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東方妖骨遊行譚  作者: 久木篁
二章 竹取物騙編
23/51

第十八話 難題。五つの宝+α

またも遅くなってしまいました。


彼岸やお盆に入ると忙しくなる仕事なもので……。

「……めんどくさっ」


 ええっ!? と妹紅は内心で驚嘆の声を上げた。

 彼女の隣でその台詞を吐いたのは、父親である藤原不比等だ。

 口元を歪めて、言葉の通り心底面倒臭そうに。

 来客の前で、臆面もなく堂々と言い放つ。


「……相変わらずだな貴様は。いや、余計に拍車が掛かってるようにも見える」

「性分――みたいなものですかねぇ。なんせ一度死にかけた身の上なもので、しかもこんなナリでしょう? 大概の事が酷く些細で億劫な物事に思えてしまうんですよ」


 渋面を浮かべているのは壮年の貴族だ。細身な父と比べると、かなり横幅がある体躯をしている。

 実際に会うのは初めてだが、名前だけは聞き存じていた。


 大伴御行。


 蓄えた口髭や目尻のシワが相まって、父よりも二十は年上に見える。

 屋敷では宮廷の話題が滅多に出なかったため、どのような人物なのか詳しくは知らない。場の雰囲気的に、父より位が上――その程度の情報しか得る事は出来なかった。

 大伴は言う。


「確かに、病み上がりの貴様にとっては面倒以外の何物でもないかも知れん。はっきり言って、私もあまり乗り気ではないしな。だが仮にも帝からの勅旨なのだ、面倒だから億劫だからと無下に断る訳にもいくまいよ」

「勅旨……ですか。この書面の上ではそうなってるんでしょうが、要は場を盛り上げるサクラか当て馬になれという事でしょう? 枯れ木も山の何とやらと言いますが、いやはや、三文芝居も甚だしい。求婚する有象無象に困り果てたかぐや姫を助けて掻っ攫う腹づもりなんですかねぇ、あのお坊ちゃんは」


 クククと笑う父。

 大伴もつられて笑いそうになり、けれど咳払いを一つして、


「……少しは口を慎め。あんな世間知らずな若造でも、あれは帝だ」


 帝を『あれ』扱いするこの人も口を慎むべきなのでは、と妹紅は思う。


「それで、残りのお三方はこの『お願い』に乗り気なんですか?」


 父が右手でヒラヒラと揺らしているのは、一通の手紙。

 帝が父宛に直々に認めたというそれは、宮廷に仕える身であれば家宝と呼んでも差し支えない一品であるはず。だが父は、その書状をまるで紙屑のように扱っている。確かに手紙は手紙でしかないのだけれど、だとしても、あまりにぞんざいに扱い過ぎだ。

 それほどまでに面倒な勅命なのだろうか。


「乗り気も何も、その三人が今回の厄介事のそもそもの原因だ」

「おやおや、それはそれは。今度会ったら恨み言の一つでも言っておきますかね」

「まあ、奴らの気持ちも分からんでもないが、な」


 あの姫君は、それほどまでに男を狂わせる。

 そう言って大伴は立ち上がり、


「とにかく面倒だろうと何だろうと、召集には絶対に応じろ。静養中とはいえ我が侭を通すにも限度がある。折角拾った命だ、下らん反抗心で散らしたくはあるまい?」


 眼光鋭く見下ろす大伴。

 言外の忠告に対し、父は、


「大伴様も夜道を行く時は十分に気を付けた方がいいですよ。三日前の晩にも“あいつ”が出たのでしょう? 大伴様のその腹なら、まず間違いなく狙われますよ?」


 変わる事がない渋面と、人を食ったような笑み。

 両者はしばらく無言で対峙していたが、やがてどちらからともなく視線を外して。

 奇妙な対談はそこで終了と相成った。



 ◆ ◆ ◆



「やぁれやれ、宮仕えも楽じゃない。こっちは怪我人だっていうのにまったく……」


 書簡を投げ捨てた父はそう言って姿勢を崩し、柱に背を預けて気怠げに胡坐を掻く。

 そんな父の膝の上に、妹紅は静かに腰を下ろした。背後から腹の辺りに右腕を回されて、頭に顎を乗せられる。はしたない、と屋敷の者に咎められたりはしない。これは父が自分から指示してきた事なのだから。


「妹紅、お前はどう思う? この馬鹿げた求婚に参加して私に得があると思うか?」


 父が口を開くたびに顎が上下して、妹紅の頭を僅かに揺らす。

 背中から伝わる熱を感じながら、


「……私にはよく分かりません」


 父の問いに、十二歳の少女らしく素直にそう答えた。

 以前の――傷を負う前の父ならば、こんな愚直な答えでは決して満足などしなかっただろう。無知だ浅慮だと怒鳴り散らし、妹紅が如何に出来が悪い娘であるかを刻み込むように平手を打った。

 だが今は――


「そうだよなぁ、分からんよなぁ。私は分かるが、分かりたくない」


 その返答こそ正しいのだと言わんばかりの口調である。

 愉快そうに口端を吊り上げる父の姿は、妹紅にとって見慣れないものだった。

 以前は白いものが僅かに見える程度だった頭髪。しかし今は老人と見紛うばかりの総白髪で、左腕はだらりと力なく垂れ下がって床に落ちている。上級貴族らしく身嗜みにも気を付ける方だったのだが、今は最低限に整えるだけで済ませていた。

 都中にいる愛人達に意気揚々と会いに行く時のような――その内の一人だった妹紅の母親との逢瀬を繰り返していた時のような、見栄と贅を凝らした着物ではない。


 だから妹紅には、自分を抱きすくめている父が別人のように見えた。


 別人のように物静かで。

 別人のように底が見えなくなり。

 そして別人のように優しくなった。


 この屋敷に引き取られたのは今から八年前、妹紅が四歳だった頃の話だ。

 下流貴族だった母が流行り病で亡くなった直後、屋敷とは名ばかりのあばら家で一人途方に暮れていたところに父は現れた。

 今思えば、体裁を気にして保身に走った結果なのかも知れない。

 人の口に戸は立てられないもの。しかも父は宮廷でもそれなりの地位にある。飽きて捨てた女が孕んだ挙句、幼子を残して死んだ――なんて噂が広まれば窮地に立たされて職を追われる事は目に見えている。

 だから自分は引き取られた。

 母無し子を哀れに思い引き取った善人を演じるために。

 いずれは厄介払いも兼ねて政略結婚に使われてしまうのだろうと薄々感付いていた。

 けれどそれでも、父を嫌う事も憎む事も出来なかった。たとえ娘だと思われていなくても、母を棄てた男であっても、妹紅にとっては血の繋がった唯一の肉親だから。


「どうした?」

「……何でもありません」


 顔を覗き込んでくる父。

 何故だか無性に気恥ずかしい。

 こうして膝に乗せられている事も自分にとってかなり勇気がいる行為だ。

 父の事は嫌いではない。嫌ってはいないのだけれど……何なのだろうか、このむず痒くて不安を煽るような胸の高鳴りは。


「大丈夫……なのですか?」


 無意識の内に、誤魔化すように尋ねていた。

 何がどう『大丈夫』なのか自分でも言ってて疑問に思うが、とにかくこの慣れない『他のご家庭より仲が良さそうな父娘』な体勢から意識だけでも逃れたかったのだ。


「このままうだうだ考えていても埒が明かん。あとは姫様の屋敷に行ってから考えるしかないな。どうせ此処にいてもする事などないし、いい暇潰しにはなるだろうさ」


 立ち上がり、身支度をするために部屋を出る父。

 その一瞬、ほんの一瞬だけだったが、


「あ――」

「ん?」

「い、いえ、何でも……ありません」


 おそらく気のせいだったのだろうが。

 陽を浴びて床に映った父の影には、左腕がないように見えた。



 ◆ ◆ ◆



 蓬莱山輝夜は辟易していた。

 見事な作り笑いを浮かべて適当に相槌を打ってはいるが、その心中では目の前で絶えず口を開き続けている四人に対しての罵詈雑言というか誹謗中傷というか、とにかく本人達が聞いたら完膚なきまでに打ちのめされてしまいそうな文句で満ち溢れていた。

 上流貴族の中でもそれなりに名が通っているらしい貴族のオッサン達。揃いも揃って如何にも『お金かけてます』と言わんばかりの豪華絢爛な衣装に身を包んでいる。

 まあ、分からなくもない。求婚しているのだから見栄えを良くするのは当然の事だ。

 それは良い。良いのだが……、


(……ものっすごく臭いんですけどこの人達!)


 少しでも印象を良くしようと香を焚いているようなのだが、その香りの一つ一つがキツい上に、体臭やら加齢臭やらと混ざり合ってしまってどうにも耐えかねる悪臭と化しているのだった。

 いくら不老不死の身の上でも、臭いものは素直に臭い。

 臭いの大元である本人達は気が付いていないらしく、平気な顔で輝夜を誉めちぎる。だが、そんな声など輝夜の耳には届いていない。彼女の精神はこの甘ったるいんだがドブっぽいんだかワケのワカラン悪臭に耐えるので既に一杯一杯になっていた。


(いっそ全員池に突き落としてやろうかしら!?)


 ドッセーイとかそんな感じで! なんて殺意にも似た怒りすら湧き上がってくる。

 この時代、入浴なんて習慣は皆無に等しい。上級貴族であっても蒸し風呂がせいぜいだし、それすらも一ヶ月に四、五回ある程度。普段は濡れた布で身体を拭くくらいの事しかしないのだ。

 部屋の隅を横目で窺い見れば、養父の翁もさりげなく鼻に袖をやってこの悪臭を懸命に堪えているようだった。

 月の都には入浴の習慣が根付いている。

 故に輝夜は耐えられない。

 毎朝毎晩身体を拭いて清潔を保つ努力はしているが、熱い湯に浸る快感を知ってしまっているため気休めにもならない。

 養父母との生活は平穏で楽しい。しかしただ一点だけ、満足に風呂にも入れないこの衛生環境だけは不満なのであった。

 それに加えて、


(どうしてこんなおっさんばかりなのよ……)


 一番若くても四十代後半、最年長は六十代くらいに見える。

 実年齢でいえば蓬莱人である輝夜の方が彼らよりも何十倍も年上なのだけれど、精神年齢は恋に恋する十代の乙女。何だかややこしい気もするが、とにかく、言い寄られるのは女として喜ばしい事ではあるけれど年上(見た目的に)にも限度があるのよー! と叫びたい訳で。

 そして思うのは“あの男”の事。

 双六盤を投げつけて一方的に喧嘩別れしてしまったが、あれ以来、あの男の話を養父が口にする事はなく、結局何処の誰なのかすら分からずじまいになっていた。


(どうせ求婚されるなら、せめてアイツくらい若い方が良いなぁ)


 そう思う。

 同時に、折角元に戻ったのに、とも思う。

 あれから一月半が経って、予想通りに輝夜は元の身体を取り戻した。

 けれど見せ付けようにも、輝夜を子供扱いしたあの男はもう此処にはいない。自分が追い出したような形なので罪悪感と後悔だけが募る。

 まるっきり子供じみた我が侭だった。

 彼にだって帰る家があり、待っている家族がいる。それを無理矢理に、こちらの都合で引き止めようとした自分に非がある。

 分かっている、分かってはいるのだ。

 だから、


(もう一度だけ、会えないかな……)


 もう一度会って、あの時の事を謝りたい。

 その願いを天が聞き入れたのかどうか定かではないが。

 からり――と。

 廊下側の襖が外から引き開けられて。


「いやはやどうも、遅くなりまして」


 あの男が。

 遅刻していた車持皇子――藤原不比等が。

 白髪頭をカリカリと掻きながら、飄々と姿を現した。

 ……あの気に食わない娘を連れて。



 ◆ ◆ ◆



 顔合わせの部屋に入った途端、六人分の視線が襲い掛かってきた。

 中年中年中年中年、おじーちゃん、姫様。視線恐怖症を患っている訳じゃあないが、こうも一度に注目されると何だろう……すごく興奮するね――ってそうじゃなくて。

 割合としては粘っこい敵意が三に乾いた呆れが二、そして声すら出せない驚きが一というところか。どれが誰のものなのかは説明が面倒なので割愛する。

 このまま突っ立って注目されていても仕方がないので、空いている場所――大伴様の隣に座る。妹紅も私の隣に腰を下ろした。実は連れてきちゃってたりする。書簡の何処にも『娘同伴させちゃいけません』とは書いてなかったし。というかこの部屋すごく臭いんですけど、誰か側溝にでも落ちた?


「……遅かったな。何をしていた?」

「右手一本だとオメカシするにも時間がかかりましてね」


 揃って正面を向いたまま、大伴様と小声で言葉を交わす。男二人の色気もへったくれもない会話だが、求婚する気なんぞさらさらない私達にとっては唯一の暇潰しなので贅沢は言えない。


「何故貴様の娘まで連れてきた?」

「後学のために、都一の美女を見学させようと思いまして」


 ほんの少しだけ、『実は娘も姫様と結婚したがってるんですよー』なんて狂った、ある層には需要がありそうな感じの返答も思い浮かんだが、なけなしの理性を総動員して自重した。半ば強引に連れてきてしまった感もあるので、これ以上妹紅の心労を貯めないようにしなければ。

 改めて、輝夜姫様の顔を拝見する。

 ……ふむ。『開いた口が塞がらない』を見事に表現しておりますな。流石は姫様、呆けた顔も大変見目麗しくあらせられます。仮に台詞を付け加えるとしたら『こいつぁ驚いたぜ!』が適切か。

 そして妙に背が伸びて成長していた。成長期だからとか、そんな言葉で誤魔化せるものではない。一月半で六年分は大きくなっている。巷では『竹から生まれた』と噂だが、あながち間違いでもないような気がしてきた。とすると姫様は人の子ならぬ竹の子になる訳だが、その重そうな衣装を剥いてお湯に浸して苦みを抜くと美味しく頂けちゃったりするのだろうか。

 何だか脳味噌が明後日の方向に全力失踪(疾走に非ず)してる気がしないでもないが、黙っている間はへらへら笑うだけの真人間を演じ通せる自信があるので、声を出さずに笑う事にした。

 へらへら、へらへらへら、へらへらへらへらへらへら。

 口を半月の形にするのがコツである。

 へらへらへら。


「そのふざけた口を閉じろ馬鹿者」

「……父様、大丈夫ですか?」


 小声で怒られた挙句、妹紅に頭の心配をされてしまった。……この年で娘に痴呆を疑われるとは、少し笑い過ぎたか。姫様もにこやかに微笑みながら器用に睨んできてるし。美人はどんな顔してても見映えして良い方に誤解されるから得だよなーと心の底(深さは人差し指くらい)から思いました。

 それからしばらくは大伴様と他三人の求愛行動が続いた。当然私は不参加。一応、やる気がない事がバレないように『如何にも』とか『それはそれは』とか『ほんにまあ、そげな事が』とか適当に相槌を打ちながら、時間が過ぎるのをぼんやりと待っていた。

 陽光が白から橙に変わり始めた頃、


「……皆様のお気持ちは大変よく分かりました。ですが残念ながら、その申し込みをお受けする訳には参りません」


 そう姫様が切り出したのは、私が『もし自分があの池の鯉だったらどんな風に料理されたいか』を真剣に考えていた時の事だった。やはり刺身か?


「父様父様、戻って来てください。そろそろ終わりそうですよ」

「妹紅も刺身が良いと思うか?」

「はい?」


 不思議そうな顔された。当然だが。

 そして気が付けば、目の前に一通の手紙。開いてみると、記されていたのは五つの品目。どれもこれも、見た事も聞いた事もないような代物ばかりである。


 仏の御石の鉢。

 蓬莱の玉の枝。

 火鼠の裘。

 龍の首の珠。

 燕の生んだ子安貝。


 ……何ですかコレ?

 隣を見ると、大伴様も、他の連中も、皆一様に首を捻っていた。


「どうしても私を諦めきれないというのなら、その手紙に記された宝を此処へ持って来てください。いずれも、この世に二つとない宝ばかりです。手に入れるのは簡単な事ではありません。ですが、だからこそ、その宝を持ち帰る事が出来た勇気ある殿方と私は夫婦になりたいのです」


 至極もっともらしい事言ってるけど、この宝って本当に実在するのか? 体の良い厄介払いとしか思えないんですけど。


「それと……車持皇子様」

「………………」

「父様、呼ばれてます」

「えっ? ――ああ、はいはい何でしょうか?」


 一瞬、誰を呼んでいるのか分からなかった。

 そもそも何で『車持皇子』なんて呼ばれてるんだっけ私。

 牛車持ってるから? んな事言ったらほとんどの貴族が持ってるって。それに私の牛、この前首切られて死んじゃったし。今から『車無皇子』とでも名乗るべきなのだろうか? 健康のためにもなるべく自分の足で歩くよう努力しましょう。


「車持皇子様には、それらとは別にもう一つ持ってきてほしい物があります」

「うーわ何ですかその嫌な特別扱い。双六で負けた腹いせですかー?」


 ぼそりと小声で愚痴ったので両隣の大伴様と妹紅にしか聞こえてない、と思う。

 ああでも、姫様には聞こえてしまったらしい。その証拠にものっすごく綺麗な笑顔で青筋浮かべてらっしゃるし。


「風見幽香という名の妖怪をご存知ですね? 車持皇子様には、その妖怪の髪を一房切り取って持ち帰ってきて欲しいのです」


 ……風見幽香?


「風見幽香というと、あの風見幽香ですか?」

「そうです。今この都でも噂となっている妖怪の一人。星熊勇儀、伊吹萃香、そして八雲紫と肩を並べるほどの大妖怪です」

「……今まで彼女に挑んで帰ってきた者はいないと聞きますが?」

「心配なさらなくても、別に挑めと言っているのではありません。ただ『髪が欲しい』とお願いしてきてもらいたいだけです。車持皇子、いえ、不比等様。妖怪に襲われながらも生き延びた貴方様だからこそこうしてお頼み申しているのです。私のお願い……叶えていただけますよね?」


 ……子供扱いしたのがそんなに嫌だったのだろうか。

 左右に助けを乞う視線を送るが、大伴様も、あれだけ姫様には強気に出ていた妹紅も、あまりの急展開に固まっていて役に立ちそうになかった。


「風見幽香は都が一望できる山の中腹に畑を作り、奇妙な花を育てていると聞きます。此処からでも見える目と鼻の先、三、四日もあれば行って帰ってこれる距離でしょう? 期待して、首を長くして待っていますよ、不比等様?」


 待ってるって、私の死亡通知が届くのをですか?

 そう言いたいのを堪えつつ、右手を上げて、


「あのー、姫様。一つだけ宜しいか?」

「何でしょう?」

「今謝ったら許してくれたりとかは――」

「――許しません♪」


 ですよね。



 ◆ ◆ ◆



 こうして私は。

 非常に好戦的と名高い風見幽香の花畑に行く羽目になってしまったのでした。

 ……姫様宛に遺書でも書いておこう。

 内容は『化けて出てやる』とかそんな感じで。



 ◆ ◆ ◆



 ああそれと、これは余談なのだけれど。

 都を騒がせているあの事件、食われた人数がとうとう二桁を超えました。

 都会っておっそろしいねー。

GW中に書き溜めしとくべきなんですかねー。

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