完全な誘拐
翌朝、目が覚めると俺は見知らぬ場所にいた。
昨日国王に用意させた家ではなく、何か布でできた膜のようなものが天井の役割を果たしている。
、あた俺が寝ている場所もベッドではなく木の床だ。
俺はというと布団ごと簀巻きにされ、猿轡を噛まされているので何もできない。
ガタゴトと地面が揺れていることからこれは馬車なのかもしれない、というところで気がついた。
俺、本当に誘拐されたようです。
「目が覚めたな、勇者よ」
頭上から声をかけられた。
この声には聞き覚えがあった。昨日ルードと呼びかけられた補佐官の声だった。
見上げるとそこにはやはり補佐官がいた。
「これからお前のやることを教えてやる、装備は用意したから前線に立て。敵前逃亡はその場で処刑、戦場で死ねば我が国に一切非はなくなるわけだ。」
あぁ……つまりこいつらを信用した俺が愚かでしたというオチでしたか。
「戦場となっている魔王の城まではあと三日といったところだ-。、まぁその間、食料を与えるつもりはないが水だけはくれてやろう、国王の優しさに感謝するんだな。」
……魔王に世界の半分をくれてやろうとか言われたら俺は飛びつくだろうな……とおいうかなんとしてでも裏切ってやる……心にそう誓った。