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現実世界に魔物が現れたようです  作者: 羽良糸ユウリ
第一章:ようこそ、世界の裏側へ!
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其の十一『庭園の守り手』

前回のあらすじ:理性は強し

 「お待たせー」



 しばらくすると涼が千鶴を着替えさせて戻ってきた、千鶴はジャージ姿でチャックを全て上げてしまっているため口元が隠れておりサイズも少し大きめなのか袖が手の平の半分まであった。まだ若干眠たいのか長い袖で目をくしくしと擦っている千鶴を琳の座っている向かいのソファーに座らせて涼は千鶴の隣に座った。



 「あー、疲れた……なぁ琳、こいつって学校でもこんなマイペースなのか?」

 「うーん………正直なところ、誰も雨宮さんのこと詳しくないですし、基本一人でいることが多いと思います」

 「……千鶴ぅ、お前さては友達づくりしてねぇな?」

 「する必要も、ない、から?」

 「琳とは友達か?」

 「……分からない」



 たった今目の前でクラスメイトの女子から友達かどうか分からないとはっきり告げられ内心へこむ琳、そこへ全く空気を読まず何故か白衣を着た翔馬が昼にもなっていないというのにテンション高めでやって来た。



 「やーやーおまたっせー! みんな大好き翔馬博士の登場だよー……え、どうしたの」

 「翔馬、お前朝から五月蠅い。しかもなんだその白衣」

 「ほら、今日は琳君にうちのことを説明する講義の第二弾ってことで格好から入ってみたんだけど……」

 「お前がそれやるとイケメンの無駄遣いになるからやめとけ」

 「無駄遣いて……」



 思いのほかリアクションが悪くてがっかりした様子の翔馬だがそれを慰める者はいなかった、栞にいたってはこちらの会話が聞こえているのかどうかといった具合だった。

 白衣を脱いでいつものスーツ姿にチェンジした翔馬は昨日とは違ってホワイトボードを用意してきた、ここだけ切り取れば家庭教師の特別授業とかそんな感じにも見える。ただの妄想だが。



 「さてさて、じゃあ早速昨日のおさらいからいこうか」

 「あれ? 昨日の機械は使わないんですか?」

 「あああれ? あれはだってほら、ホログラムやりたかっただけだから」

 「さいですか……」



 どうやら完全一発限りのネタだったらしい、きっとあのホログラムの魔物も嘆いていることだろう。



 琳と翔馬はマンツーマンのような感じで昨日のおさらいから始めた、琳も琳で記憶力はあるい程度良かったようで大体のことはきちんと覚えていた。どこの大学でとか博士の名前がどうのこうとかっていう詳しいことまでは覚えていなかったが本筋は頭の中に入っていたためさらりとおさらいを終わってしまった。



 ホワイトボードに色々と書いてくれたおかげで、時系列や相関図なども分かりやすく理解できたためそこは翔馬に感謝だ。





 さて、ここからが本番である。





 「適合者は昨日言った通りその身体能力の高さを生かして魔物と戦う使命を持った、ここまではいいね?」

 「はい」

 「じゃあここで問題だ」



 翔馬はそう言ってホワイトボードをひっくり返して真っ新な裏面に変えた、翔馬はそこにチープな棒人間を数体まばらに描いていき、頭の部分に「適」と書いた。



 「まぁ今書いたこの棒人間が適合者だと思ってくれ。ではまず第一問、この時点で適合者たちは個別に動いており魔物が出たら連絡を受けている状態です、そこでこのバラバラな適合者たちを魔物と戦わせるために効率よく動かすためにはどうすればいいでしょうか」

 「…………………まとめる?」

 「具体的には?」

 「………組織化して、一元管理する、とか?」

 「いいねいいね、要はそう言うこと。この時点で適合者は所謂フリーランス的な状態でね、しかも魔物とかの情報は機密事項だから万一にでも外部に漏れてしまったらどうなるか分からない……。そこでだ!」

 「須崎さん、近いです……」

 急に声量を大きくして顔を近づけてくる翔馬に苦笑を浮かべる琳、そしてその声量で一瞬ビクンとなってしまう千鶴。





 「そこで結成されたのが、この組織、庭園の守り手(ガーデンキーパー)なのさ!」

 「ガーデンキーパー……?」

 「そそ、『庭園の守り手』って書いてガーデンキーパーって読むんだ。かっこいいだろ」






 如何にもこういう組織にありそうな名前だと琳は思った、しかもルビを振ってあることを考えると尚更。翔馬はキラキラと、まるで幼い少年が新品のおもちゃを見つけたような、そんな目をしながら琳に説明していた。



 「そして第二問! 適合者は庭園の守り手(ガーデンキーパー)に所属したはいいものの現代武器では魔物たちにジリ貧状態まで追い込まれていることには変わりありません! その場合、一体どうしたらいいでしょうか」

 「専用の武器を作る、ですか?」

 「正解! では第三問! その武器とは一体どんな武器でしょうか!」

 「えっと…………どんな武器……」

 「ヒントを出そうか?」

 「お願いします」

 「君はすでに手にしているし、他の人が持っているのも見ているはずだ」



 翔馬はにこやかに琳にヒントを与え、琳はそのヒントを元にここ数日のことを思い出して考えていた。魔物を倒すための専用武器が普通の形をしているとはあまり思えない、かといって目立ち過ぎれば怪しまれるし持ち運ぶ時などのデメリットにもなるだろう。



 そして琳ははっと思い付き、ポケットから翔馬から渡されたあの黒い板を取り出した。



 「もしかして、これ、ですか?」

 「………正解」

 「えっ、でもこんなのが武器になるんですか……?」

 「それはまぁ見てからのお楽しみだね……っともう昼か、続きはご飯を食べてからにしようか」



 というわけでここで一旦昼食休憩を挟むことになり、全員はこことは別にある食堂と書かれた看板がある場所へとやって来た。そこはカウンター席になっており、一同は横一列に並んだ。



 ここでは日ごとに食事の担当が変わるらしく今日は涼の担当だった、涼は普段の乱暴な言葉遣いとは真逆なピンクのエプロンを身につけて手際よく料理を作っていきあっという間に人数分の料理が目の前に運ばれてきた。



 「おら出来たぞ! あたし特製ふわトロオムライスだ!」


 目の前に運ばれてきたオムライスは料理番組に出てきそうなほどで、琳は思わず「おぉー」と声を漏らしてしまった。



 そしてその味は確かなもので卵はふわふわトロトロ、ほんのりとバターの風味が食欲をかきたてスプーンを持つ手が止まらない、否、止まれない。



 「いい食いっぷりだな、琳」

 「凄く美味しいです、冗談抜きに今まで食べてきたオムライスの中で一番美味しいです」

 「へへへ、そんなら作った甲斐があったってもんだ!」

 「人は見かけによらないよねー」

 「んだとてめぇこら翔馬ぁ!」



 隣にいる琳に聞こえるか聞こえないかくらいの声量で言ったその翔馬の呟きを聞き逃さなかった涼が起こり、翔馬はオムライスを取り上げられた。一方残る女性陣二人、栞と千鶴は黙々と食べ進めておりちょっとした寒暖差が生まれていた。


















 昼食を食べ終え、琳は翔馬と涼に連れられてエレベーターでさらに下の階へと下がった。



 そこは先ほどまでのやや荒廃した雰囲気のエントランスホールとは違い、近未来感溢れる場所だった。



 「ここは……」

 「模擬戦闘訓練室、ここでは本物ではないけど、魔物と戦うことが出来るんだ」



 翔馬がそう説明をすると涼があの黒い板をジーンズのポケットから取り出して琳にも取り出すように指示した。





 「琳、食後の運動だ」





 上着を脱いで黒いTシャツ姿になった涼は、琳を挑発するように左手をくいくいっとやった。

個人的に涼のキャラクターは書いてて楽しいです

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