新たな人生
「知らない天井だ……」
お約束は欠かさない、これ絶対。
たとえそれが異世界であってもだ。というわけで俺は知らない天井を眺めながら今まで起こったことを回想していた。
覚えているのは右腕を魔王様にぶった切られた辺りまで……そこからは痛いというよりは熱いという感覚と、ちが失われていく感覚に恐怖して気絶といったところだろうか……。
まぁ今は痛くないことから魔王様は優しくしてくれたみたいです。
そう思っていた時期が私にもありました。
体を起こそうとしてその違和感に気付いた。
自分の右半身を、右腕があったであろう空間が、ないはずの右腕の代わりに、別の何かが、支えていた。
何を言っているかわからないと思うが俺にもわからねえ、むしろ混乱してそれどころではない。早急に説明を求む。
「なんだ、もう起きていたのか」
説明役もとい魔王様がちょうど良すぎるタイミングで現れてくれました。
「あの……右腕切られたと思ったのに何かあるんですが……」
これ以外に俺は何を言っていいのかわからない。
強いて言うならば魔王様相変わらず可愛らしい。
「あぁ、私の右腕をこう、ぶちっとちぎって、お前の右肩にぐいっと押し付けて移植した。サイズはいろいろやって調節したから問題ないと思うが?」
随分とアグレッシブな移植をされたらしい。
よく見てみると俺の右腕があった部分には女性特有の小さくて、スベスベで、温かくて、柔らかああい手がくっついている。
話を聞いた感じからも見た目からも間違いなく目の前の魔王さまのものだろう。
「代わりにお前の右腕は私がもらった、流石にあのままではサイズも見た目も違いすぎたので魔法による改造はさせてもらったがな」
その言葉を聞いて魔王様の右腕を見る、産毛一本生えておらず細くてスラリとした指がついているその手はどう見ても俺のものではなかった……俺のらしいけどね。
「お前もその手の形が気に食わなければ自分で何とかするがいい」
「なんとか使用にも俺魔法とか使えませんよ……」
そういうと魔王様は呆れたような表情で俺を見た。
「お前は……なんでお前を助けたと思っている。私にも引けを取らない魔力を持っていてさらに人間と敵対しようという意志と十分な理由があったからだぞ。」
どうやら俺には魔力があるらしい、それも相当な量。
「魔力があっても使い方を知りませんし……ほら、剣を持っているのとそれが使えるのは別問題でしょう?」
「それはそうなのだが……よし、今から教えるから覚えろ」
どうやらこれから魔法の授業が始まるようです。
魔王様という美人さんの個人レッスンを受けられるとは何とも嬉しい話だ。
本日二度目になるが、そう思っていた時期が私にもありました
俺は魔王様の言葉に頷いた瞬間、謁見の間らしい場所に案内された。
どうやらここは決戦の間的な役割もあるらしく相当丈夫に作られているとかなんとか。
うん、相当丈夫らしい。どれくらい丈夫かというと魔王様の魔法数十発くらいなら耐えられるらしいが……俺がそれに耐えられるのかと言ったらNOだ。
そんなこともお構いなしに魔王様は俺に魔法をうってきた。
「見て感じて聞いて嗅いで覚えろ!」
というありがたいようなありがたくないようなお言葉とともに。
そういったわけで今日は丸一日魔王様の魔法をよけ続けました。
そのおかげか魔法はある程度制御できるようになったのです……あんな方法で魔法使えるようになってしまったのがちょっと悔しかった。