99話
…そうだ。
「ねぇ天狐、幻で2人の夢を叶えてあげれられないかな?ひとまずそれで落ち着くでしょ」
私がそう言うと分かった、というふうに頷いて肩から飛び降りながらくるん、と一回転。
それと同時に白い煙が私たちを包み込む。
「わわっ!?急になにっ!?」
煙が晴れる。
「ままま、舞桜っ!?見てみて!胸がっ!谷間がっ!?」
「し、視界が高いっ!?夢!?夢じゃないよねっ!?」
さっきまで喧嘩していたとは思えないほどの取り乱しようである。
まぁとにかく、喧嘩は止めれたようでよかったよ。
「きゅきゅっ!」と誇らしげな天狐の頭をよしよしと撫でる。
「ありがとね天狐」
「おほっ!これが巨乳の世界っ!足元が見えにくいっ!」
「なんか、いろんなものを見下ろすのって新鮮だね。気分いいかも」
とノリノリの2人。
胸があるようにみせるだけの眛はともかく、身長が伸びているアリスにいたってはどうやって幻をみせているいるのだろうか?と不思議になる。
「今のアリスならナイスバディってやつだよね」
うふ~んと体をくねらせながらパシャパシャと写真を撮るアリスと
「見てみて!?スマホが胸の上に乗るよっ!?なにこれすごい!今までの私はきっと夢を見ていたんだ」
となんとも悲しいことをしている眛。というか、幻なのに質量あるんだ…。相変わらず謎技術である。
「え~と、わかってると思うけど幻でしかないからね?」
申し訳なさそうに私がそう言うと一緒に天狐が「コ~ン」と鳴く。
再び白い煙が上がって何もかもが元通りになってしまう。
「あ、あぁ~巨乳が谷間がぁ~」
ガクン、と肩を落としてへなへなと座り込む眛にたいして
「あ~楽しかった。天狐ちゃん、ありがとね」
と余裕そうなアリス。
うーん、この時点で器の大きさが分かるね。
「あはは、どうせ私なんて一生貧乳のままなんだよ…。どうせ中学2年から1mmだって変化していない真の貧乳なんだよ…」
「ちょ、眛…?眛!?戻ってきて!?」
目の焦点が変になっている眛の肩を揺らす私。
「あー、なにやってんだ?お前ら」
とそんな私たちを呆れた様子でいつの間にか来ていた漣が見下ろすのだった。