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現実世界に魔物が現れたようです  作者: 羽良糸ユウリ
第一章:ようこそ、世界の裏側へ!
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其の九『説明会』

前回のあらすじ:ようこそ。世界の裏側へ

 「は、はぁ……」

 「翔馬さん! だからやめようって言ったじゃないですか! は、恥ずかしいです……」

 「あれーおっかしいな」



 琳の微妙な反応に残念そうにして不発だったかとため息を吐く翔馬と呼ばれたスーツの男性、その隣にいる大人しそうな女性は顔を真っ赤にして両手で顔を覆っている。涼はそのやり取りを見て笑い、千鶴は表情一つ動かさず琳の方を黙ってじーっと見ている。



 「雨宮さん?」

 「気にしないで、ただ見てるだけだから」

 「あっはい」



 その後数分経って沈静化した四人、厳密には三人。その中の一人スーツ姿の翔馬と呼ばれた男性はプラネタリウムに使われるものに似た機械を用意し始めた。



 「おい琳」

 「あ、はい」



 準備をしている中、涼が琳に話しかけた。相変わらずずっと座らされている琳にクイズ番組とかでよく見るボタンを押すと「ピンポーン!」と音が鳴って丸の掛かれた札が起き上がるというあれを一つ手渡した。琳が「なんですかこれ」と質問すると「なんか質問あったらこれ押せ」と言った、琳としてはもうこの時点で色々と質問したいことが山ほどあるのですぐにでも連打したいところだが今のところは大人しくすることにした。



 「栞ちゃん、そっちはもう準備おっけー?」

 「はい、こちらはすでに整っています」

 「よしよし、じゃあ早速始めようかー……と思ったけど自己紹介してなかったね」



 スーツ姿の男性は琳の方を向き、胸に手を当てて紳士ぶりながら自己紹介を始めた。



 「俺の名前は須崎すざき翔馬しょうま。こっちの眼鏡の子は来栖くるすしおりちゃん」

 「来栖です、よろしくお願いします」



 栞は赤い縁の眼鏡を直しハイバックチェアに座りながら琳に一礼した、琳も一礼してよろしくお願いしますと返事をした。



 「あ、翔馬。暇だしあたしらも見てていいか?」

 「ん? ああいいよ」



 涼と千鶴は琳と同じくパイプ椅子を出して座るのではなく、角に設けられた二人掛けのソファーが二つありその真ん中にテーブルのある所へ座った。二人は隣同士で座るのではなく向かい合わせになるようにして座りこちらを、機械の方を見ていた。



 「じゃあ栞ちゃん、始めて」

 「はい」



 栞はキーボードのキーを一回「タンッ」と音を鳴らしてプログラムを実行させた、それがプラネタリウムのような機械に出力されるとそこには古書店を襲ったあの化物が現れた。



 そしてそれが琳目がけて突進してきた。



 「うおっ!」



 琳は咄嗟に両手で自分の顔を守って防御体制をとったが、化物はなんと琳の体をすり抜けた。そう思ったら次は壁をもすり抜けてどこかへと行ってしまった。



 琳はその光景を体を捻らせて口をあけながらそれを見ていた。一方で涼は「よく出来てんなぁー」と感心していた、千鶴は机に突っ伏していつのまにか寝てしまっていた。



 翔馬は琳の反応を見てさぞかし満足そうにドヤ顔をしていた。

 曰く、今の化物は栞が作ったホログラム映像だということで勿論害はないし実際に暴れることもない。翔馬が琳に自慢気にそう説明している後ろで栞が「作ったの私なんですけどねー」とぼやいていたのだが翔馬には聞こえておらず、聞こえていた琳がただただ「凄いですね」とどちらの名前も出さずに公平に褒めることくらいしか反応はなかった。



 「今のは魔物の中でも基本的な形をしたやつの一体、一号だ」

 「巨大な両手を地面に付けているので立ち姿はゴリラみたいなのが特徴です。」



 確かに言われてみれば、両腕は丸太のように太く体格も大きい姿はゴリラに似ていた。あんな腕で殴られれば木の柱や人の骨なんて発泡スチロール同然だろう、古書店がああなったのも頷ける。



 だが琳にはそんなことよりももっと聞きたいことが二つほどあった、琳は涼に渡されたクイズ番組で見るあれのボタンを押した。「ピンポン!」と耳馴染みのある音が鳴って、赤い丸が書かれた札が勢いよく起き上がった。



 「おっ、本当に押した」

 「もしかして冗談のつもりだったんですか……?」

 「あぁうん」

 「朝比奈ぁ!?」



 真に受けた自分が馬鹿だった、琳はそう思ってついついツッコミがタメ口になるくらいに動転してしまった。



 その後、ホログラム・翔馬・栞の説明によって先ほどの琳の説明も含めてある程度のことが分かった。



 まずあの化物は小説や映画の世界観から取って「魔物」という名前で呼ばれている。

 魔物は今から百年程前に生物実験を繰り返し行っていた大学の実験室から偶然発見された「細胞を活性化させる細胞」が発見されたことが直接的な起源とされており、その細胞を投与された生物は元の細胞をその細胞に浸食と支配をされて凶暴化・強靭化・体格の巨大化が激しく起こり一週間もすれば元々の生物の原型は留めなくなるほどだという。



 とある実験結果によれば、ネズミにその細胞を投与したところ体格が五倍以上に巨大化して腕を喰いちぎられた研究員がいたという事故が起きたらしい。



 その細胞は「狂化細胞」と呼ばれ、今の研究技術では満足に扱えるどころか手に負えない代物として大工や研究施設で最高機密の危険物として秘密裏に回収・保管・管理がされ徹底的に隠蔽されてきた。




 はずだった。




 ところが最近になって狂化細胞が保管されていた研究室からその細胞だけが盗まれるという事件が発生した、そして時期から魔物が出現し始めた。



 どうやら細胞はまともな科学者に渡ったわけではなかったようで、生物学や交配を研究していた頭のおかしい研究者に渡り、そのおぞましい実験の中で魔物は生まれたとされているが魔物を作った本人である科学者が自分の作った実験生物に殺されてしまい真相は確かではない。



 魔物が管理されず野放しになる可能性が極めて高くその実験生物である魔物を特殊部隊が掃討するということになったのだが魔物は想像を遥かに超える戦闘能力を有しており、生身の人間ではジリ貧状態に追い込まれていた。かといって強化スーツや防護服を着たままの戦闘ではスピードが遅すぎて余計に戦いづらい。



 そこで狂化細胞を発見した大学はせめてもの償いだと自ら申し出て狂化細胞を人体に投与できる物に改良する実験を開始した。



 人類の存亡の分岐点と言っても過言ではないその実験は見事大成功し、人の細胞を活性化させ身体能力を純粋に底上げさせさらには自然治癒力をも活性化させ、適合度合いによっては再生すら可能な人物も現れた。



 この人体に適合させるために改良された細胞は身体能力の扉を開くということで「開化細胞」と呼ばれ、開化細胞を受け入れることが出来た人間は「適合者」と呼ばれた。



 だが決して適合者の人数は多いわけではなく、投与された人間のほとんどが一般人のままだったり、最悪の場合細胞と細胞が衝突しあって壊死し後遺症が残ることがあるという。



 「その結果、適合できた適合者は対魔物用の戦闘員として魔物撲滅のために戦っているっていうわけ」

 「………なんか、情報量が多すぎてすぐに理解できないです」

 「ははっ、まぁ普通はそうだよね。……っと、もう午後五時過ぎだね。琳君、明日は何か予定あるかい?」

 「いえ特には」

 「じゃあまだ説明しきれてないけど遅くなったら親御さんに迷惑かけちゃうから続きはまた明日にしよう」

 「あ、じゃあ琳はあたしが送り届けるよ。荷物もあたしの家にあるはずだし」



 といった流れで今日の説明会はこの辺で終了し、琳は涼のバイクで送ってもらうことになった。琳はヘルメットを受け取って被りバイクの後ろに乗った、その道中に琳は幸三と彩芽のことを思い出して二人がどうなったのか聞くと無事に病院に送り届けられたようで今は検査入院中だという。



 琳と涼の二人は一旦あのアパートに戻って琳のリュックを回収してから琳の自宅へと向かった。



 やがてバイクは琳の自宅の前で止まって琳はヘルメットを外して返し降りた。量もヘルメットを一旦取って会話が出来る状態にした。



 「すみません、送ってもらって」

 「あぁいいってことよ、気にすんなって。むしろあそこから自力で帰れっていう方が無理な話だろ」

 「それもそうですね」

 「じゃあまた明日迎えに来るから、何時ごろ暇になる? つか電話番号渡しておくから準備できたら教えて、こっちはいつでも大丈夫だから」



 涼は後ろの黒い箱からメモ帳とボールペンを取り出してメモ帳に電話番号を書いて渡した。



 「分かりました、ではまた明日に」



 琳はそれを受け取り涼は帰るべく再びヘルメットを被ろうとしたその時、何かを思い出したかのように量がヘルメットを戻した。



 「言い忘れてたけど、今日のことは他言無用な。絶対誰にも話すなよ、親にも、友達にも、誰にもだ」

 「分かってます」

 「ん、それならいいんだそれなら。じゃあなー」

 「はい、ありがとうございました」



 涼は今度こそヘルメットを被って琳に手を振ってからバイクにまたがりエンジンをかけて走り去っていった。



 琳は家の鍵で玄関を開けて自宅に入り、自分の部屋へと帰っていった。

タイトル通り説明回となりました、次回も説明メインになるかもしれませんのでご了承ください。

戦闘などの描写はもう数話先になります。

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