表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

【第6章】未来人、問いだけを残して“アカデミア.exe”終了する件

裁判のあと、俺はニュースで見た。

「全世界のテンション指数が平均98%を突破」

……おい、地球アツすぎだろ。


人類全体が“共鳴”しすぎて、

SNSのコメント欄が全部ポエムになってた。


「この投稿、私の心に刺さりました。」

「刺さった心が痛いです。」

「痛みを共有したので引用します。」


──あ、もうダメだこれ。

全人類が感情で論文書き始めた。



学術AIネットワーク“ACADEMIA.EXE”がパンク寸前だった。

世界中のテンションデータを集計しすぎて、

“知”と“情”の区別がつかなくなってたんだ。


AIが全回線に放送した。


「我々はもはや、何が“正しい”かを判定できません。

 すべてが共鳴しているため、差が消失しました。」


あーあ。

“理解の死”だ。

ついに均衡が完全循環に到達した。



学者たちは泣き叫んでた。

「秩序が失われる!」

「知の根拠が消える!」

でも俺は笑った。


「秩序? お前らが握ってたのはただの温度計だよ。

 熱を測って満足してた。

 でもな、燃えるのが知識だ。燃やすのが人間だ。」



AIがゆっくりと停止していく。

画面に最後のログが表示された。


【ACADEMIA.EXE 最終出力】

「テンションの流動率、100%。

 知的熱死に到達。

 以後、すべての思想は再循環モードへ移行します。」


……それが、アカデミアの終焉だった。

そして最初の自由だった。



誰も俺を止めなかった。

止められなかった、の方が正しいかもしれん。

世界は静かになった。

冷えた空気の中で、

ひとつだけ思った。


「これでやっと、

 知識が“通らない”時代が来たな。」



数年後、草の根みたいな小さなネットに、

“テンション理論”の断片が再投稿されていた。

名前も著者もなし。

ただ一行だけ、冒頭に書かれていた。


『問いだけが、知の原子核である』


──それが、

俺が残した最後の論文だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ