第9話 王都での戦い
リモが弓矢を放つ。
その度に敵が倒れる。
相手からの矢はベイルが盾で受け止める。
戦いになった時点でベイルには大きなドラゴンの盾をマジックバッグから出して渡しておりニルとリモの前に立っている。
もちろん俺を含めて全員がドラゴンの肌着と手袋に靴下、手首と足首のガード、さらに帽子を着込んでいるので顔以外は当たってもダメージはない。
顔を隠すために布で顔の下半分を覆っているがこれもドラゴンの装備にすればよかった、ドノバンに相談して作ってみよう。
それでも相手の矢は1本も誰にも当たらなかった。
近接戦を挑んできた兵士もカインと炎帝が余裕をもって撃退する。
エイト国の王弟であるカインがシックス国の王宮に攻撃したとなると都合が悪い。
失敗しても俺が生きてればカインたちは逃がしてごまかすつもりだが、焼け跡に証拠が残る炎帝の炎の魔法はできれば使わない方がいいだろうとのことで余裕のあるうちは炎帝にも剣で対応してもらう。
1人で4人を相手にするのは難しいがこちらも複数になると防御と攻撃を同時にでき、同時に攻撃される人数にも上限があるので同じ4倍でもなんとかなりそうだ。
だが今回は4倍どころの人数ではなく500人ほどもいる。
短期でなんとかなったとしても体力も削られて押し切られるに決まっている。
「このままだとそのうちやられるぜ、死ぬんならその前に炎の魔法の許可をくれよ」
炎帝も今は余裕があるが数の違いを実感したのだろう。
そう言いながらも敵を斬り捨てているがまだ30人ほどを倒しただけだ。
貴族街での攻撃魔法は禁止ということになっている。
だがこのまま相手が劣勢のままだと緊急事態ということで魔法を使ってくる恐れもある。
「仕方ないか・・・」
カインがそう判断しようとしたが俺が止める、それは最終手段だ。
「ちょっと待って、数、減らすから」
「減らすって?」
カインに聞かれるが実際に見せないと納得できないだろう。
俺は周りを見渡した。
後ろは研究室の入り口で敵は左側の屋敷の門から入ってきて前面の庭全体に広がっている。
マジックバッグから剣を抜いた。
実際の剣としてはほぼ役立たずの軽くて細いだけの剣。
遠慮はしない、味方に当たらないように1番前に出る。
横薙ぎに剣を振る。
近くの数人ぐらいなら剣で切られたとごまかすつもりもあったのだがここではそんなごまかしはきかないだろう、剣を出したのは何となくイメージしやすいからだ。
直径1㎜ほどの細さの『消去』が50mの長さに延びて当たった場所全てを1㎜消していく。
抵抗もなく一振りで庭にいた兵士たちは全員が胴を切断された。
50mの範囲外にいたのは100名に満たなかった。
何が起きたのかわからなかったのだろう、さらに半分ほどが向かってくる。
目の前の光景を見て立ち尽くしている者もある。
逃げ出した者が1番賢いのかもしれない。
味方のカインたちすらあっけにとられていた。
「ティル、えげつないな、こんなことできたのかよ」
「何だこりゃ、なるほど、俺が勝てるわけねぇ」
「国に喧嘩売るってのに勝ち目の裏付けがあったんだな」
「まぁ色々制限もあるけど今回は出し惜しみするつもりはないよ。本気で腹を立ててるから」
もう一振りしてさらに50人ほどを真っ二つにする。
「城に行くんだろ?残りの敵は俺たちに任せてくれ」
俺たち付近の敵は倒した、後は逃げ出す敵や離れたところから様子をうかがっている敵ぐらいで個別に追い詰めるよりは早く城に向かった方がいい。
ベイルの言葉に甘えて1人で城に向かった。
城にいるのはコングロレイト公爵を含む国軍の将官クラス50人ほど、文官と呼ばれる上級貴族たちが50人ほどと後は王だ。
国軍の上級兵は貴族の子弟がほとんどなので使用人たちもいるはずだ。
基本的に使用人などは傷つけるつもりはないが無理に傷つけないようにすればこちらの方が不利になるのでできれば、というぐらいだ。
今さら隠れて潜り込む理由もない、剣を振り門番を切断して通り過ぎる。
もちろん相手の剣などは届かない位置から『消去』でだ。
門を抜けると100人ほどの軍服を着た集団がいた。
恐らくさっきの集団にいるはずだった軍隊の一部だろう。
王宮守護兵が予定より少ないから別で警備でもしていたとかそんなところだろうか。
すでに相手は敵としてこっちを見ているようで指揮官は後ろにおり皆が整列して並ぶ。
散々練習したのだろう見事に統率はとれており3つの部隊に別れて剣を抜いていた。
ここから指揮官までは約80mほど。
「ティルだな、私はシックス国国軍副司令官のオーヴィ・・・」
オー何とか副司令官は首が切断されて足下に落ちたので名前を最後まで聞くことはできなかった。
実際にこっちからしたら今さら何も聞くことはない。
何か知っていても決定権はこいつらにはないのだしすでに喧嘩を売ったのはこいつらなのだ。
80mの距離があろうが50m先まで腕を『転移』させそこから30m先の首を『消去』する。
もちろん腕は繋がっている、50mの距離なら自由に『転移』できるので入り口に腕だけ入れて50m先の出口に『転移』させたのだ。
整列した軍隊が動揺する。
どっちが先などどうでもよかったのかもしれないが軍隊なんてものは指揮する人間が決まっておりその人間がいなくなったらすぐに動けない。
もちろん次の責任者は決まっているのだろうがそれが決まるまでの動揺中にまた50mの『消去』を一振りした。
8割ほどが上半身を無くす。
さらに自身を50m『転移』させて距離を詰める。
もう一度『消去』を振る。
その場に立っている者はいなくなった。
いや、切れた時のバランスがよかったのか下半身だけで立って倒れていない者は数名いるようだ。
それらもすぐに上半身がなくなったことを思い出したかのように倒れる。
死体を踏まないように中庭を抜け城内に向かう。
さすがに騒動はバレているはずだ。
しかしここで慎重に移動しても相手に余裕を与えるだけなので攻撃されたときの対処は考えながらも開け放たれた城に踏み込んだとたんに無数の矢が降り注いだ。
もちろん準備はしていた。
薄い『消去』を身体の周りにまとう。
最近になってやっとできた0.1㎜の厚みの『消去』だ。
これを1m四方の大きさで上半身を半円で包み込むように守る。
太ももより下は守られてはいないがドラゴンの肌着と靴下でよほどの攻撃以外は耐えられる。
上半身も同じような感じなのだが顔、特に目の周りは防御できていないし動きによっては首筋なども露出する。
何より矢や刀が実際にが当たる事実にまだなれておらず少し前で消えてくれたらありがたいのだ。
防御に『消去』の範囲をまわした分攻撃にかける『消去』は少なくなる。
約5分の1ほどの体積しか残っていない。
身体の周りでは0.1㎜で出せるが離れると最小で直径1㎜ほどの細さになる。
25mほどしか出せないが室内ではそれでじゅうぶんだ。
入り口を背中にして敵を視界に入れる。
真正面には大きな階段、2階から繋がる通路、柱やテーブル、置物に隠れている敵もいる。
腰の剣を抜いた。
屋外だと腰の辺りを一振りで全滅させられたがここでは高低差があるのでそうはいかない。
しかしさすがに屋内では25mも離れていないのでどこにでも『消去』は届く。
置物の陰に隠れながら弓で狙ってくる敵たちには置物ごと真っ二つになってもらう。
直径1㎜長さ1mの『消去』をその敵の辺りに出現させ剣を動かすのと同時に『消去』も動かせばそれで切れる。
1度だけなら頭の中でイメージするだけでだいたいは思い通りになるのだが今回はさらに続けて何人もの相手だ。
剣を持っているほうが距離感覚や『消去』の動かす範囲を把握しやすい。
「ティルだな!神聖なる王宮で魔法での攻撃とは何事だ!親族もろとも死罪に値するのだぞ!早く攻撃をやめてそこに跪け!」
20人ほどを斬ったあとにそんな声がした。
見知った顔、王宮守護兵の指揮官だ。
こっちが1人なものだからか今だに魔法で攻撃してこなかったのは貴族街で魔法での攻撃は禁止という条項を守っていたのだろう。
親族もろともというが先に攻撃してきたくせに何を言っているのかわからない。
こいつらは馬鹿なのだろうか?
「先に俺の大切な人たちを罪もない犯罪奴隷にしたのはお前らだろ?」
会話をするつもりはなかった。
だがあまりの一方的な言いように反論してみたくなったのだ。
「何を言ってるか!話は聞いている!獣人など犯罪奴隷にしてでも役に立てばそれでいいのだ!」
「お前はそう思ってても獣人からしたらどうだろうな?」
ソファーの裏の敵をソファーごと斬り捨てる。
「獣人の意見など知らん!貴族の意向が最優先なのは当たり前だろう!貴族に逆らう者には死だ!さっさと武器を捨てろ!」
「何でその意見が通ると思うんだ?今までは権力と暴力で反対意見を押さえつけてきたからだろ?じゃあその権力も暴力も通用しない相手には意見が通らないのは当たり前だろ?」
2階の踊り場から狙ってくる敵の首を落とす。
「きっ!貴族に逆らうのかっ!そんなことが許されるわけがない!」
「逆らうなって言うだけでおとなしく殺されるとでも?無理を通す後ろ盾がなくなったらどうするんだ?周り見てみろよ」
すでにこの空間で指揮官以外の人間は息をしていない。
それがわかったのか剣を握りながらも腰が引け後ずさりをする。
「こっ、こんなことをしてどうなるかっ!きっ、貴族に逆らって・・・」
指揮官の首を落とした。
最後は貴族に逆らうなとしか言えなかったようだ。
これ以上話しても時間の浪費で得られるものはないだろう。
王宮守護兵の下っ端の仕事である程度の王宮の内部は把握している。
今のでほとんどの組織だった兵士は倒したはずだ。
あとはこういう騒動が起こったときに自分の安全をはかるために隠れている文官の貴族とコングロレイト公爵と王関係。
視界の『転移』で文官たちが集まっている部屋は確認した。
敵が俺だとわかっているだろうに俺が王宮守護兵をしていた頃と同じ緊急時の退避室で待っているのは危機管理能力がないとしか言い様がない。
50人程が集まり元の世界の小学校の教室の倍ほどの広さの部屋にいるが座っているソファーやテーブルなどは比べようもないぐらい高価なものだろう。
その部屋に行くまでにも数人の見張りの首を落とした。
その部屋の前で見張っている4人の首も落とす。
この4人は王宮守護兵だった。
本来の任務はこれだろう。
さっきの部屋にいた者も合わせてこれで王宮守護兵は全滅したはずだ。
部屋に入るとざわめきが起きた。
まさか俺が来るとは思っていなかったのだろう。
口々に汚い言葉で罵り従わせようとしてくる。
「なぜお前がいるのだ?無礼にも程がある!」
「この部屋にいる者たちの立場がわからんのか?」
「さっさと跪いて我々の無事を保証しろ!この平民が!」
数々の罵倒を無視して部屋を見渡して言う。
「こちらに協力するという人は?」
「いるわけないだろう!反逆者が!」
「その口の利き方は何だ!無礼者が!」
「我々に傷をつけたらお前ごときが死んでも償えんのだぞ!」
「警備兵!警備兵!早く来い!」
諦めて横薙ぎに『消去』を振る。
立っている者、座っている者、体勢によって斬られた場所は違うが全員を斬ることはできたようだ。
ほとんどの文官は腹や頭を切断され即死だが3人ほど生き残っている者がいる。
部屋自体を斬るつもりはなかったので小さめの半円で斬ったから隅までは『消去』が届いていなかった。
部屋の隅に立っていた2人となんと俺が剣を横に振る動作を見て地面に伏せた1人。
伏せた1人はたしか男爵でさっきも文句を言っている貴族とは違い貴族から変わり者扱いされているような人物だったはず。
隅の2人のうち1人はたしかイーシリー伯爵でコングロレイト公爵の子分みたいな者、もう1人は見たことはないがイーシリー伯爵から文句を言われているような雰囲気からしてそれより下の貴族だろう。
「まだ文句が?」
床に伏せた1人は立ち上がり手を上げて降参の意思を示した。
名前を知らない貴族が首を左右に何度も振っているところイーシリー伯爵は大声を上げた。
「反逆罪だ!誰か来てくれ!」
さらに俺を見てニヤッと笑う。
「そこを動くな!私が捕縛する!大罪を犯した者を逮捕だ、私の功績だ!いいか、これ以上罪を重ねたくなかったら動くなよ!」
そう言いながら腰の剣を抜きこちらに向かって歩いてくる。
もちろん『消去』で首を落とした。
この状況に至ってまで動くなという命令に従うと思っていたのだろうか?
周りが殺されているのに?
「馬鹿か、こいつは?」
思わずつぶやいてしまった。
「馬鹿だろ、どう考えても」
変わり者男爵がそう答え、さらに続ける。
「敵に回るつもりはない、何が目的かはわからんがここが目的ではないだろう?全てが終わって俺たちができることがあれば協力する」
隣のもう1人は完全におびえているが敵対する意思はないように今度は首を上下に何度も振った。
元々この部屋でいきなり皆殺しにしなかったのは文官を全員殺してしまえば国としての内政的なことが何もわからなくなるのでは?と思ったからだ。
こんな国など滅んだらいいとは思っているが平民や獣人までに害を及ぼしたくはない。
だが結果はこうだ。
敵対するつもりがないのならこれ以上はもういいだろう。
後から何か言い出したらそのときに殺せばいい。
その部屋を出て王の元に向かう。
貴族はほぼ壊滅させたはずだ。
城の中で働いている者は半分は隠れるか逃げるかして半分が義務感か正義感からか襲ってくる。
そんな相手の首を落としながら王がいるであろう場所に向かう。
これだけの騒ぎが起こっているところであの王なら王の間と呼ばれる玉座の近くの部屋にいるだろう。
そこには『王の器』もあるはずだ。
王の間にあと少しというところで豪華な扉を開けると1人の男に会った。
銀色に輝く甲冑を着込み手には剣が握られている。
甲冑の胸の部分には鷹を意匠としたマークがついている。
コングロレイト公爵だ。
俺が入ってきたのを見て話しかけてきた。
「ティル、だったな、よくここまで来たな。インビジブルモンキーの毛皮はもういいのか?」
毛皮の意味はわからないがこちらの要求は1つだ。
「俺の知り合いを奴隷から解放してもらいに来た」
「何人倒した?毛皮を持っているとしてもここまで来るとはなかなかやるな、どうだ、俺の部下にならないか?男爵ぐらいにはすぐにしてやるぞ?ゲーレンなどよりはよほど使えそうだ」
「奴隷から解放してもらいに来た」
「んっ?あぁ、獣人だったか?そんなことよりこの先の話だ。ここまで単独でこれた実力は認めるがここにはSSランクでシックス軍総司令官の私と後ろの間にはさらに元10傑の王がいる。この先は諦めるんだ、そして私に仕えよ」
「解放しろと言ってるだろ?」
あまりの話の通じなさに貴族とは自分のする話にしか興味がないのだと再確認する。
公爵も話が通じないことにイライラしたのか大声になった。
「控えよ!国軍総司令官だぞ!跪け!!」
「奴隷から解放しろと言ってるだろ?聞いてるか?だましたのはそっちが先だ、頭が悪いのか?」
公爵は剣を上段に構えた。
「ふん、しょせんは貧民か。ならもう用事はない、死ね」
剣を振り上げたところで右腕を『消去』で切断した。
何が起こったのかわからない表情から痛みが襲ってきたのかみるみる顔がゆがんでくる。
こちらとしては奴隷から解放するのはこいつが権限を持っているのだからこいつに開放してもらうのが一番早いのだ。
「きっ、きさまっ、何をっ!!」
「しつこいな、解放しろと何度言ったらわかるんだ?」
公爵は左手でマジックバッグからポーションを取り出し切断した右手にかける。
その切断した右手を切り口に合わせるとつながり始めた。
このあたりの応用力は戦闘に慣れている証だろう。
「ちっ、特殊魔法か、ここで魔法を使うことがどれだけの罪になるかわからんようだな」
公爵が両手を上げたかと思うと身体が動かなくなった。
「お前が魔法を使ったからには仕方がない、私も使わせてもらう」
「何だ?これは?」
「わしの特殊魔法だよ、ただ動けなくするだけだがな。それでも便利なんだよ。いいですよ、王子!」
その声で車椅子に乗りひとりの男が入ってきた。
押しているのは服装からもかなり立場が上の女性だろう。
王子と呼ばれ車椅子に乗っているのならこの国の王子で間違いない、両腕と片足が石化して動かせないのだろう。
「公爵、こいつが生贄か?」
「そうです、正確には生贄のリーダーですな。獣人100人のまとめ役となり自らも犠牲になってもらう予定です」
「ほほぅ、こいつがか」
「こいつがストーンフラワーをっ!アメルドちゃんをこんな姿にっ!」
車椅子を押す女性が吐き捨てるように叫んだ。
王子を呼び捨てにする女性はこの世でひとりだけだろう。
自ら車椅子を押しているのは母親としての愛情だろうか?
王子の母親、この国の王妃だ。
「ははっ、いいぜ、今はな。結局はそのおかげで俺が王になるいい舞台ができあがったんだ。あと少しぐらい我慢してやるよ」
「まったくっ!こんな貧民にアメルドちゃんを助ける大役を与えるなんてもったいないぐらいだわっ!おまけに獣人100匹ってアメルドちゃんのためなら100倍の獣人が死んでもいいぐらいよっ!」
「獣人が何人死のうがどうでもいいからな、あいつらは優しくしたらすぐつけあがりやがる。俺の石化を解いた後も続けてエリクサーを作るためにまた捕まえるんだろ」
「そうですな、絶え間なくエリクサーを作り続けられるようにすぐに次の100匹も集めるつもりです。さぁ、準備をしましょうか」
公爵がマジックバッグから魔石を取り出した。
どうやら隷属の首輪の魔石のようだ。
「あっ、俺が直接つけてやるよ。犯罪奴隷になって最初の命令を聞くときのあの表情が笑えるんだよな。やりたくないのに身体が命令通りに動く絶望の表情、まずはそうだな、這いつくばって靴でも舐めてもらおうかな」
「アメルドちゃんに直接首輪をつけてもらえるなんてよかったわね、王子様の靴を舐めるのも光栄でしょうに」
「自らマジックアントを持ち込みアイアンパピヨンも捕た。ストーンフラワーも持ち込んだが取り扱いを間違えたために王子が石化してしまった、その責任を取るために獣人100匹と一緒に人間の魔石になるために命を差し出すんだ、嬉しいだろう?」
3人が3人ともニヤニヤとした表情だ。
動けない俺に向かって好き放題する。
逆らう術がない者への弑逆、それが楽しいという人間特有の表情。
アメルド王子と王妃の首がズルリと落ちた。
ニヤニヤとした顔のまま。
「なっ、貴様っ!動けないはず、剣も抜いてないのにどうやってっ!?」
疑問を持ちながらも腰の剣を抜き襲いかかってくるのは戦いになれているのだろう。
だがその闘いの慣れが俺の動きから予想して剣を使って離れた物を斬ると想像したようだ。
それでいて自分は動けなくなる魔法をかけるときに両手を上げた、今剣を抜いたが俺は動けない。
両手を上げるのが動けなくする魔法の条件に見せてのはったりか?
いや、俺のようにただ魔法のイメージが沸きやすい、ということもあるし動きを止めるのに必要な動作なだけで最初だけ上げてればいいということかもしれない。
いくら考えても仕方がない、公爵の魔法を解明してももう会うこともないだろうし興味もない。
今さら異能バトルをするつもりもないのだ。
向かってくる公爵を袈裟懸けに斬るイメージで『消去』した。
下半身は前のめりに倒れて上半身は勢いのままにこっちに向かって下半身とは少し離れて倒れた、切れた右腕は剣を持ったまま床に落ちている。
公爵が死んだと同時に魔法は解けて身体が動く。
手を握ったり開いたり、脚を曲げたり伸ばしたり、としてみたが何の後遺症もなさそうだった。
残りは王のみ。




