エピローグ
2025年6月5日(木)、朝のニュース番組が始まる。
スタジオの背景には「速報」の文字が映し出され、キャスターが真剣な表情で原稿を読む。
「ここで、速報です。」
女性キャスターの声がスタジオに響く。
「昨日、東京都渋谷区のラブホテルで、2人の女性が死亡しているのが発見されました。」
画面が切り替わり、ラブホテルの外観が映し出される。
ホテルの入り口にはパトカーが停まり、警察官が出入りしている。
「死亡したのは、アパレル業界に勤める佐伯美咲さん、25歳と、高校3年生の藤井遥さん、17歳です。」
キャスターの声が淡々と事実を伝える。
「警察によると、2人は部屋の中で手を握った状態で発見され、現場には青酸カリとみられる薬の袋が残されていました。」
画面に、ホテルの部屋の外から撮影された映像が流れる。
部屋のドアが開け放たれ、警察官と鑑識が中に入っていく様子が映る。
「2人の死因は薬物によるものとみられ、警察は無理心中の可能性が高いとみて捜査を進めています。」
キャスターの声が静かに響き、画面がスタジオに戻る。
「佐伯さんは、アパレル業界で働く25歳の女性でした。」
画面に美咲の写真が映し出される。
美人でシャープな眼差しと長い黒髪が印象的な姿。
「関係者によると、佐伯さんは最近、職場での人間関係に悩んでいたとされています。」
キャスターの声が淡々と続き、画面が切り替わる。
「一方、藤井さんは都内の高校に通う17歳の女子生徒でした。」
今度は遥の写真が映し出される。
可愛らしい顔立ちと、華奢な体が写っている。
「学校関係者によると、藤井さんは最近、学校で孤立していたとの情報があります。」
キャスターの声が静かに響き、画面が再びスタジオに戻る。
「現場からは遺書などは見つかっておらず、2人がどのような経緯で知り合ったのかは不明です。」
キャスターの声が事実を淡々と伝える。
「しかし、部屋には2人が一緒に過ごしたとみられる痕跡が残されていました。」
画面に、テーブルに置かれたコンビニの袋や水のボトルの映像が映る。
「警察は、2人が事前に計画を立てて行動した可能性が高いとみています。」
キャスターの声が続き、画面が渋谷の街並みに切り替わる。
「この事件を受け、渋谷区内では若者のメンタルヘルス支援の必要性が再び議論されています。」
画面に、渋谷のスクランブル交差点を行き交う人々の映像が流れる。
「専門家は、若者の孤立や社会的なプレッシャーが背景にある可能性を指摘しています。」
キャスターの声が静かに響き、画面がスタジオに戻る。
「また、SNS上では、2人の死を悼む声が広がっています。」
画面に、Xの投稿がいくつか映し出される。
「こんな若い子が…辛かったんだろうな…」という投稿が目立つ。
「一方で、無理心中に対する批判的な意見も見られます。」
別の投稿には「こんな形で終わるなんて…悲しすぎる」と書かれている。
「この事件をきっかけに、若者の支援体制の強化が求められる声が高まっています。」
キャスターの声が真剣に響き、画面が再びスタジオに切り替わる。
「警察は、2人の関係性や背景についてさらに詳しく捜査を進める方針です。」
キャスターの声が淡々と事実を締めくくる。
「以上、渋谷区で発生した無理心中事件の速報でした。」
画面が切り替わり、ニュース番組が次の話題に移る。
スタジオの背景には、依然として「速報」の文字が残っている。
テレビの画面を見ていた視聴者の中には、涙を浮かべる人もいた。
美咲と遥の愛と絶望が、こうして世の中に伝えられた。
彼女たちの物語は、静かに終わりを迎えた。
だが、2人の愛は、誰にも知られることなく、永遠に続いている。
完