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東方妖骨遊行譚  作者: 久木篁
二章 竹取物騙編
25/51

第二十話 絶対。たとえ幾千年経とうとも

最初に一言。


遅くなってスミマセン。

 結局。

 婿候補に名乗りを挙げた貴公子――その五人が五人とも、輝夜が要求した品を完璧に蒐集する事は出来なかった。

 この地球上において、月の民である自分以外には知り得ない五つの宝。

 ゆえに、達成者が誰も現れなかった事は至極当然の――どうなるか分かりきった、当たり前の結果とも言えた。

 婿の座などには端から興味がなかった不比等や大伴某は早々に探索を打ち切ったらしいが、残りの三人はどうしても諦め切れず、金に糸目をつけずに方々を探し回ったと聞く。

 いずれの品も“あの”月人達が宝と呼んでいるような品ばかり。穢れた地上の、一介の貴族ごときが金を出したくらいで手に入れられる代物ではない。それでも何処をどう探し回ったのか、それらしい偽物を見つけてきた。苦労した挙句に大恥を晒す羽目になったのだから、彼等の落胆と失意の念は筆舌に尽くし難い。


 狙い通り。


 ある意味では――半分くらいは輝夜の思惑通りに事が進んだ。もう半分については、残念ながら進んでしまった――と、そう言い直すべきか。


 だから、輝夜は結果に落胆する。

 それこそ達成出来なかった貴公子達以上に、達成者が誰もいない事を。

 予想通りである事に。

 予想通りにしかならない事に。

 蓬莱山輝夜は、落胆を隠せない。


(……惜しいところまで行ったのはいるんだけどなぁ)


 ほぅ――と。

 人目も憚らず盛大に溜息を吐く。

 憂いを多分に含んだ仕草も、他人からすればひどく画になる光景で――実際、偶然にもその瞬間を目の当たりにした兵士の何人かが顔を赤らめた――けれど、輝夜はそんな連中など見もしない。

 視線を送るのは、手に握った一房の髪。

 月明かりを浴びて若芽のように輝くそれは、とある男が――より正確に記すなら彼の娘が――とある妖怪から譲り受けたという一品。冗談半分、憂さ晴らし半分で要求して、本当に手に入れてきてしまった代物。

 文句はない。

 こちらから言い出した事なのだから、そして危険を承知しながらも、彼等はそれを見事に達成したのだから、この髪について文句はない。

 強いて言うなら、敢えて言うなら、輝夜はあの男自身に文句があった。

 大妖怪と噂される少女から傷一つ負わずに髪を手に入れた手腕と聡明さは賞賛に値する。しかし輝夜にとって残念な事に、彼は少々聡明過ぎた。

 難題のもう半分――蓬莱の玉の枝についての情報がないと分かると、ろくに捜索もせず簡単に見切りをつけて諦めてしまったのだ。掛かる時間と費用を考慮した末の合理主義とも考えられる。

 元々不比等は帝の命令で仕方なく参加していたらしい。やる気もないのに理不尽な無理難題を押し付けられて、どうにか半分までは成し遂げて、そこで面倒になってしまったのだろうか。

 何にしても、彼が自ら望んで名乗りを挙げたのではないという事実、そして彼にとって自分は諦められる程度の存在でしかないという現実は、輝夜からしてみれば腹立たしい事この上ない、知りたくもなかった真実なのであった。


(あいつなら……もしかしてと思ったのに)


 達成出来た者ならば。

 あるいは自分を“あの連中”から助け出してくれるかもしれない。

 そんな淡い願望を込めた難題だったのに。


(少しでも期待した私が馬鹿だったのかな)


 今更ながらに、そう思う。

 絶望と後悔しか用意されていない自分の未来に暗澹としながら、輝夜は手入れの行き届いた庭へと視線を移す。

 風光明媚な庭の景観に似つかわしくない、武具を携えた男達。軽く見積もっても、ざっと二千人を超える兵士達が輝夜の眼前にひしめき、屋敷の外や塀の上に待機していた。

 皆一様に険しい顔つきで夜空を見上げ、弓や槍を構えている。

 まとめ役らしい男が絶えず檄を飛ばすが、その声は明らかに揺らいでいて効果は薄い。

 帝が直々に――それも国中から選りすぐった精鋭とは言うが、所詮は文明レベルの低い烏合の衆。武装も、人員も、高度に発達した技術を持つ彼らを迎え撃つにはあまりにも頼りなさ過ぎた。


 自分は、賭けに負けたのだ。


 此処で、養父母と共に静かに暮らしたい。

 ありふれた小さな願いのはずなのにそれすらも叶わず、ただ黙って、連中が連れ戻しに来るのを待つしかなくて。


(帰りたく、ないなぁ)


 自分は月の人間であり、罪を犯して地上に追放された。しかし罪を許され、次の満月の晩――八月の十五夜に月へ帰らなければならない。


 正直に、そう告白した。

 その時の翁と媼の顔は忘れられず、今も脳裏に映り込む。

 義父は瞑目したまま静かに話を聞いて、義母は泣き崩れて。


 心は微塵も痛まなかった。仮初の父母だから苦にもならない。


 そう言えば、間違いなく嘘になる。

 二人は実の両親以上に輝夜の親だった。

 蓬莱の薬を飲んだと知って化物でも見るような目つきになった実父と実母。娘の容態よりも家柄に執着した俗物。あんなのはもう、自分の親などではない。

 皺だらけの顔に笑顔が似合う老夫婦こそが輝夜にとっての両親。


 だから。


「……嫌だなぁ、帰りたく――ないなぁ」


 声が震えて涙が零れる。

 顔を見られないよう袖で隠し、噛み締めながら、輝夜は泣く。

 姫じゃなくてもいい。罪人のままでもいい。

 ただ、家族と一緒にいたいだけ。

 なのにそれすらも許されず。

 今日、月に連れ戻される。


「嫌だよぉ……」


 嗚咽と共に言葉を紡ぐ。

 許しなどいらない。地位もいらない。金銀財宝も、豪華な着物もいらない。泥に塗れようと、惨めだと罵られようと構わない。

 だから、お願いだから。

 誰でもいいから――


「助けてよぉ……」


 答えなど――言葉を返してくれる者など皆無。

 救いの手を伸ばしてくれる者など現れない。

 その――はずだった。

 だが、


「……そうかい。じゃあ、俺達が何とかしてやるよ」


 声がした。

 初めて聞く、しかし何故か安らぎを与えてくれる声。

 声のした方を振り返るが誰の姿もなく、視界の端に僅かに、部屋から立ち去る何者かの黒い着物の裾が見えただけだった。

 泣く事も忘れて首を傾げる輝夜だったが、それが誰なのか考える余裕などなく。


「――っ!?」


 突如。

 宵闇から真昼間へと。

 全てを塗り潰し、掻き消す、鮮烈な光。

 降り注ぐ光を浴びた兵士達は呆けて武器を取り落とし、夢遊病患者のように揃って視線を上に向けたまま動きを止める。


 ――……来た。



 ◆ ◆ ◆



 よくもまあ、と永琳は船内から外を見て思う。

 よくもまあこれだけの数を揃えたものだ。

 屋根の上、塀の上、庭の中、さらには屋敷の周りをぐるりと取り囲めるほどの兵士。数の上ではこちらを圧倒的に上回る。おそらく二千人は下らないだろう。


「永琳様、降りる準備が出来ましたのでそろそろ……」

「……分かったわ」


 人数では天と地ほどの差があったが、船内の乗組員達の顔に動揺は見られない。それどころか窓を覗き、外を指差して嘲笑う者までいる始末。人間を畜生や蟲のように扱っている笑み。見ていて気持ちの良いものではない。

 はっきり言って。

 永琳はこの船にいる全員が嫌いだった。

 憎いとすら言える。

 人間を人間として見ていない彼等の価値観も、蛙を締め殺したような下卑た笑い方も、何もかも全てが気に食わない。気に入らない。

 そして何より――


「御心配には及びませんよ永琳様。どれだけ数がいようと、たかが穢れた地上の原人共です。あの光によって既に忘我状態、仮に意識を取り戻したとしても、我が精鋭部隊の装備ならば赤子の手を捻るよりも容易く処理出来ましょう」


 一瞬で消し炭にして見せましょう――と。

 肉ダルマにしか見えない肥満体の男は頬と顎の肉を揺らして笑う。

 この男の部下であり、先の大戦――月移住における護国の英雄達と呼ばれて称賛を浴びているという事実が、永琳にはどうにも我慢ならなかった。


 何が英雄。

 何が精鋭。


 真っ先に逃げ出した癖に!

 彼らの――シロの手柄を横取りしただけの癖に!


 耳障りな笑い声を消し去りたいと思いつつ、それでも永琳は当たり障りのない表情を取り繕って懸命に耐えた。

 暴れる激情に身を任せたい。けれどこちらは自分一人。愛用の弓は手元にあるが、しかし武装しているのは向こうも同じ。銃と弓。武器の威力や個人の戦闘能力で負けているとは思わないが、連射性能や数では不利。劣勢なのは火を見るよりも明らかだ。

 ゆえに永琳は。

 両の拳を肉が白くなるくらい強く握り締めて、目の前で大口を開けている豚面にそのままブチ込みたくなるのを堪えながら、


「では……降りましょう」


 言葉と同時にハッチが開き、眼下に――数メートル下の地面にタラップが下ろされる。

 永琳が乗っているのは月移住の際に用いられた脱出船と同型の中型宇宙船だ。

 もっとも、中型と分類されるのは月の民から見た場合であり、収容人数五百人のその船は奈良時代真っ只中の地球文明において十分に空前絶後の巨大船と呼べる船体を誇っているのだが。

 さらに万が一の事も考えて、船には視覚的な偽装も施されていた。船体表面に特殊な術式を施しているため、遠目からは馬鹿でかい雲の塊にしか見えない。それでもかなり異常な光景ではあるのだろうが、巨大船をそのまま見せるよりはマシ――なのか? いっそ光学迷彩でもつけて透明化すれば良かったのでは?

 そんな疑問が今更ながらに頭を過ぎったが、至極どうでも良い問題だったので思考から削除した。現実逃避の一種なのだろうと判断する。

 地面に降り立った永琳達を待っていたのは、武器を落として呆けたままの兵士達と、


「……姫様」

「永琳っ!」


 屋敷の中でただ一人動ける、蓬莱山輝夜であった。

 かつての自分の教え子。

 薬を誤って飲んでしまい、追放されてしまった友人。

 自分だけが許されてしまった事への謝罪と、輝夜が味わってきたであろう孤独を拭うために、永琳は縁側から飛び降りた彼女と抱擁を交わす。


 その刹那、


「永琳。私……帰りたくない」


 永琳にだけ聞こえる声で。

 泣き出す寸前の声で、輝夜は確かにそう言った。

 予想はしていた。と言うより、予想せざるを得なかった。

 このまま月へ帰っても、輝夜に待っているのは地獄だけだと分かり切っていたからだ。

 確かに月の都で待つ連中は輝夜を必要としている。だから連れ戻そうとする。しかしそれは『蓬莱山輝夜』を必要としているのではない。輝夜の実の両親ですら輝夜を必要としていない。


 輝夜が『姫』の立場にいるから。

 月でも稀な存在である不老不死だから。

 空席だと困るから。

 珍しいから。


 ただ、それだけ。

 必要とされているのは輝夜本人ではなく、彼女が持つ肩書き。

 何の事はない。

 演じる役割こそ違えど、永琳と輝夜は同じ境遇を生きる被害者だった。

 ひたすらに『天才』としか見られなかった永琳。まるで飾り物か何かのように『月の姫』としか扱われなかった輝夜。

 自分の『個』が否定された世界で生きる苦しみを、永琳は嫌と言うほど知っている。ましてや輝夜は不老不死、一度連れ戻されたら抜け出す事は永久に叶わないだろう。


 それが分かっているからこそ。

 永琳の返答は簡潔なものであった。


「そう。……なら、逃げましょう」


 顔を上げて目を見開く輝夜。


「私と一緒に逃げましょう。この男達の――月の都の目の届かない場所で静かに暮らしましょう。私だってあんな場所に戻りたくない。私だって……ただの『八意永琳』になりたんです」

「永琳……っ」


 気持ちを吐露し、互いの身体を一層強く抱き締める。

 なんか駆け落ちするみたいになってるわねーと思いつつ。

 永琳は冷静に周囲の状況を観察して、脱出の隙を窺った。

 自分はともかく、輝夜は丸腰だ。その状態でも戦えない訳ではないけれど、大砲の一団相手に投石で挑むに近い。

 ならばどうする。


(離陸直後に船内を爆破、その混乱に乗じて脱出するしかないわね)


 下手をすれば大怪我は免れない危険な行為だが、幸か不幸か輝夜は不老不死、そして自分は医学と薬学に秀でている。

 即死さえしなければ傷を癒して逃げおおせるだろう。

 可能性は、決してゼロではない。

 作戦は決まった。後は実行に移すのみ。


「姫様、一先ずは奴らに従って船内に。隙を見て、私が騒ぎを起こします」

「……分かったわ」


 しかし。


 そんな永琳の企みを打ち砕くかのように。

 淡い希望を踏み躙るかのように。


「よし。では総員――構え」


 肥満男の号令の下、無数の銃口が永琳と輝夜に狙いを定めた。



 ◆ ◆ ◆



「……へ?」


 あまりに唐突な事態に、輝夜は思わず間の抜けた声を上げる。

 これは一体、何なのだ?

 何故銃口を向けられなければならない? 彼等は自分を月に連れ戻すために、穢れていると忌み嫌う地上にわざわざ降りて来たのではないのか?

 混乱の極みにある輝夜とは対照的に、


「……どういうつもり? この私――八意永琳と、月の姫であらせられる蓬莱山輝夜様に銃を向ける。その意味が分かった上での愚行かしら?」


 永琳の口調は極めて冷静だった。

 輝夜を自分の背に隠し、腰の後ろに提げた弓と矢筒に手を伸ばしつつ、照準を合わせる愚か者共に凍て付いた視線を投げ掛ける。


「貴方達の仕事は姫様を月に連れ帰る事。違う?」

「ええ、ええ、その通り。分かっています、分かっておりますとも永琳様。だからこうして、この絶好の機に乗じて、貴女方お二人を亡き者にしようとしてるのですよ」


 肥満男は歯を剥き出しにして嗤い、そして急に真顔になると、


「八意永琳。お前は、見てしまったのだろう? 持っているのだろう? あの裏切者から送られた、あの日の全てが記録されてデータを」

「データ? 永琳、一体何の話をしてるの……?」

「………………」


 やはり。

 狙いはそれだったか。


「……つまりこれが、貴方の筋書き」

「そうだとも。蓬莱山輝夜を迎えに地上に降りた今日この日、この夜に、八意永琳、貴様を殺す算段だったのだ。衆人の目もなく、連れてきた部下は全員私に忠誠を誓っている。今この時こそ、貴様の口を封じるのに丁度良い」

「……姫様が帰りたがらないのも承知で、私を共犯者に仕立てあげて撃ち殺す。月夜見には私が逃亡を手助けしたから仕方なく、とでも報告するつもりなんでしょう?」


 この男の考えそうな、穴だらけで安易な計画だ。

 永琳に心酔している月夜見がそんな戯言を信じる訳もないだろうに。


「大体、私は最初から貴様が気に入らなかったのだ! 家柄だけで成り上がった小娘風情が大きな顔して口を挟みおって! 月夜見の小娘もそうだ! ほんの少し賢しいだけのくせに己の知恵をひけらかす! 全くもって我慢ならん! 女は黙って男に媚び諂っていればいいのだ! 支配者の椅子はお前ではなくこの私にこそ相応しい! 全ての地位と権力は――私の物だ!!」


 狂ったように哄笑する肥満男ではあったが。

 彼に対する永琳の評価はどこまでも冷たく、辛辣だった。


「……絵に描いたような男尊女卑思想。くだらない。その程度の考えしか抱けないから、貴方は私や月夜見より下なのよ、元・防衛部隊総隊長――現・中央議会最高議長」

「何とでも言え、死ぬ間際の悪足掻きにしか聞こえんわ」

「『死ね』と言われて『はいそうですか』と従う私だと思う?」

「嫌でも従う事になるさ。――連れて来い!!」


 命令と同時に、屋敷の中から四つの影が現れる。

 前列に二つと、後列に二つ。

 前列の影は両手を拘束され、背後の男達に銃を突き付けられた――


「お爺様、お婆様!!」


 輝夜の悲痛な叫びが上がる。

 翁も媼も、庭の兵士達と同様に呆けていて輝夜を見もしない。

 ある意味では、それはとても幸運な事だと言えた。仮に意識があったとしても、この状況では目を白黒させて混乱するくらいしか出来なかっただろうから。

 二人はとても分かりやすい、説明が不要なくらいに明白な人質だった。

 今にも駆け出してしまいそうな輝夜を制しつつ、永琳は言う。


「……下種ね。プライドはないの? たかが『小娘』一人抑え込むのに人質を使うなんて、小心者にも程があるでしょうに」


 煽ってみたのはいいけれど、状況は不利になる一方。

 次の手を何十通りと考えるが、どれもこれも決め手に欠ける上に人質が死んでしまうような案ばかり。輝夜の恩人達をこのまま見捨てていける訳もなく。


「……長話が過ぎましたな。そろそろ宜しいでしょうか? 永琳様、輝夜様。貴女方の無様な最期は、私めが責任をもってお伝え致しますのでどうぞご安心を」


 向けられた銃口はおよそ三十。

 永琳の矢の一射で十を破壊出来ても残りの二十に消し炭にされる。

 人質を取られてしまった今、永琳にはもう、打つ手がなかった。


「では――殺せ」


 男達の腕に力が入り、引き金に伸ばした指が動作を開始する。

 自分の死が確定するその一瞬が、何故だか妙に長く感じた。


「………………」


 迫る光弾を前に、永琳は静かに目を閉じる。


 認めよう。確かに自分にはもう打つ手はないと。

 認めよう。私は――八意永琳はとても弱いと。

 認めよう。あの時の『彼』のように誰かを守る事すら出来ないと。


 だから、という訳ではないが。


 己の死が届く瞬間に永琳が取った行動は。

 この状況においては当然の――誰でもするような簡単なものだった。


 つまりは。


「助けて――シロ」


 か細く消えてしまいそうな小さな声。

 それに応えるのは――




「ああ……任せろ」




 刹那。


 光弾が真正面から。

 無数の『死』を伴った群が、たったの一撃で。

 全て弾かれ、打ち砕かれた。


 散って輝く光弾の残滓の中に、永琳は『彼』の姿を確かに見る。




「相手が月人だろうと何だろうと、そんな事は関係ない」




 握るは太刀。

 纏うは黒衣。

 ゆらりと立つ影は幽鬼の如く。

 屍骨に魂を宿す異形の者。

 かつて共に暮らした、安らぎをくれる家族。

 業火の中、自分を騙してまで助けてくれた恩人。




「安心しろ。俺が絶対に、アンタを守る」




 狂骨・屍浪が――其処にいた。

丸二週間ほど空いてしまいました。


諸事情でロクにPCに触れなかったんです……


それでも読んでくれている皆様に感謝を。

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