裸の王
ある王国の話である。その王国は戦争に勝ち続けていて、他国から恐れられていた。何度も王を暗殺しようと試みたがそのどれも失敗で終了した。ちょうど親族が全員死んだ頃、王は傲慢になり、自分の言うことを聞かない者は全て処刑していた。家臣が王に何か意見などできなかった。毎日人が処刑によって死ぬのが当たり前であった。今日も人が殺されるところである。罪人は少女であって、王を睨んだことによる王反逆罪が罪状である。王はニタニタと笑いながらその少女の死に姿を見ようとしていた。
「何か言い残すことはあるか。」処刑人はがそう言うと、少女は
「王はとても臭い。」そう言い残して、少女は斬殺された。
王はひどく、それはとてもひどく動揺した。王は家臣に
「我は臭いのか。」そう問うてもただ
「いいえ。王はとても良い匂いであります。匂いは薔薇のようでございます。」そう家臣は言うだけだった。
それだけでは不安になり王は家臣一人ひとりに「正直に話さない者はその場で処刑をする。」の文言とともに自分の匂いを聞いていった。しかし臭いと言う者などいなかった。
王はその日から悩み、毎日入念に風呂に入って、体臭や口臭のケアを以前よりも気にするようにした。
ある日いつものように街を歩くと、王は誰かに笑われた気がして、兵士を使って笑った者を探した。しかし見つけられず、見つけられなかった兵士の何人かが処刑された。
王はその日からまた臭いに気を付けた。入浴時に肌は布で擦りすぎて、血が出てしまうほどであり、口の中もまた磨きすぎによって、血が出てしまった。
それから王は街に出歩くことが怖くなり、王宮に引きこもりがちになった。あの日からというもの夢にまであの少女がでてきて、起きると王は体中、汗まみれになることも多くなった。汗が体の傷に染みて不快な朝を迎えるのが日課になった。
家臣に何度も言う「本当に我は臭くないのか。」と。返しはいつも同じようで
「はい。王が臭いなどありません。とても良い香りです。」と言われるだけであった。王はそれが気にくわず、そういった家臣を処刑にした。
王は自分の肌を布で、やすりのように擦った。もはや擦るというより削るといった方が表現にあっているくらいに。肌からは血が噴き出して、最後に王は出血多量で死んでしまった。
王を殺したのは最強の武器でなく、最強の暗殺者でも最強の毒薬でもなくただ9文字の少女の言葉だった。
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