【第5章】未来人、“引用権”を再定義して裁判沙汰になる件
AI査読をぶっ壊した数日後、
俺は学会の広報部に呼び出された。
「あなたの発言が原因で、世界中の学者が混乱しています!」
「混乱してるってことは、生きてる証拠だろ」
「生きるのは構いませんが、訴えられました」
「……どこに?」
「全方面です」
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訴状のタイトルが面白すぎた。
『未来人による“引用権の再定義”が学問秩序を脅かした件』
……タイトルの時点で論文じゃねぇか。
要はこういうことだ。
俺が言ったんだよ、会議で。
「引用とは“共鳴の証”だ。
数字じゃなく、テンションで可視化するべきだ」
そしたら世界中の論文サイトが真似しやがって、
全部に“テンションバー”が付いた。
“この論文、あなたの心をどのくらい動かしましたか?”って。
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️とかじゃなくて、
テンション指数:78.4% みたいな表示。
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で、学者たちが発狂した。
「感情で学問を測るな!!」
「これは科学のポピュリズム化だ!!」
「感動されるほどバカっぽくなるシステムだ!!!」
──いや、正論混ざってんのが逆にムカつく。
SNSではすでにバズってた。
ハッシュタグ #テンション査読 がトレンド入り。
「泣ける論文」「バズる実験」「エモすぎる考察」。
もう地獄。
AI作家が『泣ける流体力学』とか出して累計100万ダウンロード。
人類の知性がTikTok化してた。
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俺のもとに弁護士AIが来た。
「あなたのテンション指数システムが著作権を侵害しています」
「感情に著作権ってあんのか?」
「厳密にはありませんが、“共鳴の形”はデータです」
「……お前ら、共鳴まで商標登録すんのかよ!」
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学会が混乱の極みに達したころ、
世界評議会が特別法を制定した。
『学問テンション安定法』
内容:
「すべての論文は発表前に情動安定フィルターを通すこと」
つまり、“読んで揺さぶられないように”する規制。
感動禁止。
衝撃禁止。
熱量禁止。
「……バカだろ。
知識の温度を下げて何残んだよ。冷めた灰しかねぇだろ。」
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結局俺は裁判にかけられた。
「あなたの理論は社会的混乱を招いた」と言われてな。
判決前に弁護士が聞いてきた。
「最後に言いたいことはありますか?」
俺は笑って言った。
「“共鳴を罪にする時代”って、
そもそも文明って呼べんのか?」
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判決は出なかった。
傍聴席のテンション指数が100%超えて、
法廷のAIがショートしたからだ。
次回予告:
【第6章(最終章)】未来人、問いだけを残して“アカデミア.exe”終了する件




