EP#4:宇宙飛行士
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シェナリーの言った事の意味がすぐには飲み込めない律は、ほぼ無意識に再び彼女に問い直していた。
「それって…どういう…」
「ああ…言ってなかったわね。
“アレースパイロット”の職種はあくまで“宇宙飛行士”。
主な活動内容は地球に仇なす“エンシェント”の殲滅だけど、こちらから“エンシェント”を討伐したりはしないの。地球に危害を及ぼす恐れのある、そうね。地球と月の公転軌道のすぐ外側、大体地球から40万㎞ちょっと離れたあたりが警戒区域なんだけど…月の公転軌道内、つまり月よりも地球に近いゾーンに侵入してくると、危険エンシェントとみなし、撃破作戦を展開するわ。
まあ今は色々厳しくなって、念には念をって事で警戒区域内に侵入した時点で撃破してるから、ここ最近は月より内側に入られた事が無いの。最近って言っても3ヶ月くらい前からだけどね。
エンシェント来襲の時間帯や時期、エンシェント自体の強さに統一性が見られない事から、次に来たるエンシェントの対策が立てにくいのが今の難点なのよ。
まあ、エンシェントだって毎日毎日侵入してくるわけじゃないし、何も無い日は彼らパイロットや私達指揮官、整備士や医師達の居住コロニー兼管制塔本部である“SPACE COLONY SHIP”…通称SCSやSCSと、ここIRS本部を直接繋ぐ専用宇宙エレベーターの本体、及びそのワイヤーに隕石やデブリが直撃するのを防ぐのが仕事よ。
あと、5体稼動中って言ったけど、5体が同時に出動するのはエンシェント殲滅作戦の時だけね。
普段は2体ずつ稼動してるの。その組み合わせが、さっき言った“バディ”ね。今のところスカイは誰とも組まずに一人でミッションをこなしてるけど、いつまでもこうじゃ不安なのよ。
毎日数体稼動させようにもエネルギーの大半が…ボディに取り付けられた太陽光発電パネルによって賄われる電気エネルギーとはいえ、アレース動かすのにもコストが掛かるしそれに…」
シェナリーは専門的な用語まで交えながらまるで弾丸のように言葉を並べていく。恐ろしいくらい早口だ。
そして一息ついてから、
「…パイロットにもかなり負担がかかるから」
と続けた。
もうほとんど冷めてしまったコーヒーの香りに包まれながら、律はシェナリーが英語で乱射した言葉を日本語に再構築し、理解を進める。
「つまり…宇宙から地球を侵略してくるエンシェントを、地球に入れずに撃破するのが仕事…という事ですか?」
「まあ、そうね。あとはアレースパイロットに選出されたという事が、いかに凄い事なのかを理解してもらえたら。
ほら…本来の宇宙飛行士ならスカイみたいな人格じゃ試験、落ちちゃうでしょ。
仲間とうまくやれるかより、身体の適応度で選んでも歴代たったの数人。あなたはそのうちの一人なんだから、誇りを持つべきよ。」
そうなのだろうか、と律は首を傾げながら聞いていた。
先ほどからほとんど動いていないように感じられた時計では、律がここに来てから既に2時間半が経過している。シェナリーは律が時計を眺めている事に気付いたらしく、「もうそろそろスカイもSCSに向かってる頃ね。」
と呟いた。
SCSへはそんなに早く行けるのだろうか。
するとシェナリーは胸のポケットから小さなマイクのような物を取り出し、小声で何か囁いた。
そして、そのマイクから小さく音が聞こえたと思うと、また小さく返事をしてからマイクをポケットにしまった。
「赤旗くん。行くわよ。」
「え?…どこへですか?」
「SCS!」
シェナリーはそう言って、応接室の大きな扉を突き飛ばした。
どんどん話がややこしくなってきました( ˘ω˘ )
だいたいこんなノリでお話が進行するのでご注意ください!
そのうち用語まとめつくります;;
あとシェナリー氏喋りすぎィ!