エリア不明_とあるアパートの一室より
書くのが遅い…
でも一気に4話まで書いたから…
天候:晴れ
「さむい」
そんな一言で星名の1日は始まった。エアコンを効かせすぎてしまった。昨晩暑くて寝ぼけたまま温度を下げまくったのである。風邪を引いたかもしれない。毛布に包まったまま枕元のリモコンを掴み、温度を見てみる。全く、勘弁してほしい。即座にピピピピっと温度設定を変える。
6畳間の小さな部屋に、2段ベッドと机とその他諸々を押し込んだ生活空間。机の正面にある縦長の窓からは朝日らしき光が差し込んでいる。何故一人暮らしなのに2段ベッドなのかというと、入居したときに最初からこれが用意されていたからである。といっても前の住民がろくに片付けもせず突然姿を消したらしいのだ。夜逃げというやつだろうか?捨てるのも勿体ないしありがたいので使っているというわけである。といっても下段はすぐに物置みたいな状態になってしまったので、星名は上段で寝ている。今何時だ、スマホスマホ、と枕元を探る。あ、あった、と枕の下にあったスマホを取り上げた瞬間、手が滑ってスマホがヒューンと落下していく。2段ベッドの上段から落下。十数秒ほど呆然とし、何もなかったかのように毛布を被り直…しちゃいけないんだった。
今日は予定があるのである。ハシゴをゆっくりと降りる。スマホはともかく自分が落ちていては大変である。カーペットの上に落ちていたスマホを拾い上げる。幸いヒビは入っていなかった。さすがカーペットとちょっと高いフィルム…と小さく呟く。
改めて時間を確認する。7:55。壁に掛かったカレンダーを確認する。今日の日付には「遅くとも8:00には家を出る!」と書いてある。もう一度時間を確認する。7:56。
だいぶ大きいため息が出た。
「もう一回寝ようかな……」
何もなかったことにしたい。
そういうわけにもいかず、星名は1秒後には大慌てで準備を始めるのだった。
案外、たこ焼きって美味しいんだな。食べやすさはイマイチだけど…。そんなことを思いながら、ベンチでたこ焼きを頬張る。熱い。美味しいけど熱い。
僕は不世出こもり。名前は言わずもがな、苗字の方はフセイシュツ、と書いてフセデと読む。蝙蝠だからこもり。不世出なやつだから不世出。単純で簡単な名前だろう?
早朝の、朝8:45。現在僕はとある都市の駅のベンチでたこ焼きを食べている。何故昼まで寝るタイプの夜型の僕がこんな朝早くに駅にいるかと言うと、ああ眠い。待ち合わせしている人物が朝型だからである。朝さっぱり起きられるとかではなく、早い時間に眠くなって寝るため必然的に早く起きてしまうそうだ。だのに最近の趣味は天体観測…徹夜して研究に没頭する僕とは真逆というわけか。まぁ、こんな早い時間の待ち合わせを即時了解してしまった僕も僕なのだが。
駅はそれなりに大きく、早朝といってもそれなりに人が歩いている。だがその殆どはスーツや作業着やその他諸々に身を包んだ社会人だ。肉体年齢14歳の僕は十二分に浮いていると言えよう。早朝の空は青く、だが昼の空にはない妙な清々しさと冷涼さで満ちている。山際に向かって薄まっていく青色をのんびりと眺めながら、僕はあたりに満ちている冷たい空気を飲み込む。
静かな朝というのも悪くない。きっと今日は穏やかな日に
「おーーい!!」
前言撤回しよう。僕の知っている彼女は大きな声で叫んでいただろうか?ひとまず、背後から聞こえた声に振り返る。
「ごめん、お待たせ!」
「…いや、待ってない」
声に振り返ると、案の定彼女が居た。
「…髪、ボサボサ」
「うっ……」
「15分遅れてきたよね」
「い、いや…」
「…寝坊したでしょ」
「……………しました」
「…連絡してくれれば僕は待つ」
「それは申し訳ないし…」
「…あと、声が大きい」
「あ、ごめん……テンション上がっちゃって……」
そんなに情緒を上げてしまうと寿命が縮まりそうだ。僕は今の声で心拍数が上がった。
そこに居たのはs…星名。そう、今は星名なのだった。語源も何も知らないが、星に名前の名と書くらしい。僕が知っている彼女は大きな声を上げることなど一度もなかったのだが……まぁ、人間は変化する生き物だから当然か?
「そういえば、したい事があるんだっけ?」
「うん」
そういって、僕は抱えていた鞄から黒色のファイルを取り出した。
「組織の調査を手伝って欲しい」
「組織?」
「そう」
僕は徐にファイルを開き、最初の資料を見せる。
「GOG。つまりは、金神家についての調査。星名も、興味があるんじゃないの」
それを聞いた彼女は一瞬驚いたような顔をした。当然だろう。だがすぐに瞳を輝かせ、身を乗り出してきた。
「し、知りたい知りたい!教えて!」
「…近い」
僕は顔を背けて、資料を星名に渡した。
「…正確にはGOGの中の一部、ある研究所について知りたい。元々僕が居た研究所のライバル?てきな位置のとこなんだけど」
「うんうん!」
星名は僕の隣に座り、バラバラとページを捲りながら相槌を打つ。聞いているのだろうか。まぁ、大丈夫だろう。何故かって?10歳のS7が話を真面目に聞ける子供だったのだ。14歳の星名が話を聞けないわけがないだろう。…だよな?ちらりと見上げてみると、星名は金色の瞳を輝かせて資料をめくっている。…まぁ、分からなくても何度でも説明する時間はある。
「実は僕、星名と出会う前の記憶がない」
「え!?」
星名は驚いたように声を上げ、僕を見た。
「どういうこと!?私の顔覚えてたよね!?」
「あぁ、まぁ」
「ほ、本能みたいな感じ?」
「いや、語弊があった。S7と出会う前の記憶がない。つまり、5年前以前の」
「いつから?」
「5年前から」
「そ、そんな大事なこと黙ってたの!?」
「大事なの」
「もちろんだよ!」
星名は慌てたように言う。
「……まぁ、それで僕がいた研究所の人に聞いたら、そこの研究所が僕の記憶関係の記録を持っていってしまったって。だから、それを探しに行きたい」
「なるほどね!よく分かった!」
星名は両手でグッドサインをしてみせる。彼女のことだから問題はないだろうが、少し心配だ。まぁ、心強い味方にはなるはずである。彼女は心身ともに強いのだ。どれだけ酷い目に遭おうと、彼女が弱音を漏らしたり諦めたりするのを僕は一度も見たことがない。金色の瞳がまた資料に移り、バラバラバラバラッと一気にページが捲られ、バタンと黒いファイルが閉じる。
「僕は研究が好きだが、自分の出生も分からないまま研究をするのは好きではない」
「うん」
「だから、自分の記憶のない過去について研究をするということにした」
「なるほど〜…あれ?でもなんで記憶がないの?」
「それも分からない」
こう振り返ってみると、分からないことだらけだ。と思いつつ、星名の方をふと見ると、彼女はきょとんとした顔でこちらを見つめていた。僕は一体なんだ、と疑問に思う。
「……何」
「こもりくん大人になった?」
「……?」
そんなことはないと思う。
「昔は研究研究!って感じだったけど、今は聡明さが増した気がする!」
と、星名はまるで重要なことに気づいたかのようにキメ顔をしてみせる。
「……そうなの」
まるで分からない。僕自身は昔からスタンスは変えていないつもりなのだが。不思議なものである。それよりも、と僕は星名からファイルを受け取る。
「だから、例の研究所を訪問したくて…」
「うんうん!」
おっけー!と星名はポーズを決める。分かっているのか分かっていないのか、まぁ、心配はないだろうが。
「…そのファイル、まだ読んでないだろうから暫く預ける」
「え?さっき読んだよ」
「いや、全部は…」
「全部読んだよ」
「………え?」
そういえば、頭が良かったから蔑まれていたんだっけ、と気づいたのは数分後だった。
焼いたトースト焦げてて好きじゃないって言いたいけどなんか引かれそうで言えないので今日も焼いたトーストを食べる




