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勇者拒否

「とりあえず事情はわかった」


「わかってくれたか」


そう国王は胸を撫で下ろした、それに応じて騎士や補佐官の表情も少し緩む。


「わかったから俺は帰る、あんたらだけで勝手にやっててくれ」


俺がそう告げると国王たちの安堵の表情は一瞬にして驚愕の表情になった。

事情はわかったが俺は無関係なので勇者なんかやるつもりはない。


「俺はもともと戦争もない平和な国で安穏と暮らしていたんだ、そんな人間が化物と戦って勝てるわけないだろ」


俺はスポーツは好きだが格闘技などは未経験だ。

というか格闘技をやっていても化物に通用するとは思えないし、それどころか実践では使えないものばかりだろう。


「それに軍隊相手に勝てるような化物に一人の人間が勝ったらどうなる、あんたらの調子の悪い頭じゃ英雄ともてはやされて終わりかもしれないが現実ってのは甘くない。

魔王以上の危険人物として始末される可戦争の道具にされるだけだろ。

よくて国王の娘なり貴族の娘なりと結婚させられて国の歯車にされるだろうな、あぁあとは貧民だろうが奴隷だろうが女を片っ端から連れてきて死ぬまで俺に子供を作らせ続けるか?

勇者の子孫なんてのがいればいざ魔王が復活しても安心だもんなぁ。

それともあれか、俺が勇者としての名声を手に入れた頃に捕まえて魔王に譲渡するかい?魔族を殺していたのはこいつです、我々はあなた様に逆らいませんから助けてーってな」


俺のひねくれた脳みそはこういうことを考えると止まらなくなってしまう。

会社の面接で『ひねくれものはうちに会社にいらない』と言われたほどだ。

……思い出したら萎えてきたが。


「とにかく、俺を元の世界に戻せ。できないなら安定した生活を提供しろ。

それすら拒否するなら俺はそこの窓から飛び降りて自殺してやる。」


そう言って窓辺に駆け寄った。正直に言ってしまうと騎士何かやっている人に腕力ではかなわないだろうから捕まる前に逃げたわけだ。

まぁ国王も騎士も補佐官もみんな絶望的な表情をしていてそれどころではないみたいだが。


「わかった、城の一室を与える……」


国王は先程までのポーカーフェイスを完全に崩し、絶望的な表情のままそう言った。

だがしかし、俺のターンはまだ終了していない。


「城の一室?なにアホなこと言ってんの?

あんたら誘拐犯を信用できるわけないだろ。

信用しなければ安定した生活の要求なんかできないから少しは信用してやるよ。

けどひとつ屋根のしたで食らえるほど信用できるかと言われたら無理だから。おわかり?」


俺個人としてはだいぶすっきりしてきた、けど国王たちの絶望的な表情はさらに深刻になっているのが見て取れた。

罪悪感はあるが、勇者になんかなれるとは思えないのでこの姿勢は絶対に崩さない。


「ルード……街の空家を一件、それと食料を用意して差し上げなさい……」


「はい……」


王様の声はこれ以上なく沈んでいた。

それはルードと呼びかけられた補佐官のおっさんも同様だった。





その後用意された屋敷は一階建ての小さなものだったが男一人が生活していくには十分なものだった。

その日はもう地球には帰れないという悲しみに耐えながら布団にくるまって眠った。

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