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2-1

■2-1


 チロは、僕よりも年下の女の子だと思っていたけど、体は立派なものだった。見事に育っていた。


 どのくらい見事かと言うと、僕をひょいっと摘み上げられる程に、巨大なのだ。


 チロの寝ている間に荒野に逃げようとした僕だけど、歩幅があまりに違うチロに簡単に捕まってしまった。


「うい奴め」


 巨人チロは廃墟の街をのっしのっしと歩いて、自分のねぐらに戻った。


 チロはベッドに座り、手の中の僕を撫で回し、揉みくちゃにする。首が折れそうだし髪の毛も抜けそうになる。


「たすけてー」


 僕は叫ぶ。


「何から助けてもらいたいの? アタシはこんなに優しくしてるのに」


「こんなの嫌だよ。僕はペットじゃない」


「ペットよ」


「ペットは嫌だ」


「だって、ペットじゃないと、アタシから逃げちゃうじゃん」


「ペットにしようとするから逃げるんだよ」


「じゃあどうすればいいの。どうすれば一緒にいてくれるの。誰がアタシに優しくしてくれるの」


「それは」




 はっと目が覚める。


 夢か……。


 どこまでが夢だったんだ? 宇宙人の女の子なんていなかったのか?


 まだボンヤリしている頭に、ウインカタン、カタカタ、という音が聞こえてきた。


 なんだ? 何が動いているんだろう?


「お! やっと目覚めたな!」


 にゅっと、微妙に幼い顔付きの女の子が覗き込んできた。


「チロ……! お前は夢じゃなかったんだ」


「何言ってんの? 地球人てどうしてこうグータラなんだか。呆れちゃうわい。自分の星が侵略されるって時にもこれほどのん気に寝ているなんて」


「え……侵略!?」


 がばっと跳ね起きる。


 にやにや笑うチロ。その横に、ごちゃごちゃと妙な物体が置いてあった。


 傘だ。開いた傘にアルミホイルが貼ってある。その柄はコーラの空き缶に刺さっていて、缶からはコードが延びて……。クッキーの箱に入れたBDプレーヤーや、電卓や、スタンドライトと繋がっていた。


 BDプレーヤーに入ったBDにはハンガーが取り付けられていて、それが邪魔になって蓋が閉まらず、ウインカタンと、延々と閉じたり開いたりを繰り返している。その度にハンガーが動いて、電卓のキーをカタカタと押している。電卓の文字盤には「ERROR」の文字。


「なんだこりゃ!?」


「見て分からない? 発信機よ!」


 発信機!?


 そう言われてみれば、昔の映画でこういうの見た事あるぞ。宇宙人が、友達の地球の男の子の家の道具を使って、これと似たような発信機を作ってた!


「これでアタシの故郷のカギヅメ党本部へ、アタシの救難信号及び侵略軍派遣要請を送ろうってわけ! エーテルを越えて飛ぶ、幾何学模様の暗号よ!」


「なんだって!? ふざけんなよ! 助けを求めるのは仕方ないかもしれんけど、侵略軍なんて呼ばせないぞ!」


「うん。呼べない」


「お前をひっぱたいてでも止めてみせる! 絶対に呼ばせるもんか! ……って、え、呼べないの?」


「うん。そもそも通信波って何をエネルギーにすればいいか分からないし。その前に、アタシ、機械とか全然ダメなんだよね。理数系の教科はなるべく避けてきたし、図画工作で褒められた事もないし」


「だってお前、そのナントカベルトを巻いてるじゃん。それ巻くと頭良くなるんだろ?」


 チロの腰には、例の健康磁気ベルトっぽい物が巻いてある。


「お! よく覚えてたわね! そう、これこそパーソナル・フォトン・ベルトよ。ん~、でもね。関係ないみたい。ガウスが足りないのかなあ」


 だよな。あんなんで頭が良くなってたまるかってんだ。だってさ、あれを巻くのは頭じゃなくて腰なんだろ? 腰って、随分と脳みそから遠いじゃないか。首に視神経が走っているってぐらい変な話だよ。


「いやー、イヒヒ。発信機ってなんとなくこんな感じの形かなって思って色々くっ付けてみたんだけど、やっぱダメだった。アタシ文系だからさ、フィーリングでやっちゃうんだけど、上手くいかないもんだね」


「じゃあ何かい!? このBDプレイヤーなんかも、ただ壊されただけって事? あ! このコード、ゲームの電源のじゃん! 切ったのかよ!? どうすんだよー!」


「ま、まあまあ。落ち着きなよ。結果的に侵略軍が来なかったわけなんだから、結果オーライじゃない? 暴力はいかんよ?」


 チロが卑屈に笑いながら後退りする。


「ねえ? お前もそう思うかい? ん? だよねえ」


 なんて、コロボウに話しかけている。撫で撫でしながら。


「それに、これではっきりしたわ。全てはアタシのUFOを取り戻す以外にどうしようもないって事がね! あ、ええと、アタシが帰る為にってのも勿論だけど、あんた達の体質を戻す為にもそっちの方が良いでしょ? という事で、例のユーフォワとかっていうふざけた泥棒結社から我が愛機を取り戻そう! オー!」


「こ、こいつ! 勝手な事ばかり言いやがって……!」


 その時、セットしておいた目覚ましアラームが鳴った。


「ひい!? 敵襲!?」


 飛び上がるチロ。


「違うよ。あーそれと、ユーフォワの事も大切なんだけど、今日はそれどころじゃないんだ! だからそのコロボウ、返せよ!」


 だって今日はゴールデンウイークの初日、クラス遠足の日なのだ!




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