ファッ休さんの過去
──ファッ休、貴方は生きて。
「諦めんな!千代!もうすぐ仲間が…!」
「千代ォ!」
ファッ休さんは、跳ね起きました。
荒くなった呼吸を整え、汗をぬぐいます。
「…嫌な夢見ちまったぜ。」
ファッ休さんがそう呟いていると、近くに和尚様が
立っていました。
「ファッ休よ。またあの"記憶"が夢に出て
きおったのか?」
「和尚…いたのか…」
「ファッ休の部屋の前を通りかかったら、
呻き声が聞こえて、心配になっての。」
「嫌な記憶ってのは…消えねえもんだな。」
「愛する者を失った記憶なぞ、そうやすやす
とは消えるまいて。」
「…………」
「ファッ休よ、話がある。後ほど本堂に来い。
しっかりと"準備"をしてな。」
ファッ休さんは、隠し武器庫に向かいました。
「またここを開ける日が来るとはな。」
"0721"手際よくパスコードを入力すると、ロック解除の音が響きます。
武器庫の中には銃火器から刃物類、はてまた爆薬などがズラりと並んでいました。
迷彩柄の袈裟に袖を通すとあの頃の"記憶"が
蘇ってきます。
「千代…」
フル装備で固めたファッ休さんは本堂へ向かいます。
「和尚…話って一体?」
「ファッ休よ。千代さんを失った時の、あの任務を覚えておるかの?」
「覚えてるも何も…忘れられねえよ。幕府からトンチで世を支配している、"一休一派"の頭…一休の暗殺命令が下っていた。」
「そうじゃ…当時のお前は幕府直属の暗殺者だった──」
「何が言いたい?」
「ファッ休よ。端的に話そう。
千代さんは恐らくまだ生きている、一休一派に囚われてはおるがな。」
「なっ………」
「暗殺者としての、お前を恐れた幕府、そして一休一派。あの日の任務はお前をハメ、始末する為の物じゃった。」
ファッ休さんは言葉に詰まり、何も言えません。
和尚様は続けます。
「それに気づいた千代さんは、お前を助けようと任務に着いてきたのじゃ。」
「確かに…あの日の暗殺任務は、俺一人に命令が下っていた…。でも潜入地点に…千代が待っていた。」
「お前の部下という立場だったじゃろうが…千代さんもお前を慕っていた。自分の命を賭けてでもお前を守りたかったのじゃろうて。」
ファッ休さんは拳を握り、歯を食いしばります。
「だが和尚!何故お前が、そこまでの"情報を掴んでいる!」
怒りを隠せないファッ休さん、真実を語り始める和尚様。
1つ1つの記憶の欠片が埋まっていくような感覚に、なっていくのでした。




