!」


「どうした?」


 チロの指差す方を見る。


 小学生だろう。一人の男の子が、もう一人の子を突き飛ばした。他にも何人か男の子達がいるけど、「やめろよー」なんて言っているから、いじめではなくてただの喧嘩だろう。


「陽太……大変だよ」


「大丈夫だって。子供だし、喧嘩ぐらいするって」


「ほら! ちゃんと見てよ!」


 突き飛ばされた男の子は、キグルミに抱き止めてもらっていた。眠そうな目をした、黄緑色の怪獣っぽいキグルミだ。


 キグルミは、泣いている男の子の頭を優しくぽんぽんしてやり、他の子達には「ダメだよ」と人差し指を振った。


「あいつ、あの子供を食う気だ……」


「そんなわけないだろ。だから、ただのキグルミだって」


「だってほらだってあいつほら! 口から歯が飛び出してるし! 陽太は知能レベルが低いから分からないだけだよ! アタシには分かるの!」


「あのなあ、あれは中にスタッフが入っていて……」


「あいつ、あんなボンヤリした顔で油断させて、食べちゃうつもりなんだよ! 陽太も見たでしょ、他の子供が、あの子供を突き飛ばしたんだよ!? 自分が助かる為に、同族を犠牲にしたんだ! なんて残酷な奴! とんでもない……とんでもないよ!」


「お前何言ってんだよ」


「もう見ちゃいられない!」


 チロが光線銃を抜いた! またか!


「それはよせって!」


「離してよ陽太! あの子食べられちゃう! 平気なの!? 陽太も残酷な奴なのか!?」


 光線銃を掴み、揉み合う僕とチロ。


 そんな僕らの向こうでは、黄緑色のキグルミが子供達皆に小さなロケットを渡していた。一番安いお土産だ。


「あれ? あいつら……。仲間割れしてたのに」


「ほら、大丈夫だって。喧嘩したって、友達なら仲直り出来るんだから」


 男の子達はしょぼいロケットを手に、ニコニコしている。泣いていた子も、泣かした子も、照れ笑いしている。


「でもあいつら……」


 チロはまだ納得いかないって顔をしている。


 はあ。困った奴だよ、こいつは。


 まあでも、一応は子供を助けようとしたのか。あれはチロの優しさだったのかな。良いところもあるじゃないか。なんて思ってもいいのかな。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ