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二章

昼間の日差しにさらされながら、汗を滝の如く流出しながら帰宅。紙袋に入っている無駄に重かった本を玄関に放り、不快な汗を洗い流すため浴室へと向かっている途中で

「あ!お兄ちゃん!どうだった?」

と呼びとめられたが、

「後で話すから……」

とその場を流した。

 そして浴室に到着。

 さて、たっぷりかいて不快になった汗も流しますか。



 シャワーを浴びていて、ふと何の因果も無く思ってしまった事がある。俺は一体どうやってストレスを解消しているのかなぁと。

 人間ならば誰しもがストレスを持っている。それをどうやって解消するかは人それぞれだが、俺は一体どうやって解消しているのかいまいちよく解らない。まぁ、解消している事は確かな事だ。だって解消してなかったら、溜まったストレスが爆発でもなんでもして禁断症状でも起こしてしまうだろう。

 昔のドラマみたいに夕日が沈む川に叫ぶ事など恥ずかしくて出来ないし、と言うより馬鹿げている。本当にそんな事した奴なんていないだろう。しかも俺には打ち込める趣味も無い。そういうところでは少し博士が羨ましい。彼女にはとっても面白くて打ち込める趣味がある。

 俺には無い。

 だが、思った。こうして汗をかいた体を洗ってすっきりする事でもストレスは解消するんだと。楽しい事や気持ちのいい事をすればストレスは少しでも無くなる。

 ストレス全てが雲散霧消する事はない。ちょっとずつでも溜まっていく。それを発散する為の事をする。

 その無限連鎖だと思ったら、悲しくなる。人間って何だかとっても面倒な生物だなぁって。

 そう、思った。



 浴室から出て五分。着替えをすませて、渇いたのどを潤すため冷蔵庫のある台所に向かう。リビングには我が妹が、先程俺が帰宅した時に玄関に放っておいた紙袋に入っていた本を熱心に読んでいた。何がそんなに面白いのか知らないが、とにかく冷蔵庫から出した麦茶をコップについで飲む。

 妹は本から俺へと視線を移して

「それで、どうだった?」

と質問されたので、俺は麦茶を飲みほしてから覚えている限りの事を妹に語った。



 五分ほどで話し終えた。

「助手って……よく承諾したね」

「なんか面白い人だったからな。そうそういないからな」

「まぁ、そうだろうね。お兄ちゃんを陰から見てる人なんてのは、そうそういないよねぇ」

などと、感想を聞き入っていた。妹の感想など別段聞きたい訳でもないが、暇を持て余しているのでとりあえず、聞き流さないでいる。

「だけど気を付けてね」

何故だか解らないが、妹の小さく漏らしたその言葉が妙に気になった。

「なにを?」

顔を見ながら言ったが、妹は俺から目線を逸らして返答は無い。

 すると、妹は立ち上がって、

「じゃあ私はこれから出かけるので」

さっきの言葉の意味を聞きたかったけど、まぁそれほど聞きたい訳でもないので別にいいさ、どうでもな。

「……そうか。じゃあな、いってらっしゃい」

見送りの言葉を言って、もうお昼時だが、カップ麺すらつくる気が起きないので二階の自室に行く事にする。

 何畳かしかない自室で何かするべき事は無いかなぁと考えたら宿題の事が頭によぎってしまった。

「いや……まだ大丈夫だろ」

過酷な現実を逃避したくなったので寝る事にした。

 悲しくなってしまう。




 正直なところ、誰もいない車も走っていない道を歩くのは怖い。虫が鳴く音しか聞こえない。怖い。そんな俺の心の支えは街灯の光だけだ。

 時刻は午前二時四十分を過ぎたあたり。まともな人間は布団やベッドで休憩している時刻だ。怖い。本当に怖い。博士のメアドか番号聞いとくべきだった。そしたらメールか通話出来るから、それをしながら博士の家まで行けば今の気分をまぎらわせただろう。今日聞こう、と思った。



 ピンポーンとインターホンを鳴らした。微妙な光しかない薄暗い廊下はまだよかった。エレベーターの中は本当に感情が恐怖で埋め尽くされる感じがした。人間は恐怖状態になると、脚など筋肉に血液が集中されて普段より素早く動けるとか。さっきの俺ならきっと百メートル走でいい記録を出せたと思う。

 そんな事を考えてしまうのはきっと早くこの恐怖心から開放されたいからだろう。あぁ、早く出て来い!怖いんだよ俺は!

 扉がゆっくり開いて、クシャクシャの白衣をきた博士が登場してくれた。

「こんばんは」

と言ったのは俺で

「うん…こんばんは…」

自分から来てと誘っておいて、こんなに眠たそうな顔をされたのは初めてだ。だが、まぁいいさ。実際本当に眠いんだろう。だって、俺も寝たいと思う。『もう、研究とかいいからさ一緒に寝ちまおうぜ』なんて事は言いたいが言えない。寝たいという純粋な気持ち以外に他意はないけれども、絶対にいやらしい方の意味で解釈されるからだ。

「今から何すんだ?」

「円盤観測。上がって」

言われるままに家に入っていく。今日の午前に話をしたリビングの奥にある襖を開けた。やっぱり前と同じく廊下は暗くて部屋は涼しかった。

 襖の奥の和室には、これもやっぱり本が堆積していた。部屋中央には布団が一枚敷いてありその周りだけはきちんと本が片付けられていた。

「あそこに望遠鏡あるからさ…空見といて。なんかあったら私に言ってください。寝てるから」

そう言うと中央の布団に潜ってしまった。助手って何これ?絶対見つかりもしない飛行体を見つける役なのか?

「…絶対何も無いって。本当にこれやるのかよ」

そう漏らすと博士は上半身だけ布団から起こして、

「しっかりやっといてください」

そんなに、なげやりでいいのか?と思うくらいな事を言って再度潜った。

 まぁまぁまぁ、いいさ。まだ初めだからそんな面倒な事でも黙ってやってやろうじゃないか。でもな、何度もこんな事させたらもう来なくなるからな。助手とかいう無償ボランティア活動を放棄するからな。

 そんな事を考えつつ、望遠鏡の方へ行く。

 空の方へと向けてある望遠鏡を覗き込む。

  結構星が見えた。意外に綺麗だった。そして博士の寝息が聞こえた。人の苦労をよそにすぅすぅ眠っているので少々腹が立ち、寝息でも窺ってみようかと思ってしまったがやめた。理由は特に無い。何となく、だ。

 星座とか見えるかな?ほら、あれ何て言ったけか?ベガとアルタイルとデネブのやつ。名前が出てこないけどそんなやつ。あるかな〜

 ちょっと楽しくなってきた。



 だがそんなに長く星を見ていられるほど、星に興味は無い。二十分ぐらいだろうか。興味が無いものに対して二十分も打ち込めたなら結構な事だろ?

 さて暇になってしまった。本当に博士の寝息でも窺ってみようかな?いや、でもあれだ。俺は今日初めてこの博士に出会った。だから初対面というやつだ。その俺が初対面の女子に寝息を窺うなんて、あまりにも馴れなれしいんじゃないか?

 じゃあもう帰っちゃおうか。でも今すぐには帰りたくない。またあの夜道を歩行したくない。

 ならもう出来る事は一つしかない。寝よう。少し肌寒いけど大丈夫だ。

 望遠鏡の横で仰向けに寝そべった。

 静かだった。そりゃあ夜だから静かに決まってるけど、なんか特別静かな気がする。二人の呼吸音しか聞こえない。

 横向きになって博士の方を見た。結構距離があるのと暗いので顔は見えない。俺はぼや〜っとしか博士の顔を覚えていない。そんな初対面の人と一緒の部屋で寝ていると思うと、それはとてもおかしい事だ。

 まぁ、いいけどね。どーでも。


まともな文が書けないので困りました。

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