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現実世界に魔物が現れたようです  作者: 羽良糸ユウリ
第四章:回りだした歯車
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番外編:其の五『正妻戦争』

人気者は辛いよ

 「せーんーぱーい!! 暇っすー!」

 「………………えっ? 何?」

 「そもそも聞いてなかったっすか!!?」

 「相変わらず仲良いな、二人とも」



 とある日、琳と総一郎と葵の三人はいつものように三人で駄弁っていた。

 基本的には琳が葵に絡まれて総一郎がそれを傍観しながら茶々を入れるというもので、大体は人が良い琳が葵に付き合いそれに総一郎も付き合わされるまでがテンプレート。



 それは庭園の守り(ガーデンキーパー)に入ってからも全く変わることはない。

 傍から見れば琳と葵は恋仲の関係に見えるかもしれないが、二人と一緒にいる総一郎から言わせてみればこの二人にはそんなことはない。

 しかし総一郎の本音は「何でもいいから早くくっつけ」で、常日頃から思っていることでもある。



 「何してるの?」

 「楽しそうですね」

 


 と、そこへ千鶴とセラスがやって来た。

 最近はもっぱらこの五人で居ることが多かった、学校でも庭園の守り(ガーデンキーパー)でもよくこの五人で居ることが多かった。



 二人を加えてわいわい騒いでいると話は恋愛系の話になった。

 千鶴やセラスが男子女子問わずモテているという話や琳と総一郎が後輩たちからそれなりに人気を集めているという話などなど。

 紙パックのジュースをストローで飲みながら話を聞いていた総一郎が一言呟いた。




 そしてその呟きが戦争へと発展した。




 「……前から気になってたんだけどさ香月」

 「なんだよ」

 「お前って結局本命誰なの?」

 「……………」



 琳は固まった、総一郎の言葉を理解するのに時間がかかったからだ。

 十数秒経ってようやく琳は総一郎が言った言葉の意味を理解して途端に顔を赤らめて動転した。



 「な、なに言ってんだお前!!?」

 「いやほら。一之瀬さんとか雨宮さんとかマグノリアさんとか……あぁ、後は朝比奈さんとか立花さんとかもしかしたら来栖さんとか。色々と関係は持ってるじゃないか」

 「関係持つとか言うな! 語弊があるから!!」

 「それで思ったんだが香月の中で一体誰が好きなのかなと、突然気になってな」

 「突然気になるわけあるかそんなこと!?」

 「俺の予想ではこの三人の中の誰かだと睨んでるんだが……」



 挙動不審になって総一郎の話を遮ろうとしたり終わらせようとしたりと色々なことを試みる琳だったが残念ながら総一郎は止まらなかった。

 


 「この前だって雨宮さんと二人で出かけたんだろ?」

 「そうなんすか先輩!!!?」

 「そうだけど! どっから入手したんだその情報!」

 「朝比奈さんから」

 「あぁぁぁぁんの人はあああぁぁ………!」

 「楽しかった。また行こうね」

 「千鶴ぅ!?」

 「ずるいっす! 私もたまには先輩と遊びたいっす!」

 


 どんどんどんどん、琳の願いとは裏腹に事はややこしくなるばかりで総一郎の方を見ると総一郎は面白そうにストローを歯で挟みながらニヤニヤして笑っていた。

 せめてセラスだけは……セラスだけはもうこれ以上ことをややこしくしないで欲しい……琳はそう願ってセラスの動向を伺ったがその願いはついぞ消えた。



 セラスはおずおずと「あの……」とか細い声で言って顔を斜め右上に向けて顔を赤らめて言葉を続けた。



 「私も……香月君と()()()遊んでみたいなー………なんて………」

 「……………………」

 「……へぇ」

 「……ほぉ」

 「……ふぅん」

 「な、なんですか!? みなさん黙ったりなんかして!」

 


 琳は文字通り開いた口が塞がっておらず、その他三人はセラスの方を見ながら感嘆符を口に出してそれ以上は何も言わなかった。

 セラスはもっと頬を赤くして何か変なことを言っただろうかと目と仕草で訴えていた。



 総一郎は紙パックのジュースを飲みほして席を立ち上がり、ゴミ箱に空の紙パックを捨てると荷物を取って一言「帰る」と宣言した。

 勿論琳は止めたが総一郎は清々しい顔をして別れを告げて一人先に帰っていってしまった。

 総一郎が帰った後にはもはや何がどうなってこじれたのか分からなくなってしまった謎の修羅場感が単独で放置されてしまった。



 「……じ、じゃあ、俺も帰ろうかなー……ははは……」

 「琳君、そうは、いかない」

 「まぁその……なんですか?」

 「せめて先輩の本命がいるかいないかくらいは聞かせてもらうっすよ?」

 「嘘………だ………!」




△▼△▼△▼△◆△▼△▼△▼△




 翌日、学校にて。



 「おはよ香月」

 「………」

 「どうした?」

 「いや……ちょっとな、疲れててよ」

 「あぁ昨日のアレか。どうだった?」

 「どうだったじゃねぇよ!! 根掘り葉掘り聞かれたわ!」

 「お、おぉ……すまん」



 一体昨日、自分が帰った後に何が起こったのか総一郎は知らない。

 そしてそれを聞く気にもなれなかった。

 疲弊している親友を目の当たりにして、罪悪感が総一郎の心の中にしこりのように出来てしまっていた。



 「香月君」

 「琳君」

 「香月先輩」

 「………!」



 琳は三つの声を聞いてがばっと顔を上げて引きつった笑いを浮かべた。

 しかし朝から三人はそんなこと気にすることもなく琳に問い詰めた。



 「先輩の」

 「本命は」

 「誰なんですか?」

 「ひぇっ……!」

 




 その日からしばらく、琳は謎の胃痛に悩まされたらしい。

次回から新章入ります!

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