番外編1 ミーティア
ミーティア
私がこの寮に住み始めたのは5歳の時だ。
住んでいた村から出て行かなくてはならなかった理由は詳しくはわからないが母が泣きながら私の手を引いて村を出たのは覚えている。
父とはそれ以来会っていないが父には怒鳴られるか殴られるかの記憶しかないのでホッとした記憶がある。
村では獣人だと同じ年の子供たちにはよく意地悪をされていたし村を出て行くのは嫌じゃなかった。
この寮のみんなは歓迎してくれたし全員が獣人で優しい。
何より毎日ご飯が2回も食べられる。
村にいた頃は1日1食食べられたらいい方だった。
母は夕方に働きに出て夜中に帰ってくるので1人で寝ないといけないことは寂しかった。
夜中に目が覚めたら母が帰ってきたところで泣いているのを見たことがある。
母は私を抱きしめたがなぜか寝たふりをしてしまった。
実際にそのまま寝てしまったけれど。
次の日起きたらまだ母が私を抱きしめたままだったのを覚えている。
その後も何度か朝起きたら抱きしめられていたことがあったが起きたら元気ないつもの母なので安心したし、時がたつにつれそういうことも減っていった。
ここに住んでいる人は全員が同じところで働いているので夕方になるとみんな仕事に行く。
残るのは私ともう1人、10歳のアンナという狸の獣人の女の子だった。
アンナも母親が仕事をしているのだ。
料理はアンナの仕事だった。
食べられるだけで嬉しかったので味までは気にしていなかったが、朝配達される野菜を煮込んで塩を入れるだけ、アンナにそう聞いた。
私の仕事は掃除や薪集めなどで、それもアンナが教えてくれた。
3年ぐらいはそんな生活だったがその後ベイルとリンがきてお昼も賑やかになってきた。
ベイルはすぐに仲良くなったがリンと仲良くなるのには数ヶ月かかった。
そのうち2人ともミー姉と呼んでくれるほどに慕ってくれるようになった。
弟と妹ができたみたいで嬉しかった。
そうなると今度はアンナの母親が王都に行くことになり、アンナも出て行くことになった。
今までアンナに言われるがままに手伝っていただけだったのでアンナがいなくなったら何をしていいのかわからなくなって困った。
何かしろと言われているわけではないが母たちは仕事をしているし今まで子供が寮の中のことでできることはすることになっていた。
何より何もしないでご飯を食べるのには気が引けた。
アンナが昔教えてくれた、野菜を煮て塩を入れる、そのことしか頭に残ってなくておずおずと寮のみんなにそれを出したらみんな食べてくれたのでホッとしたものだ。
たまには違う料理を、と思って野菜を焼いたりしてみたのだが焦がして食べられなくなったので食材を無駄にしないためにも同じ物を作り続けた。
調味料の中には毒になる物もあると聞いているので簡単に何でも使うわけにはいかない。
食材は朝、母たちが働いているお店のオーナーだという人から送られてくる。
送られてくると言っても何屋さんからかわからないが今日の分としてかごに詰まった野菜やパンなどを持ってきてくれるのだ。
くず野菜に固いパンがほとんどだったが食べられるだけありがたいのはわかっている。
ここで働く条件の中に毎日ご飯が食べられると言うのも入っていると聞いた。
その食料を持ってきてくれる人はパドという人族だった。
母たちの働いているお店の新人だという。
年齢は15と聞いた。
この町でも人族は私たちのことをいやな目でしか見ないし話しをするのも嫌がる人もいるがパドは違った。
少なくとも乱暴でもなくきつい言葉でもなかったからだ。
たまにこっそりと、「少ししかないから今食べちゃって」と言って小さなお肉を焼いたものをくれたりした。
それが美味しくてすごく嬉しかった。
母の仕事のことを聞いたのもパドからだ。
その頃には母も朝になると私を抱きしめて寝ていることもなくなっていたが大変だということとあまり人には言えないということはなんとなくわかっていた。
だけどもパドは大変な仕事だけどやりがいはある、みんな頑張っていてすごい、と母たちを認めてくれていた。
母が認められるのはやっぱり嬉しい。
私にも大人になったら同じ仕事をするなら俺がオーナーに言ってやるよ、と言う。
すぐにはわからないとは言ったがパドに聞いたところによるとほかに仕事を探すのは難しいと言うことだ。
何より働けばお金も貰えるし毎日もっと美味しいものも食べられる。
もちろん怖いものは怖い、だけどパドにほかの世界の話を聞くとそれしか選択肢はないのかな、と言う気になってきていた。
「早く働きたいなら俺が紹介してやるよ」と子供でも働けるようなことを言うがそこまでの覚悟はまだできない。
パドの言うように早く働いた方が母も楽になるのかな、と言う気にはなっているが。
そんなある日、半年ほど前に新しく入ってきたミリアがその子を拾ったと聞いたときは驚いた。
人族だったからだ。
しかも一緒に住むというのを聞いてまた驚いた。
この寮ではペットを飼っている人は多い。
私やベイル、リンの子供がいるところは別としてそれ以外で飼っていないのはミリアぐらいだった。
ただでさえ食料が少ないのに皆がペットを飼いたがるのは不思議だったがそれで文句を言うような人もいなかった。
ママは「1人だと寂しいのよ」と言うけど皆一緒に住んでいつも騒いでいるのに。
それがペットじゃなくて人族、皆人族が嫌いだというわりには反対する人もいなかった。
不思議だが私ももうすぐ10歳になる、ベイルたちほど子供じゃない。
皆が受け入れるのに私だけだだをこねるなんてことはしないつもりだ。
だけどそいつがいい奴だとは限らないし嫌な奴の可能性の方が高い、なにしろ人族なのだ。
中にはパドみたいに嫌がらせをしない人族もいるが今まで会ったほとんどの人族がそうじゃなかったのだ。
最初に会ったときに私は少し身構えたが向こうはそうでもなかった。
会ったばかりなのにベイルとは仲良くなっていて嫌がることはしたくないと言う。
それにリンが逃げ出さないのだ、よく見る人族とは違うのかもしれない。
リンと仲良くなるのには私も時間がかかったぐらいなのに。
魔石を渡したときに無くなったので少し疑いかけたがすぐに見つかった上に魔力も充填されてたのでどうやらわざとじゃなさそうだ。
おまけに料理の仕方まで知っている。
全面的に信用するわけにはいかないけど少しは信用してやってもよさそうだ。
それから数ヶ月、ティルとはかなり仲良くなった。
お互いに自分の方が面倒を見ている、と軽口をたたき合うことも多い。
実際には私は年上というだけで色々なところでティルにはかなわないと思っている、だけどそんなことを言い合う時間も楽しいのだ。
ただ、ティルの5歳と思えないほどの料理や調味料の知識のくせに常識のなさには驚く。
獣人とも会ったことがないという。
もっとも記憶があやふやらしいので覚えてないだけかもしれないが。
料理の知識はあるくせに料理自体はそんなに得意じゃないというが、私がその知識で何度か練習したらティルが作るより美味しくなったのは確かなので本当に知識だけなのだろう。
パドが売れ残りだと言ってたまに使い方のわからない調味料などを持ってきてくれていたのだがそれらを使って美味しくするのだ。
珍しいだけで全く売れない、辛すぎたり味が濃すぎたりで使い道がない、使って死んだことがある人がいる、そんな調味料なのにティルは使い方がわかるらしく、それを教えてくれた。
教えてくれたやり方そのままではなく、さらにすこし薄めたり逆に濃くしたり、一度別のところで溶いてから使ったり、味見をしながら味を調えるということを覚えた。
その感覚がなんとなくわかってきた気がする。
美味しいものを食べ、料理をするのが楽しくなってきた。
私はここに来てもうすぐ5年になる。
母は契約で10年働かなければならない。
周りの人も同じような状況だが他の子どもたち3人よりはかなり早くお別れになる。
あと5年たつと母はここの仕事から離れられるが別の生きていく術を見つけなければならない。
母だけじゃなく、14になる私も自分で独立しなくてはいけないだろう。
契約が終わってから元の村に帰っても歓迎されないことはわかっている。
母は契約が終わっても王都のお店でそのまま働かせてもらいたいそうだ。
10年で借金は返せるので違う仕事でも手元に入るお金は増えるはずだが、手に職もないし追い出されたらどう生きて行っていいのかわからない。
オーナーが他の仕事も紹介してくれるという噂も聞くが住むところもなく少しの余裕もないのにお給料の少ない仕事だと生きていくのも難しいからだそうだ。
アンナの母もそうしたようだ、王都に行ってからアンナから連絡などはないが苦労してなければいいのにな、と思う。
私はどうする?
母はしたいことがあるなら好きな道に進んでいいと言ってくれていたがそもそもそんな伝手も余裕も夢もない。
こんなスラムで生きていくのなんて犯罪組織の下っ端になるか盗みで生活するかぐらいしかないだろう。
したくなければ野垂れ死になのだ、選択肢はない。
だがもちろんどちらも捕まれば奴隷行きだ。
それこそ今のこの年齢で体を売っている子もいるという。
パドに聞いたらそういう子供でも働ける組織があってパドは伝手もあると言う。
頑張って働いて母の助けになるのは嬉しいしそうしようかと思うときもあるがどうしても思い切れなかった。
他にお金を稼ぐ手段、例えば物乞いなんてしてもこの街で他人に施すほど余裕のある人はほとんどいない。
平民の街でしたって獣人に施す者なんてほとんどいないだろう。
貴族街などは入っただけで身の危険がある。
獣人は汚い、という理由だけで殺されても相手の言い分が通る場所だ、絶対に近づいてはいけないと言われている。
そう考えると母と同じ仕事をするしかないのだろうか。
理解はしていても自分がその立場になると思うと嫌悪感と恐怖が先に立つ。
日がたつにつれパドの言うとおりにした方がいいのかなと言う気持ちが強くなってきていたのだが、ティルと出会って最近私にもしたいことができた。
いつか料理人になって自分のお店を出したい。
ティルに教えてもらって料理が楽しくなってきたのだ。
いつか自分のお店を出せたら・・・そんなことを考える。
母と一緒に王都に行ったらどこかの食べ物屋さんで働きたい、そこでお金を貯めて自分の店を持つ。
そんな夢を母に語ると嬉しそうに聞いてくれた。
「最近ご飯美味しくなってるもんね、才能あるんじゃない?」と言ってくれるが今はまだティルのおかげ、これから頑張らないといけないのはわかっている。
初めて将来に希望が見えた気がして毎日が楽しくなってきた。
ティルが失敗してもいいと言ってくれるので料理も色々と試して上達していると思う。
焦がしたり美味しくなかったりすることもたまにあるがティルたち3人が笑いながら食べてくれた。
その分美味しくできたときにももちろん食べてもらう。
ティルはベイルとリンとに比べると同じ年なのに全然上に感じることがある。
むしろ私より落ち着いているような・・・
でも悔しいからティルには私がお姉さんの立場だとはいつも言っている。
将来ティルと一緒に王都でお店を出すようなことも考える。
これはもちろん実現するはずもないが想像だけで楽しそうだった。
1つ問題があった。
その夢をパドに話すと明らかに機嫌が悪くなる。
「そんなこと無理に決まってる」
「さっさと働こうぜ、俺がこっそりと子供でも働けるところ紹介してやるから」
少し強引にそう誘われる。
どうしていいのかわからなくなって母に相談してみた。
次の日からパドは来なくなって、普通の獣人を見下している人族が来るようになった。
お肉をくれるパドが来なくなったのは少しがっかりだったが強引に働けと言われることもなくなったのにはホッとした。
新しい人が少し話してくれたところによると、パドは私をオーナーとは別の組織に売るつもりだったという。
新しい人に「ガキが好きな変態も多いからな、売られたら死ぬまで玩具だよ、助かったな」と言われて怖くなった。
まさかパドがそんなことを考えていたなんて。
「お前の母親がオーナーに連絡してバレたんだ、パドの方こそ今頃どうなってるやら、オーナーを裏切ったんだ、死んだ方がマシな状況だろうな。お前もそうなりたくなかったらオーナーに逆らうなよ。何しろかなり上とも繋がりのある貴族だからな」
その言葉を聞いて1度かしか見たことのない、どちらかというと優しい感じの男の人という印象だったオーナーに逆らってはいけないということを知った。
それとともにパドが獣人と知っても優しくしてくれていた理由を知ってガッカリした。
少し前なら2度と人間なんて信用しないと思っていたかもしれない。
だけど今はそうはならなかった、ティルがいるから。
数ヶ月でパドよりも信用がおけるようになっていた。
獣人であることを全く嫌がらない。
なんならたまに耳や尻尾を触らせてほしいと言って、触らせてあげるとニヤニヤしているぐらいだ。
人族に忌避される獣人の象徴なのに嬉しそうに。
ミリアに聞いたらミリアにも触らしてもらっているようで本当に好きなのだろう。
ミリアのを触るのなら私がもっと触らせてあげるのに・・・そんな思いもある。
そう思った自分に驚いて気付いた。
もしかしたら私はティルのことが好きなのかもしれない。
相手は5歳なのに?
でもそう意識してしまうと認めるしかなかった。
もちろんそんなことをティルには言わない。
相手は5歳の子供だしそんなこと言われても困るだろう。
それに、ティルを見るようになって気づいた。
ティルはミリアのことが好きなんだと思う。
私もティルを好きだと言ってもどうしていいのかわからない。
好きだなんて恥ずかしくて言えるわけもない。
ならこの気持ちのままティルと一緒の暮らしを楽しもう。
いつか好きだって伝えられるようになりたいな。
以前に比べて毎日を楽しく過ごしているところでそれは現れた。
ちょうどスープの味見をしているときだ。
裏口からリンの叫ぶ声が聞こえてきたので慌てて開けてみた。
すると右側でベイルとリンがこけている。
「大丈夫!?」
と近寄った途端に大きなものが立ち上がるのが視界に入る、どうやら木の椅子につまずいて倒れていたようだった。
イノシシの魔物・・・思わず体が固まるが2人を見捨てるわけにはいかない。
起き上がったベイルが持っている木の枝で作った木刀を構えるがそんなのでどうにかなるわけがない。
二人の前に立ち私も身構えるが待っているのは味見をしていたオタマだ、ベイルよりもどうしようもなかった。
「二人とも逃げて!お願い!」
せめて2人だけでも逃がさないと、そう叫んだがすぐに動けそうにない。
私にしても恐怖で震えているのが自分でわかる。
そんなとき裏口からティルの姿が見えた。
「ティル!来ちゃだめ!逃げて!2人とも早く!」
今こっちに来たら4人とも魔物の餌になるしかない。
一番年上の私がみんなを守ってあげないと・・・なんとかここにいる2人も寮の中に。
そう考えたのだがティルはベイルと遊ぶ時に使って立てかけていた木の枝を持って「こっちだ!」と誘っている。
「来ちゃだめだってば!早く逃げて!」
ティルが魔物に向かい合おうとするので大声で叫ぶ。
こっちに来ても私が襲われている間に後ろの2人に逃げてもらおう、無理だと思うがイチかバチか、みんなを守るにはそれしかない。
自分でも体が震えているのがわかる、だけどここで頑張らないと!
そう思っていたのにティルが魔物に何か投げつけたようで、魔物の意識はティルに向かった。
「俺が何とかするから!ミー姉、2人と逃げて!家の中に入って!」
そう言ってティルは裏口から離れ、魔物の向こう側に行った。
「だめよ、そんなの!」
「もうそうするしかないんだって!お願い!」
さっきまでならたぶん私たち3人が逃げ切れずに死んでいただろう。
だけど魔物がティルに向かえば私たちは逃げられる。
でもそうなったらティルが死んじゃう、そんなのは嫌だ。
でもこのままいても2人どころかみんな死んじゃう。
頭の中にそんな考えが浮かぶ。
とにかくまずはこの2人を逃がさないと。
リンを引っ張るように、ベイルにもついてくるように言って寮に入った。
ティルを見てみると大きな音を立ててティルに向かった魔物を上手に避けたようだ。
もう魔物はティルしか見てないだろう。
私たちが逃げたことをティルが確認するのがわかった。
恐る恐るドアから覗いているとまた魔物はティルに向かって突進する。
逃げて!と心の中で叫んだが正面からは当たらなかったようだがティルは倒れてしまった。
立ち上がろうとしているうちに魔物がティルの前まで来る。
前足を振り上げて踏み潰そうとしたところを何とか転がって避ける。
そこにさらに追い打ちのように前足を振りかぶりティルを踏み潰そうとする。
(逃げ切れない!)
そう思った。
思わず目を閉じた。
(私のせいでティルが・・・)
どうしようもなかったとはいえ罪悪感が残る。
あのままではティルは死ななかっただろうけど3人とも死んでいただろう。
ティルは私たちを助けてくれたのだ。
そう、助けてくれた、それなのにここにいては魔物は私たちをさらに襲うかもしれない。
ドアを閉めて2人を連れて隠れないと。
そう思って恐る恐る目を開ける。
魔物のあたりは血まみれになっている。
足が震える、体が思ったように動かない。
(あの血はティルの血・・・?本当に死んじゃった?どうしよう、早く逃げないと、2人は?後ろ?動け、私!)
何とか手に力が戻るのがわかる、ドアを閉めようと体を動かしたそのとき、魔物が動いた。
ビクッとするがそれは思っていた行動ではなかった。
魔物が大きな音を立てて倒れ込んだ。
逃げないといけないと思っても何が起きたのがつい目がいく。
すると何かが動いて立ち上がった。
血まみれになっているが・・・?
その血まみれのものが手を上げてこっちを向いた。
「ふぅ~、あ、ミー姉、もう大丈夫だよ、ギリギリだったけど助かった」
まさか魔物を倒したのだろうか?
1人で倒したら一人前の大人と言われるウサギの魔物じゃなくて倒したら強者と言われるイノシシの魔物を。
「ホントに・・・?血、いっぱいだよ?魔物は死んでるの?」
立っているのはティルで起き上がらないのは魔物だ。
それでもなかなか信じられない。
「あぁ、これは魔物の血だよ、洗わないとね。ケガもないと思うよ」
そう言いながら確認するように手や足を動かしている。
どうやら本当のようだ、魔物が死んだふりなんてするはずもない。
あの血が全部魔物のものなら本当に死んでいてもおかしくない、助かったのだ。
ホッとしたところで両脇からベイルとリンが飛び出してティルに駆け寄る。
私もそれに続いてティルに駆け寄り3人でティルに抱きついた。
「血まみれだよ?汚れちゃうよ?」
「なんで逃げないのよ!死んじゃったらどうするの!?」
「逃げられないよ、自分に恥ずかしいことはするなって思ってるからね」
「だからと言ってあんな魔物に立ち向かうなんて・・・」
「それはミー姉も一緒だろ、オタマで立ち向かってどうするつもりだったんだよ」
「仕方がないじゃない、私はお姉さんなんだから」
「俺もだよ、兄代わりと思ってるからね、みんなを守るのは当然だろ?」
「違う!私がお姉さんなの」
そんな言い合いをしているうちに本当に助かったんだと頭で理解した。
そうなると急にさっきの魔物の前にいたことが怖くなる。
リンが1番に泣き出したが、それにつられてベイルと私も泣いてしまう。
怖かった、死んじゃうかと思った。
だけどティルは助けてくれた。
恐怖とうれしさと安心感とで涙が止まらない。
それはリンもベイルも同じようだった。
3人に囲まれてティルは困ったような顔をして血まみれのまま私たちの頭をなでてくれていた。
妹でもいいかも、とは思ったがそんなことは言ってやらないんだから。




