2-7
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その後は邪魔な連中が消えてくれなくて、僕とみちるちゃんが二人きりになるチャンスは全くなかった。僕と同じようにやきもきしている雰囲気の男子どももいたけど、お互いにチャンスを伺いつつも、決定的な行動を起こせなかった。
そうして夕方になり、タイムアップ。
しかもみちるちゃんは、女子達に手を引かれて、あっという間にいなくなってしまった。何やら女子だけで喋りたい事もあるんだとか。あれだな。きっと今日の僕ら不甲斐ない男子達の評価を、厳しく付けるのだろうな。女の子特有の、裏でこそこそ他人を評価したり笑ったりする、アレだ。みちるちゃんにはそういう小癪さがないから、僕はみちるちゃんが好きなのだ。
……まあ、今日の僕ら男子のダメさは、女どもに何を言われても仕方の無いところではあったけど。
僕と男どもは顔を見合わせ、ため息をついた。誰も抜け駆け出来なかったというわけだ。
まあ、他の男に取られなかったから、今日のところは諦めるとしよう。
それに、僕とみちるちゃんの間には、チロの捕獲という共通の秘密がある。これだけでも他の連中よりもずっと抜きん出ているわけだしね。
頭をかいて、チロを横目に見る。
チロの肩にはコロボウが乗っていて、それが右肩に乗ったり左肩まで転がったり、また右へと戻ったりと、本当の生き物のようにじゃれている。
チロは「くすぐったいよー、よせよー、マパッチ」なんて言って、ウヒウヒ笑っている。良い気なもんだよ、まったく。
「ん? マパッチ?」
「この子の名前。かっこいいでしょ」
もう好きにしてくれ。
「仕方ない。父さんにお土産でも買って、僕らも帰るか。はあ」
ゲートに向いながら、思わずため息が出ちゃう。
「まあ良かったじゃん。あんな凶暴なメスにそばにいられたら気が休まらないよ? 生きた心地がしないって」
「お前な~。そんなわけないだろ! みちるちゃんは天使だぞ? あんなに素敵な娘は地球に一人だけだよ。ま、宇宙人のお前には分からないだろうけどさ」
「分かってないのは陽太の方だよ。世の中にはね、馬鹿なオスを餌食にしようとするメスがどれだけ……ああー!? あいつら!」
「どうした?」
チロの指差す方を見る。
小学生だろう。一人の男の子が、もう一人の子を突き飛ばした。他にも何人か男の子達がいるけど、「やめろよー」なんて言っているから、いじめではなくてただの喧嘩だろう。
「陽太……大変だよ」
「大丈夫だって。子供だし、喧嘩ぐらいするって」
「ほら! ちゃんと見てよ!」
突き飛ばされた男の子は、キグルミに抱き止めてもらっていた。眠そうな目をした、黄緑色の怪獣っぽいキグルミだ。
キグルミは、泣いている男の子の頭を優しくぽんぽんしてやり、他の子達には「ダメだよ」と人差し指を振った。
「あいつ、あの子供を食う気だ……」
「そんなわけないだろ。だから、ただのキグルミだって」
「だってほらだってあいつほら! 口から歯が飛び出してるし! 陽太は知能レベルが低いから分からないだけだよ! アタシには分かるの!」
「あのなあ、あれは中にスタッフが入っていて……」
「あいつ、あんなボンヤリした顔で油断させて、食べちゃうつもりなんだよ! 陽太も見たでしょ、他の子供が、あの子供を突き飛ばしたんだよ!? 自分が助かる為に、同族を犠牲にしたんだ! なんて残酷な奴! とんでもない……とんでもないよ!」
「お前何言ってんだよ」
「もう見ちゃいられない!」
チロが光線銃を抜いた! またか!
「それはよせって!」
「離してよ陽太! あの子食べられちゃう! 平気なの!? 陽太も残酷な奴なのか!?」
光線銃を掴み、揉み合う僕とチロ。
そんな僕らの向こうでは、黄緑色のキグルミが子供達皆に小さなロケットを渡していた。一番安いお土産だ。
「あれ? あいつら……。仲間割れしてたのに」
「ほら、大丈夫だって。喧嘩したって、友達なら仲直り出来るんだから」
男の子達はしょぼいロケットを手に、ニコニコしている。泣いていた子も、泣かした子も、照れ笑いしている。
「でもあいつら……」
チロはまだ納得いかないって顔をしている。
はあ。困った奴だよ、こいつは。
まあでも、一応は子供を助けようとしたのか。あれはチロの優しさだったのかな。良いところもあるじゃないか。なんて思ってもいいのかな。




