プロローグ
あの日、俺は異世界に召喚された。
こう言ってしまうと頭か精神の病院を紹介されてしまいそうだが事実だ。
そして、今現在も俺は異世界で生活している。
召喚されたのは21の誕生日を迎え、さらに半年程経ってからのことだった。
当時就職活動に励んでいた俺は体調管理を怠ったため、説明会会場に向かう途中で気絶してしまった。
目が覚めたら異世界にいた。
こういったファンタジーでありがちな謎のゲートを通っただとか、魔法陣が現れただとかの話は一切ない。
そもそも俺自身は覚えていないので何とも言えないが、意識がなかったのでゲートをくぐるといった行動はしていなかっただろう。
この世界は最高で最低な世界だった。
地球にはなかったステータスというものが存在する。
RPGでお馴染みの攻撃力などが記されたものだ。
もちろんあんなウィンドウが出てくるわけではなく、国が行なっている定期検査を受けると身分証明書として普及しているカードに記されるというものだ。
つまりゲームのように勝手に数値が変わることはない。ある項目を除いて。
その項目とはレベルである。こちらもゲームではお馴染みのものだ。
唯一違うといえば敵を倒したら絶対経験値が入ってきて、スライムだけしか倒していなくともレベルをマックスまで上げられる、なんてことがないということくらいだろう。
この世界でレベルを上げる方法は実力をつけること、それだけという曖昧なものだ。
なので座学で戦い方を学び、それを実践で生かせるならばレベルは恐ろしい勢いで上昇しうる。
とはいえそんなに現実は甘くない。大体の人は戦いに戦いを重ねて、その中で自分を磨き上げ、レベルという形で己の強さを誇示していく。
つまり努力が認められる世界なのだ。
もちろん努力を認めてもらう前に死んでしまう可能性もある、がこれは最低といったこととは関係ない。
おれが最低といったのはどの世界でも権力に溺れた豚はいるということだ