第十話 回顧。それぞれの過去
傾いた夕日が世界を照らす中。
山の中腹の道を歩く三つの影がある。
一番長身の影は白鞘の太刀を腰に帯びた隻腕の着流し姿で、その一歩後ろを萌葱色の襦袢を着た小柄な子供の影が続く。
「まあ何にしても、無事に抜け出せて良かったな」
「……儂はちっとも無事じゃなかったがの」
◆ ◆ ◆
私が案内してあげるよ、と。
竹林の全ての道を知るてゐが案内役を買って出てくれた事で、進退窮まった状況に一筋の光明が差したように思えた。……思えたのだが。
けどなぁ、と屍浪は自分自身の楽観的思考を訝しむ。
こうも自分の都合の良いように事が運ぶものなのだろうか。
そして、その懸念は的中する。
どうやら妖怪であるこの二人、幸運を司る神仏に心底嫌われているらしく、てゐが案内する先々で災難に巻き込まれる羽目になったのだ。
最初の犠牲者は、やはりというか何というか、邪魅だった。
度重なる悪戯で神経と誇りを磨り減らしていた邪魅。
罠を仕掛けた張本人であるてゐを信用し切れなかったようで、彼女の後に続く屍浪の右腕にぴったりと張り付き、二度と引っ掛かるかと言わんばかりの疑心暗鬼な形相で足元を一歩一歩慎重に確かめながら歩いていた。
にもかかわらず、何故か引っ掛かる。
十歩歩けばトリモチ付きの玩具の矢に狙撃されてネバネバに。
また十歩歩けば麻袋に入った石灰を顔にぶちまけられて真っ白に。
さらに十歩歩けば頭上から水が降ってきて石灰と混ざってドロドロに。
もはや呪いじみていた。
しかも、どういう訳か隣を歩く屍浪は全くの無傷。
被害といえば石灰で少し着流しが汚れただけ。
流石の邪魅も自分の不運とみすぼらしさに心が折れてしまったようで、屍浪の腹の辺りにドロドロネバネバの白濁液で汚れた顔を埋めて、ヒックヒックと小さく嗚咽を上げて泣き始めてしまった。
幼児退行した彼女の背中を軽く叩いたり顔を拭いてやったりして慰めたのだが、泣き止んで立ち直るまで思いのほか時間が必要だった。
次の犠牲者は驚く事に因幡てゐ本人だった。
どうやら、迂闊にも罠を仕掛けた場所を忘れたらしく。
こっちだよ、と自信満々に先行すれば何処かの誰かのように一本釣りに。
あはは間違えた、と道を変えれば地面から跳ね上がった板に顔面を強打して。
今度こそぉ! と半ばヤケクソで走れば連続して掘られた落とし穴に全て落ちて。
いつもはちゃんと覚えてるんだよ!? 久しぶりの獲物――じゃなくてお客さんだったから張り切り過ぎて多めに仕掛けちゃっただけだからね!? と穴から這い出したてゐは再び泥だらけになった顔を真っ赤に染めて弁解した。
仕掛け過ぎて場所を忘れるとか、大馬鹿にもほどがある。
当然、穢された挙句泣き顔まで晒してしまった邪魅は烈火の如く激昂した。
お主は馬鹿なのかさては馬鹿なんじゃな! と怒りのままにまくし立てて頼りない兎耳の案内人に飛び掛り、屍浪の眼前で、またあの無邪気極まりない決闘をむーいむーいと繰り広げたのだった。
◆ ◆ ◆
とまあ、そんなこんなで。
普段はてゐも足を踏み入れない奥地までぐるっと遠回りする事になり。
その途中、邪魅とてゐは何度も決闘という名のじゃれ合いを繰り返して。
結局、十日間も彷徨った迷いの竹林を脱出するのに更に二十日、計一ヶ月ほどの時間が掛かってしまった。
「…………なあ小娘、まぁだ着かんのか?」
「……もう少しで着くから」
邪魅の問いに、二人の前を歩いていた少女が振り返って、そう言った。
背丈は邪魅やてゐと同じくらいか。顔立ちは整っていて、肩口まで伸ばした癖のある髪と真紅の瞳が印象的だ。
大人びた雰囲気の合間合間に、外見相応の幼さが垣間見える少女だった。
「もう少しって、さっき聞いた時もそう言うたではないか――あたっ」
「道案内してもらってんだから文句言いなさんな」
ぶうぶう文句を言う邪魅の頭を軽く小突いて黙らせてから屍浪は詫びた。
「済まねぇな嬢ちゃん、連れが変な事言って。気に障ったか?」
少女は、んん、と首を振り、
「……大丈夫、気にしてない」
「そりゃ良かった。……にしても話に聞いた以上に面倒くさそうな国みてぇだな」
麓を見下ろす屍浪の視線の先――田園風景が広がる平野に、丸太の外壁で円形に仕切られた王国があった。国中の至る所から炊事の白煙や製鉄の黒煙が上がっている。
大きな国だ。と言っても、無論、かつて屍浪が“彼女”と共に住み暮らし、そして焼き滅んだあの大都市とは比較するのも馬鹿らしいほどに小さい。
だがそれでも、他の土地に点在する集落や村々に比べれば圧倒的な国土を誇っていた。
その国を治めているのが、
「土着神――洩矢諏訪子か……」
諏訪子は土着神であり祟り神であるミシャグジ達を統べる神として祀られていた。
土着神とは、特定の地域でのみ信仰される神の事。信仰されている土地の内では絶対的な力を持つとされているが、その反面、民が信仰を放棄すれば容易く弱体化して最悪の場合消滅する、妖怪以上に不安定な存在だ。
洩矢諏訪子に関する情報はない。
容姿も力量も全てが不明。けれど諏訪子がかなりの信仰を集めているという事は、平野全体を膜のように覆っている神力からありありと読み取れた。
神であり、一国の王として君臨する者。
面白そうではある。
面白そうではあるが、調べたくても――
「……門前払い食らっちまったしなぁ」
別れ際に放たれたてゐの言葉が蘇る。
『行くつもりなら気を付けた方がいいよ。あの国、余所者には冷たいし、今ちょーっと厄介な事に巻き込まれてるみたいだから…………ウサ』
てゐの語尾に関しては、この際置いておくとして。
邪魅と二人で訪問してみたのだが、門番にあっけなく追い返されてしまった。
てゐの忠告通り、余所者には冷たい国であるようだった。
まあ、笠と手拭いで顔を隠した隻腕の男が妙に偉ぶった口調の子供を連れて訪ねて来たら、門番として怪しむのは当然の事だと自分でも思うが。
たかが人間一人、赤子の手を捻るように簡単に押し通る事も出来た。
自分が治める土地に妖怪が入り込めば、諏訪子も様子を見るために姿を現すしかないだろう。だが、諏訪子が他人の話を聞く耳を持たない神だった場合を考えると、あまり得策とは言えなかった。
土地神が統べる領域で何の考えもなく一戦交えるほど屍浪は愚かではない。
さてどうしたものか、と門から少し離れた場所で思案していた、その時だ。
両手一杯に花を抱えたこの少女と出会ったのは。
国を見下ろせる山の中で花を育てて暮らしているのだと少女は言った。時々は山を下りて、育てた花を売りに来ているらしい。
こちらを見て首を傾げる少女。屍浪も当たり障りのない説明を返した。
自分達二人は旅をしている流れ者なのだが、神が治める国の噂を聞いて興味を抱き訪れたのだと、そう説明した。嘘は言っていない、と思う。うん。『妖怪なの?』とは聞かれなかったし。
少女は屍浪を見て、それから邪魅を見て、もう一度屍浪を見て――
私の家で良かったら一晩泊めてあげてもいいけど、と言われた時は屍浪の方が驚いてしまった。
良いのだろうか。本人がそう言うのだから良いのだろう、きっと。というか、宿無しの親子か何かだと思われているんじゃなかろうか。
じゃあ遠慮なく、と飛びついたのは邪魅だった。
そんなに野宿が嫌だったのか。樹木の妖怪だろうに。
「……着いたよ。此処が私の家」
少女の声が屍浪の意識を現実に引き戻す。
彼女が指し示していたのは、今にも崩れ落ちそうな古びた社だった。
「前はお婆さんの土地神がいたんだけど、信仰を獲られて消えちゃったの」
「わぁー……」
これはボロッちいのぅ、と続けて言い掛けた邪魅の口を素早く塞ぎながら、確信に近い『予感』を抱いた屍浪は少女に尋ねた。
「嬢ちゃん、嬢ちゃんはもしかして……」
「うん。貴方達と同じ妖怪。家族とか、そういうのは初めからいないの」
だから、
「だから貴方達は久しぶりのお客様」
うふふと笑う少女。
その笑顔は、悪戯好きな兎の笑みと何処か似ていて。
うわあ、すげぇ既視感。
「罠が仕掛けられてたりしての。何処ぞの性悪兎みたいに」
「はっはっは――」
笑えねぇって。
◆ ◆ ◆
その日の夜。
「屍浪? もう『寝た』のか?」
ギシミシと軋む床板から身体を起こして、邪魅は問うた。
返事はない。
太刀を右腕で抱くようにして座っている屍浪は、壁に背を預けて俯いていた。
屍浪の睡眠は、一般的な生物が行う睡眠とは少し違う。詳しい事はよく分からないが、五感の全てを封じて無音無明の闇の中を漂う一種の精神統一、記憶と感情の整理を行っているのだそうだ。その間は完全な無防備状態となってしまうため、月に一度の周期でしか眠らないとも教えられていた。
唯一の隙、弱点と呼んでも過言ではない秘密を話してくれたという事は、それだけ自分を信用して命を預けてくれているという事で……
「…………むぅ」
何故だろう、頬が急に熱くなった。
「屍浪……」
返事がないと分かっていても、ついつい名を呼んでしまう。
それほどまでに、自分にとってこの骸は掛け替えのない存在となっていた。
目覚めて実体化した時には、既に屍浪が持つ太刀の鞘として生きていた。
記憶はおぼろげで、自分の名前を思い出すので精一杯。右も左も分からない状態に陥った邪魅を、白骨の妖怪は呆れながらも助けてくれたのだ。
『……参ったな。全部綺麗に忘れちまってんのか?』
辟易しながらも、知っている事の全てを教えてくれた。
自分の名前が邪魅である事。
屍浪が持つ鞘から生まれた植物の妖怪である事。
そうなのか、と素直に信じる事が出来た。
普段は嘘つきで飄々とした白骨を演じているが、その時だけは偽りのない真実を語っているのだと確信出来たから。
勿論、良い記憶ばかりではない。
大昔、一人の女を巡って殺し合った事も。
子供達と呼んでいた妖怪を、人間を守るために戦った屍浪に斬り殺された事も。
殺してくれと頼みに来た屍浪に、恨み言を言うだけ言って消滅した事も。
全てを教え終えた時、屍浪は言った。
今も恨んでいるのなら、何時でも俺を殺してくれても構わない、と。
しかし、そんな事を言われても、
「……出来る訳、ないじゃろ」
最初の頃は何度か試してみようと思った。だが、出来なかった。
屍浪が邪魅を頼っているように、邪魅も屍浪に依存し切っているのだ。
そもそもが生前の恨みの記憶。自分の物だと実感が湧かない意志の残骸に従うというのも馬鹿馬鹿しく思える。
だからその代わりに、と言う訳ではないが。
屍浪が寝ている間だけの、密かな楽しみがあった。
「………………」
胡坐を掻いている屍浪の足の間にすっぽり収まり、身体を深く預けた。
誰にも言えない自分だけの秘密に、思わず頬がにへらと緩む。
普段は勇気よりも羞恥心が勝ってしまって絶対に出来ない、月に一度だけの限られた触れ合い。
でも、と考える。
屍浪が父親か兄――家族であったなら、こんな風に甘える事も出来たのだろうか。
「……いや、ただ儂が素直になれんだけ、か」
欲望に忠実な化生らしからぬなぁ、と自嘲気味に笑って。
そこで、目が合ってしまった。
じいいぃぃぃっ、と布団代わりのボロ布を被ってこちらを凝視している少女と。
「何、してるの?」
「……えーっとじゃの、これはその、そうアレじゃ」
どれじゃ、と自分に突っ込む。
冷や汗を垂らしつつ必死に言い訳を考えて、結局、
「…………こっちで、一緒に寝るか?」
こくん、と少女は頷いた。
「絶対に内緒だからな? 屍浪に言うてはならんぞ?」
「分かってる」
少女達の秘め事を見守るように。
夜は、静かに更けていく。
◆ ◆ ◆
「……何なんだろうね、この状況」
今回は他人の――しかも妖怪とはいえ年端もいかない少女の家に厄介になっているという事もあり、月に一度の『睡眠』をいつもより短くしてみたのだが。
目が覚めたら少女二人を膝枕してるとか、寝起きの一発にしては少々刺激が強い気がする。膝枕されている、のではなく、している、というのがどうにも理解し難い。されたいとも思わないが。
「まあ、いいんですけどねー」
少女達の髪を梳くように撫でながら、朝日が山間から顔を出すの待つ事にした。
静かな夜だ。虫の鳴き声すらしない。聞こえるのはクゥクゥという安らかな寝息だけ。
「……屍浪」
「ん?」
名前を呼ばれた。
しかし寝言であったらしく、その後に言葉は続かなかった。
邪魅と旅を始めてから何百年も経った。
途方もない時を共に過ごしてきた相棒。自分の愛刀を包む鞘の化身。
そして、自分が斬り殺した妖怪達の母の生まれ変わり。
(……正確には、分身体だけどな)
死してなお『増殖する程度の能力』によって自らの分身体を産み遺した森の女王。
(あの時……)
焼き尽くされた荒野の果てで、井戸の縁に腰掛けた屍浪は己の死期を悟った。
満天の星空で輝く弓形の銀月、放たれる光の矢によって消滅するはずだった。
(だが、死ねなかった。彼女達の手によって)
狙いが逸れたのか、“彼女”が意図的に逸らしたのか、真実は屍浪には分からない。
分かっているのは、光の矢は自分を貫かずに、はるか手前の地面を削り溶かしたという事だけ。幾千幾万の石礫を伴った衝撃波に吹き飛ばされて意識を失ったが、それでも屍浪は確かに生きていた。
意識が戻った時、屍浪の眼前に広がっていたのは焦土と化した大地ではなく、地平線の彼方まで埋め尽くす青々とした草原だった。
草原の丘陵に一本だけ生えた大木、無数に伸びた枝に抱かれるようにして自分は眠っていた。閉塞感や息苦しさはない。むしろ逆に、必死に守ろうとする執念すら感じられた。根本を見やると、例の井戸が自分と同じように根に埋もれているのが見えた。
微かに感じ取れる妖気は、間違いなく風に散った邪魅のもの。
散り際に、邪魅は確かに言っていた。
簡単に死なせるものか、お前は永遠に孤独を生きるのだ、と。
その情念が、屍浪が目覚めるまでずっと守り続けてきた。
生かすために。苦しませるために。
ならば、と枝から抜け出た屍浪は一つの行動をとった。
枝の中でも一際太くそして堅いものを選び、切り、削り、太刀の柄と鞘としたのだ。大した理由があった訳ではない。ただ、自分がどのように苦しみ足掻くのかを見届けてもらおうと思っただけの事。
だが、事態は思いもよらぬ方向へと急転した。
放浪の旅を始めてからしばらく経ったある日、月に一度の睡眠を終えた朝。
自分の傍らで、幼い少女の姿となった邪魅が眠っていたのだ。
屍浪は考えた。
何故、邪魅が蘇ったのかを。
結論に至るのは早かった。邪魅が持つ能力を思い出せば簡単な事だった。
幸か不幸か、邪魅は生前の記憶のほとんどを失っていた。
だから、嘘を教える事も出来た。しかし、出来なかった。
縋るようにこちらを見上げる邪魅が、何処までも純粋に見えたから。
全てを教え終えた後で、殺したければ殺すが良いと提案してみた。けれど今のところ彼女が寝首を掻こうとした様子はない。そうしない理由が屍浪には見当がつかなかった。
「ん……」
邪魅が小さく寝返りを打った。
紅葉のような手が、着流しの袖をしっかりと握っている。
どういう訳か、癖毛の少女も反対側の袖を同じように握っていた。
「……何時まで持つのかねぇ、俺は」
心が洗われる光景を眺めながら、屍浪は静かに己の命の残量を推し測る。
姿が幼くなったとはいえ、邪魅はれっきとした植物の大妖だ。大地にしっかりと根を張りさえすれば、真っ当な妖樹の邪精として存在を維持する事が出来るだろう。
だが今、彼女は鞘として此処で生きている。
――では、一体何を糧にしているのか?
その疑問は、屍浪の身を今も襲っている倦怠感が解き明かした。
邪魅は、屍浪の妖力を削り喰らって生きているのだ。
無意識のまま、少しずつ、少しずつ、指先からゆっくりと肉を剥ぎ取るが如く。
考えれば、至極当然の事のように思えた。
屍浪の正体は超高濃度の妖力そのもの。他の妖怪達からしてみれば、力を蓄えるのにうってつけな極上の品なのだから。
理由が判明しても、邪魅には真実を教えなかった。
「言うほどの事でもねぇしな」
恨まれる原因を作ったのは自分で、鞘として持ち歩いていたのも自分だ。
ならばこのまま食われ続けて、消滅するのが相応しい。
板壁の隙間から、うっすらと日の光が差し込み始めた。
社の中を照らす陽に、屍浪は無い目を細めながら、二人の少女を起こそうとして――
「っ!?」
突如として吹き荒れた暴風に反応し、自身を盾とする事で少女達を守り切った。
「な、何事じゃ!?」
「え……え?」
「二人共、頭下げてじっとしてろ!」
破壊された木戸の破片を背中に刺したまま太刀を握り、状況が読み込めずに目を白黒させている二人にそう言い放って、屍浪は社から飛び出した。
朝日によって透き通っていたはずの空は雷鳴轟く曇天へと姿を変えて、横殴りの豪雨が強かに身体を打つ。大地は絶え間なく鳴動と隆起を繰り返して、立っているのがやっとな状態だった。
「嬢ちゃん、心当たりは!?」
「こんな事、今まで一度もなかった!」
「じゃあ本格的に天変地異って訳かよ!」
何が起こっているのか。
悠長に考えている暇はない。
かと言って、土地勘がないので何処に避難すればいいのかも分からない。
「離して、離してったら!」
「お、おい小娘、止めんか! 危険だと言うとろうが!」
「いいから離してよぉ! 早く、早く行ってあげないとあの子達が!!」
背後から、珍しく切羽詰ったような邪魅の声。
今度は何だと振り返れば、邪魅に羽交い絞めにされた少女が外に出ようともがいている。その様子は尋常ではなく、鬼気迫るものを感じた。
屍浪は一旦社に戻り、床板の上に押さえ付けられている少女と目線を合わせて、
「行きたい場所が、あるのか?」
「………………」
少女は、今にも泣き出しそうな顔で頷いた。
そうかい、と屍浪も頷き返して、馬乗りになっていた邪魅を退かすと、
「じゃあ、行くとしますか」
「屍浪、儂は!?」
「首にでもぶら下がれば?」
「扱いヒドくないかの!?」
小脇に雨避けの布を被った少女を引っ提げて、首に邪魅をぶら下げて、
「全速力で行く、しっかり掴まってろ!!」
稲妻と風雨が暴れ狂う中を、白骨は矢のように駆け出した。
どうも、少々間が空いてしまいました。
徹夜状態で書いたので少し雑かもでした。
次の話で、あの二人にケンカ売ります。
誤字脱字、キャラの言葉遣い、設定などに違和感などあったら意見いただけるとありがたいです。