21話
「お風呂上がったよー」
という昧の声と共に部屋の扉が開いた。
「そのパジャマ、サイズ大丈夫だった?」
「あ、うん。大丈夫だよ。私と舞桜ほとんど身長同じだしね」
「ならよかった」
「刀の手入れって大変?」
と私が手入れをしているのを覗き見ながらそういう昧。
「ん〜大変だよ?サボっちゃうと錆びちゃうからね。こうやって毎日分解して油差したりしないといけないんだよね」
「うげぇ、私には無理そう…」
「昧は面倒くさがりなところあるからね。…そういえば昔髪を伸ばすって言ってたのどうなったの?」
「えーっと…最初はね、ほんとにそうしようとしてたんだよ?だけどほら、私くせ毛だからさ…。手入れ大変でやめちゃったんだよね…。あーあ、舞桜みたいにサラサラの髪だったらなぁ」
などと文句を言う昧。
「長いのは長いので大変だよ?シャンプーすぐに無くなるし、乾かすのに時間かかるしさ。とにかく時間かかるんだよね…。それにさ、椅子に座ったら髪の毛引っかかるから大変だし、夏は暑くて汗すごいし、下向くと髪の毛基本的に邪魔だし…ファスナーに引っかかるし、風吹くと面倒くさいし…」
ぶつぶつと恨み言を呟く。
「わ、分かったからそのへんで。呪詛を吐いてるみたいになってるから…」
「あ、ごめんごめん。ついね。とにかく長いほうが困るんだよ?短い方が良いに決まってるの」
「ならどうして舞桜は髪伸ばしてるの?」
「…お母様にね、褒められたから…。綺麗だねって。それだけ。つまらないでしょ?」
「そう…なんだ」
昧は私のお母様が死んでいることを知っている。
悪いことを聞いちゃった…。と言いたげにしゅん、としょげてしまう。
「気にしないで。気にされたほうが迷惑だからさ」
そう微笑んで返すと
「そっか、分かった!舞桜がそういうのなら気にしないっ!」
キッパリとそう言ってくれる。
この切り替えの早さ、さすが昧だ。
手入れが終わったアヤメ(刀)を鞘に仕舞う。
「それで、今日はどうして私の寮に泊まりたいって言い出したの?」
「え~っと、単純に舞桜と遊びたかっただけ…だよ?」
嘘だ。私には分かる。
「そっか。なら何しよっか?」
だけどあえて言及しない。隠し事の1つや2つ人にはある。秘密は無理に暴くものでもないしね。
「じゃじゃーん!トランプ持ってきてるんだー。これでなんかやろうよ!」
「トランプって…。修学旅行じゃないんだから…」
と苦笑してしまう。
「いいよ。遊ぼっか。天狐も遊ぶ?」
近くで元の姿に戻って毛づくろいをしていた天狐に声を掛けると
「きゅきゅーっ!」
ぴょん、と小さく飛び跳ねて了解の返事をする。