三章
「あぁ……う」
突然、体が揺れ始める。身体が異常状態に陥ったので、眠りから覚めてしまう。
何処からか蝉の声が聞こえてくる。一ヶ月という短い期間しか外で生きられないのは、俺としては儚いと思うが、正直うるさい。朝に鳴かないでほしい。
「おはよう。ちゃんとやったの?円盤観測」
俺の体を異常状態にしていたのは博士だったのか。予想はしていたけどさ。
「…ちゃんとやったさ。でも4時ぐらいになったら外が明るくなってくるだろ?だからもうこんな明るいんじゃUFOもでないだろうな、と思って眠りについた訳だ。さぼったりはしてないから」
起きてすぐにこんな嘘をつける俺はすごいと思う。普通なら寝起きだから思考も鈍っているだろうから、俺は寝起きがいいのかもしれない。
「何か変わったことは?」
「いや、特に無いな」
そう言った後、俺の横に正座していた博士は立ち上がり、
「今10時ぐらいだけど、どうする?帰る?それともなんか食べてく?」
腹が減っていたので、食べていくことにした。
「じゃあ、せっかくだから食べてくよ」
「何食べたい?」
そう言われても困る。何があるのかわからないからな。別に何でもいいんだけどね、不味くなければ。
「何があんの?」
「え?あぁ、色々あるからね。なんでもいいから好きなの言ってよ」
無いものを言ってしまった場合博士が困ると思ったのでどこの家庭にもある、
「目玉焼きがいいな。朝は目玉焼きがいい。すぐ出来て美味しいからな」
「目玉焼き……わかった。つくるから机で待ってて」
寝室からリビングの小さい机に移動して、博士はキッチンへと移動した。
何分か経って「出来た」と小さく聞こえて、皿を持ってリビングにやってくる。目玉焼きの入った皿とご飯の入った皿を受け取った。
「何かけるの?」
「ソース!ソイソースじゃないからな、ソースだ!」
男は黙ってソースをかけるのだ。譲れないこだわりといえる。醤油派になんと非難されようが俺はソース。ソースなのだ。
「私もソース」
ソース好きに悪いやつは結構いないので、
「いい友になれそうだ」
と言っておこう。
そして博士がソースを持ってきたので、食べる事にした。
黙々と会話をしないで少し気まずい感じで食べていたので、耐えられなくなり、
「明日もあるのか?」
などと質問してみた。どうせあるだろうと思いながらも。
「うん、あるよ。…嫌になったの?」
「いやそういうわけじゃなくて、何時からかなと」
正直好きではないけど。
「今日と同じ、3時から」
また、夜間歩行しなくてはならないのか。と思ったら、ふと思い出したことがある。
「なぁ、ちょっとお願いがあるんだが」
「何?」
「メアド教えてくんない?」
夜道を一人で歩くのは心細い。さらに怖いので、恐怖心を緩和したいのでメアドを聞いたまでだ。
「そういえば、知らなかったねお互いに。いいよ、連絡する事もあるだろうし。食べ終わったら教えるよ」
「ありがたい」
深謝して、また黙々と食事をする。
食べ終わって、博士からメアドを聞き、する事がなくなったので帰ることにした。
「明日も3時だからね!忘れないように」
「わかってる。それと、2時半ぐらいにメールすると思うから、返信してくれ」
「……わかった。でも何で2時半?」
「………夜道を一人で歩くのは心細いから…」
「へぇ〜。神野君て意外と怖がりなの?」
「人は見かけによらない」
「うん、わかったよ!ちゃんと返信するから。じゃあね、また明日」
「さようなら」
扉を閉めて思った。
帰ったら寝よう。何か疲れた。
でもまぁ、なんかこういうのは、いいな。