序章
「あ、じゃあ私ココここからバスだから」
「え、あぁホントだ!また明日ね連ちゃん」
「じゃあねー」
学校から共に帰ってきた友人に手を振り、バス停の椅子に腰かけ、バスを待つ蓮。
木の葉も大分落ち始める季節になり、冷たい風が頬に当たり痛くも感じる。
蓮の首に巻いてあるマフラーも意味をなしているのか不安になってくる。
やって来たバスに乗り、一番後ろの席に腰かけた蓮は瞳をとじた。彼女はこのバスを終点までのるためいつもバスでは寝ていた。
そして今回も眠りに入った。
「そこに居られるのは誰ですっ…!?」
大きな声が聞こえ連は目を覚ました。周囲は暗闇で何も見えない。
蓮にしてみれば全く予想外の事であった。何故ならさっきまでバスの中で寝ていたのだ、いきなりそんなことを言われても困る、というものだ。
鈴が転がるような声からして声の主が、女……かもしれないという予想しか出来ない。
「こっ…答えなさい……だ、誰なのですか……!」
この声の主はどうやら自分の正体が知りたいらしい、連はあらためてそう思った。
声の主が誰か、というのは蓮自身も知りたい事だった。
そのときだった、窓から月の光が入って来たのだ。それにより、蓮に声をかけていた主の姿が見えてきた。
「え……?私…?」
「っ……ぇ…あなたは……」
声の主はやはり女で寝台の上にいた。
蓮と彼女はお互いの顔を見たまま目が離せなくなっていた。
なぜなら、まるで鏡を見ているかのように瓜二つな二人の顔。
唯一の違いを上げるとすれば寝台にいる方の女の子の顔色が雪のように白いと言うことだけだ。
「あ、貴女は…誰です……?」
「わ、私は…う、内田蓮…っていいます…。あ、貴女、は誰?」
「私は、ソフィア・グランディーナ。この地の領主の娘です。……この部屋に、ウチダ、貴女がおられる理由を聞かせて頂けますか?」
そんな事聞かれても、今の状況すら蓮には分からないのだ、答えが出せるわけがない。
なぜいきなり、真っ暗な部屋にいるのか。自分の顔とそっくりの少女。私はバスで眠りこけていたはずだ、何がどうなってるの?
一度疑問を上げてしまえばキリが無い。
コレは夢、きっと夢。そんな事を思いながらこうソフィアという少女に言った。
「私は、内田蓮。ココに来た理由は私にも分からない」
「貴女は……」
「分からない、分からないけど……出来る限り早く帰るから……」
蓮がそういうと、ソフィアは少しうつむいて、悩んだ末かこう言った。
「帰らなくて良いです。私の願いを聞いてください」
「…え?」
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