(11-20) 本/夢/女と女/手紙/信仰/遊び/初体験/仕事/化粧/怒り
「文章修行家さんに40の短文描写お題」(http://cistus.blog4.fc2.com/ )さんよりお題をお借りしています。
/基本のルール:お題に沿って65文字以内での場面描写
11. 本
目打ちの音と紙の匂いが満ちる工房の一角。少女と職人が破れた絵本を囲む。
「なおる?」
職人が微笑んで頷くと少女の顔も嬉しそうに綻んだ。(65文字)
12. 夢
陽がぬくぬくと射す草原で羊が草を食んでいる。
娘は眠たげにその数を数えていた。
数えるうちに娘は思う。
「私起きてる? それとも寝てる?」(65)
13. 女と女
たおやかな所作。凛と立つ姿。刻まれた皺の一筋まで美しい、祖母は私の憧れだ。
言うと祖母は笑う。
「なら、真似てごらん。別嬪さんに育つ」(65)
14. 手紙
少年ピエロは生まれながらのサーカス団員。旅廻る身では文を交わせる友もない。
だから大いに狼狽えた。観客席に残された自分宛の応援文に。(65)
15. 信仰
すす汚れた天井裏を小さな足音がパタパタと過ぎる。
鼠かもしれない。
しかし何代もの昔から家族は足音の主を童と信じ、親しんで祀っている。(65)
16. 遊び
まず母。次に弟。場所を変えてお隣の苦情ばかり言う老紳士。噂好きな、派手おばさん。
道の間に縄を渡し、私は引っかける相手を今日も探す。(65)
17. 初体験
くまの子は最近とろりとした眠気に悩まされていた。
「僕病気なの?」
母くまは微笑んで首をふり、食べ物を貯えた穴蔵へとくまの子を誘(いざな)った。(65)
18. 仕事
夜、厠に立った老夫は布団に戻る前に必ず妻の元へ寄る。
眠る妻の手足が布団からはみ出ていると、起こさぬようそっとしまってやるのだった。(65)
19. 化粧
「きれいだよ」
向き合って囁くと、化粧けのない彼女の頬が紅をひいた様に朱に染まった。
飾るまでもない。素顔の彼女はとてもかわいい人だ。(65)
20. 怒り
足下遠く、父と母がぼくを探す声がする。
見つからないよう厚い木の葉の間に隠れ、幹に身をよせる。
もっと心配して、探し続ければいいんだ!(65)