(21-30) 神秘/噂/彼と彼女/悲しみ/生/死/芝居/体/感謝/イベント
「文章修行家さんに40の短文描写お題」(http://cistus.blog4.fc2.com/ )さんよりお題をお借りしています。
/基本のルール:お題に沿って65文字以内での場面描写
21. 神秘
昼間の宝石は退屈だと子どもは思う。
真夜中開く、宝石箱の中。無数の蛍を放ったように宝石たちは瞬く。
硬質な囁き声を子どもは知っている。(65文字)
22. 噂
石段の端で猫たちが抑えた鳴き声を交わし、私を見ていた。
横を通る私を彼らは黙りこくって見送る。過ぎると激しく鳴きだした。
嫌な感じだ。(65)
23. 彼と彼女
朝、古いアパルトマンの隣り合った窓が同時に開く。
顔を出した男女は親しげに挨拶を交わす。
だが、二人は未だお互いの名も知らないままだ。(65)
24. 悲しみ
地面に落ちたケーキを囲み、子どもたちが顔をおおって泣いている。
輪にまぎれ込んだネズミは声をあわせて泣きながらケーキにかぶりついた。(65)
25. 生
蓮華の花冠を被った孫が野原をこちらへ駆けてくる。
小さな体を抱きとめると、陽と土と草花の匂いが私を満たした。
その喜び、感動ときたら!(65)
26. 死
子どもは、つまらなくて腹が立って泣きたかった。
丸い手で空の鳥かごを抱きよせて言う。
「どうして遊べないの。どこへ行ってしまったの?」(65)
27. 芝居
人形はいつも笑顔だ。
無邪気に腕をもがれたときには泣きたくなったが、子どもを悲しませるのが嫌で笑顔を貫いた。
笑う子どもがすきなのだ。(65)
28. 体
闇夜に男は幽霊に会った。
体をよこせと凄まれ、臆した男は号泣した。
むせび泣き鼻つららをたらす男は不気味で、戦慄した幽霊は逃げ出した。(65)
29. 感謝
甲高い悲鳴が響いた。
少女が駆けつけると内股で震える父がいる。
側に巨大な蜘蛛を見つけた少女は大喜びで捕まえ、怯える父にお礼を言った。(65)
30. イベント
今日は姉の誕生日。オーブンからスポンジを取り出し、飾りつければケーキも完璧。
山ほど作ったご馳走だけど、減量中の姉は食べそうもない。(65)