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雨谷通り21.1番地_22.1番地より

ぼちぼち書いていきます。

これは星環が書いてる星名の物語の番外編みたいな雰囲気した本編の一部です。

天候:雨


雨が降っていた。この物語の始まりにしては、あまりにも暗すぎるシチュエーションだった。

 都市というものは、無限に続く三次元空間であり、人間の最骨頂の技術、美的センスが詰まりに詰まった芸術作品だと星名は思う。

そして自分も、自分たちも、その中を行き来する作品のごく一部でしかない、と星名は思う。

 だから自分がしたことも、途轍もなく小さいものではないか?と星名は思う。

 全ては言い訳でしかないことなんて、私は昔から知っているのに。


 その広大な迷路のような世界の、裏の裏。一つの路地を行った先に、彼女はいた。

土砂降りだった。空は昼間だというのに夜と錯覚しそうな曇天であり、大量の銀色の雨をただひたすらに、バケツの水をひっくり返し続けるように降り注がせていた。

 星名はその中で、傘もささずに立っていた。大きなパーカーのポケットに両手を突っ込んだ彼女は、今はその長い髪を三つ編みにして肩にかけていて、甘い桃色のキャップを被り、アイデンティティとも呼べる黒縁メガネをかけていた。その彼女も、“彼女の周りに倒れている人間たちも”、土砂降りのおかげで濡れていた。髪から水滴が滴っていた。

 星名は何も言わなかった。ただ、自分が先ほど切り伏せた人間たちを冷たい目で見下ろしていた。暗い曇天であるせいか、その表情は窺い知れなかったが、彼女の目はその中でも冷たく金色に光っていた。

 静かだった。いや、正確には静かではなかった。雨が降っていたからである。大体の音には勝てそうな雨音が暴力的に地面に叩きつけ、建物に備え付けの古びた配管からは、管が壊れてしまいそうなほど強い勢いで水が吐き出されている。

 なので正確には、喧しかった。ここで誰かが何かを言っても、建物の中で穏やかに過ごす人々には聞こえやしないだろう。


「……休み初日なのに」


 星名は小さく呟いた。休み初日なのに、自分は何をしているのか。まさかこんなところでこんなハプニングに出会うとは。

 偶然にもなんらかの取引をしているところに鉢合わせてしまった星名は、自分の何倍も身長や力がありそうな大人たちに襲い掛かられた挙句、その全員を叩き斬り、増援まで完璧に打ち倒してしまったのである。倒れている人間たちはスーツだったりミリタリーな迷彩服だったりと、様々な様相をしている。が、全員例外なく恐怖や憎悪でその表情を歪ませ、瞳孔は情けなく開ききっていた。首、みぞおち、と、どれも正確に急所を刺されている。酷いものは頭が落ちたり臓器が見えていたり四肢が飛んでいたりと様々。返り血も顧みず切り刻んだため、あたりには黒いのか赤いのか分からない色の液体が撒き散らされている。地獄と言っても差し支えない惨状である。星名は無傷だが、勿論大量の返り血を浴びてしまっていた。だが、星名が浴びた返り血は雨がおおかた流してくれたらしい。ああ、服についた血液とはなぜこんなにも落ちないのだろうか?この服を洗濯するのは誰だ?未来の私だ。…それにしても全く、まるで運がない。


「…………休み初日なのに!」


 星名は今度はそれを強調するようにもう一度言った。神様、私に能力を授けてくれたくせにこんなところで私に不運を投げかけるのですか?戦闘になったとき傘を投げ捨てたので、すっかりびしょ濡れになってしまったが。突然呼び出された現装だってびっくりしていたはずだ。えっ?お休みじゃなかったんですか!?僕はせっかくこんなに透き通った綺麗な見た目してるのにその汚い血を付けるんですか!?僕に!?って。


 そのタイミングで、背後で足音が聞こえ、小さく振り返る。ビニール傘をさした人影が、この惨状に気づくことなく通り過ぎていく。

 …もういい。さっさと家に帰ってココアでも飲んで元を取ろう。そう思って星名が歩き出したときだった。


ひゅ、と風切り音が聞こえた。


 豪雨の中、その僅かな音を察知するのは常人にはできないことだが、星名はそれを聴き逃さない。その音が後方、そして上方から聞こえたこと、明らかに自分を狙う誰かがいることを一瞬で把握する。振り返りながら強く地面を蹴り、跳ぶ。先ほどしまったばかりの現装を、再び展開する。何も持っていなかった右手が、水晶を思わせる美しい刀身の中で星空が光り輝く一本の刀を掴む。


『星詠技式ヶ壱.【凍星】』


 降り注ぐ雨がスローモーションのようにゆっくりと動き、星名の耳に届く音が止まる。そして、僅か0.5秒の沈黙が訪れる。

 だが、そんなものはすぐに終わる。

 風切り音がした方向、つまり自分の上の方へ、現装を縦に叩きつけたくなるところ、無理やり変更して下から上へかちあげるように振り抜く。が、やむなく刀は宙を切る。だが星名は不意打ちしてきた敵を視認した。明らかに人間のシルエットだ。避けられたらしい。今度は当てる。今度は横に、強く踏み出して現装を振り切る。

 相手の繰り出した攻撃に技式が命中する。甲高い音と手応えが走った。


「(想像以上に重い)」


 その攻撃の重さに驚く。技をさっさと中断し、一度後方へ大きく跳ぶ。飛び降りてきたらしい人影がばしゃんと水を跳ねさせ着地した。

 いつのまにか雨が路地に溜まり、すでに足首が浸かる程まで水が溜まっていたことに星名は気づいた。

 星名に襲いかかったのは先ほどまで戦っていた大柄な男たちと違い、子供のように小柄だった。身長は星名と同じくらいだろうか?町あかりが路地に差し込み、星名には自分と対峙している人物の顔は全く見えず、表情もわからない。右手には何か武器らしきものを持っていた。棒状なのはわかるが、正確に何なのかはわからない。暗いせいである。

 全く、自分と同じくらいの身長で痩せてるらしいのになぜあんなに重い攻撃を繰り出せるのか。

 もう一度、雨の中その影が踏み出す。星名は現装を構えた。



『星詠技式ヶ弐.【流星】』



「(今度は私が先手を取る)」


 強い一撃を叩き込もうと、大きく距離を詰める。相手が右手を上げたのが見えた。その手にはやはり先ほど星名を攻撃した時使った何かが握られている。


「étoile」


そう、呟いたように聞こえた。呪文だろうか。でもさっさと叩き斬ればいい。

 視界の端に何かが光った。町あかりがちらりとそれを照らした。一瞬見えた形状だけで、星名はそれが何か理解した。流星を無理やり止め、現装を前方に投げ捨て、身を捻って大きく上半身を反る。

 だん、という射撃音が響いた。ハンドガンではない。これはショットガンの射撃音だ。


「(あぶな…!)」


 さっき星名を攻撃したとき持っていたのはショットガンではなかった。この一瞬で持ち替えた?そんな早技ができるのか?手品でも使っているのだろうか。もしも咄嗟に避けていなかったら星名は今頃その頭蓋を撒き散らしていた。ひぇっ、と想像して背筋が冷える。

 だが逆に好奇かもしれない。相手はショットガンを撃った衝撃で咄嗟に動けない状態のはずだ。特に、星名と同じようにやや小柄な体型では。

 体術は、剣術、能力を使用した攻撃の全てを上回る星名の特技である。

 地面から相手の服の右腕の袖を掴み、後方に大きく投げ飛ばす。予想通り。その体重は驚くほど軽い。


「(何年訓練させられたと思って)」


 休暇初日を台無しにされて殺されかけた上に嫌な記憶を思い出せたなこのやろー!と星名は内心叫び散らかす。星名は独り言が煩いタイプの人間である。

 最後のは完全にとばっちりであるが、星名は止まらない。

 地面に放り投げられていた現装を拾い上げ、大きく飛沫を上げながら前方に跳んで再び斬りかかる。投げ飛ばされて姿勢を崩したその影に再び【流星】を放つ。光を失って水浸しになっていた現装が再び強く光を発する。


「(今度は当たりそう…!いや、当てる!逃がさない!)」


 その背中に容赦なく攻撃を横向きに叩き込む。たしかな手応えがあった。今度は完全に当たった。だが、なんだか嫌な予感がした。強く地面を蹴って後方に下がり、距離を空ける。


「……防御魔法が間に合わなかったら、死んでた」


 そこで初めて、襲いかかってきた影が声を発する。ゆっくりと振り返り、初めて星名に顔を見せた。


「……え?」


 星名は驚いた顔を浮かべた。そこにいたのがまさかのとある知り合いだったからである。意外な顔に思わず硬直する。その知り合いも戦っていたのが星名だったことに気づいたようで、不思議そうに首を傾けた。その場に漂っていた2つの殺意が消える。


「……『S7』。なんでこんなとこに。」


と無機質な声が問いかけてくる。そんなことを言われても。


「そ、それはこっちの台詞なんだけど…」


「僕は依頼されたから。こいつらに。周辺警護したら金をくれるって言ったから。…でもみんなS7が殺しちゃったね」


まぁいいや、と言ってその人物は頭を掻いて立ち上がる。そして長い黒髪を束ねながら、現装を解除した星名に声をかけてきた。


「ここにいたら風邪ひいて死ぬからどっかいこう」


相変わらず雨は降り続けていたが、先ほどまでより少し優しくなっている気がしたのは、星名の気のせいではなかった………かもしれない。

白米を豆腐に入れ替える豆腐ダイエットを2ヶ月程続けたのですが、痩せなかった上に豆腐嫌いになりました。その上志望校判定はAからDになり、保護者には怒られ、授業についていけなくなりました。あ、あとこの前ゲリラ豪雨に降られました。

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― 新着の感想 ―
◉ω◉ミテルゾ
やはり初手殲滅から始めるのが秘密結社員の様式美なのか?
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