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5³㎤の転移無双  作者: 清白
第3章 ホワイトナイト

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第4話 隣の国での大作戦 出発前




 カインの上の兄、すなわちエイト国の次期王様に会った。


 もちろん公式な場所ではない。

セブン国内にある隠れ家のうちの1つで地理的にはセブン国の真ん中にある王都より東北に位置し、この国3番目に栄えているといわれる町キトゥンだ。

国家横断道路沿いのシックス国側にあるので国境を挟むがバラッドの町とは隣町になる。


 この町でも住む場所は明確に別れていて中央の貴族街、南の市民街、北のスラム街となっている。

国家横断道路沿いではあるのだが道がバラッドの町よりも少し魔の森からは南にそれているので町のすぐ横が魔の森というわけではない。

このあたりは道路工事のしやすさが理由ではあるがそれでも1㎞ほど北に行くと魔の森がある。


 貴族街からは東西南北に大きな道が通っており南側の市民街を突き抜ける道には市民の貴族相手にできるような高級な店が建ち並んでいる。

もちろん貴族街の中にはさらに高級な店が並んでいるのだが普段見ないものに興味を持った貴族が立ち寄ったりお金を持つ市民たちの買い物の場になっていた。

南の道路から町を出たところに国家横断道路が通っている。


 他の3本の道はスラムにも近いこともあって貴族が買い物などをすることはない。

大通りなだけあって町中よりは少し高級な店が並ぶがそこに貴族が立ち寄ることはなく貴族が町を出るのに通るときには道路の横断さえ禁止されている。


 そんな町の東の道路と南の道路に囲まれた南東の市民街の中に隠れ家はあった。

スラムに隠れる方が安全かというとそうでもなく王族のような人達は礼儀や姿勢などが自然と違うのだ。

スラムの中でだと逆にそれが目立ち密告などでばれてしまうことを恐れここにしたようだ。

俺ならスラムでもじゅうぶん住めるだろうが王子様はそうもいかないらしい。


 会ったのはエイト国第1王子のリブディ王子。

大柄で体格がよく筋肉質で質実剛健を表したような人物だ。

おまけに俺を下に見るようなところもなく非公式の場だということもあって普通に話してくれたらいいと言われた。

だが弟であるカインすら敬語で話しているのに俺がタメ口で話せるわけがない。

礼儀を知らないので失礼なことを口にするかもしれないことを前提で敬語で話すことになった。


 「この先そういう場所に出ることもあるかもしれないから練習と思ったらいいんじゃない?」


 ニルにそんなことを言われるがこの先『そういう場所』に出る予定はない。


 リブディ王子の横に控えるのはダイスとハイスという王子の護衛兼この作戦の実行役責任者だ。

王宮の要職にあるふたりで普段は宰相に付き従い国の動かし方を学んでいるという。

短い黒髪を立たせ鋭い目つきで市民の服を着ているが中の筋肉を隠し切れていない人物がダイス、大剣を腰に下げている。

将来リブディ王子が王になったときの直属の護衛隊長になる予定だ。

肩まで伸びた黒髪でどちらかというと柔和そうに見えるが次期宰相はこの人しかいないと言われている人物がハイス、腰にレイピアのようなものを下げている。

武と知に見かけも将来も別れたような2人だが違う方が不得意なわけではない、武力ではダイスの部下でハイスに勝てる者はいないしハイスの国家運営や戦略を聞き理解が一番早いのはダイスだった。


 要するにこの3人はエイト国の次期王政のトップ3ということだ。

カインでさえ王弟ということで立場上は上だが将来の実権としては2人の方が持つことになる。

カインにとってのニルとリモのような存在なのだがダイスとハイスよりニルとリモのほうがいいよなあと思うのは俺が王政に関わる気がないからだ。


 その3人とカインたち3人、それに俺での話し合い、俺だけ場違い感も甚だしいが呼ばれた側なので仕方がない。

リヴディ王子たち3人による情報と作戦の計画は以前聞いた情報とも被るがこういうものだった。


 この町から馬車で3日ほど南に向かった場所にあるこの国の貴族のタングスが治めているタングス領の東側に位置する地点。

さらに東はシックス国との国境である川が流れているのだが雨季の雨の量でも決壊しないほどの広さと深さで直接シックス国に向かうことは不可能だ。

そこの川の手前に城と言っていいほどの大きな砦が立てられてある。

タングス領には他にいくつかの小さな村や集落がありそこからの税収や農作物が届けられ砦が維持されている。

国家横断道路は戦争には使用できないのでシックス国と戦争する場合にはここから南側になりそこは浅瀬で橋もかけられている。

なのでシックス国との戦争の時には部隊を送り出す中継地点や物資の保存場所になることもある砦だ。

その砦にエイト国の第2王子が匿われている。


 匿っているのは領主のタングス侯爵。

タングス自身の部下に加えて炎帝と炎帝が雇った傭兵とで300人ほどがもう半年ほどそこに留まっているという。

目的はエイト国の現国王の病死を待つこと。

あと1年は持たないと言われているので長くてもその期間は匿うつもりだろうと予想はつく。


 『王の器』がない状態で国王が崩御するとどうなるか?

この場合王太子である第1王子が次の王になる。

そこで周りの国に向かって『王の器』を受け継いだことを掲げるのが慣わしなのだがそれができなくなる。

王によって国は治められ進んでいくのだが周りからは正式には認められていないことになるのだ。


 だがそこに『王の器』を手にした第2王子が現れるとする。

周りの国は第2王子を次期王子と認めるだろう。

それほど『王の器』の存在は重い。

王の存続は血統ではなく『王の器』を所有するかどうかなのだ。


 さらにいうともし一般人が『王の器』を手にしたとする。

さすがにすんなりと王になれるわけはない。

だが例えばシックス国では王自身が『王になりたくば実力で俺を倒せ』と公言している。

暗殺とかではなく実力で王を倒したとなれば周りが認めて実際に王になれるだろう。

エイト国ではそこまであからさまではない。

だが王が悪政をしておりそこを一般人が打倒し『王の器』を手に入れたら民衆はそれを認め周りの国も認めるだろう。

一般人でもそれぐらいの説得力のあるものなのだ、第2王子が持っていたらさらにというわけだ。


 タングス侯爵の目的もそこだと思われる。

エイト国の王が崩御したときに第2王子を王にして協力者として権力を得る。

もしくは第1王子が王になったあとに殺害して第2王子を王にする。

タングス侯爵自身が王になるという目的もあるかもしれないがそれはさらに民衆に理解を得なければ他国の王になるのはさすがに難しいだろう。

もしそれが目的なら第2王子を王にしてタングス侯爵が亡命してエイト国の実権を握った後のことになる。


 これらの事情によって目的は封印を解くアイテムである『炎の杖』の奪取が第1。

これがあれば封印をかけた本人がいなくても解くことができるだろう。

その時点でリヴディ王子が『王の器』を持って即位するので問題は無くなる。

それが無理なら第2王子の身柄の確保が第2の目的。

生きて連れて帰れば『炎の杖』がなくても封印は解けるはず。

どちらもダメなら最悪第2王子の殺害、第1王子が王になった後に殺害されたとしても第2王子を王にしないため。

第2王子の『封印』が固有魔法であるため死んだ後に封印がどうなるのかわからないのが不安なところ。

できれば1か2を達成したい。


 タングスの砦は通常のやり方ではほぼ難攻不落だ。

砦なだけはあって町のように町民がいるわけではなく砦の中にいるのは兵士だけだ。

近くの村などからの食料の運搬も砦に入る前に兵士たちが運搬人も食料自体も検品している。

長期間ならほころびを待つこともできるが1年の期限付きで油断しないように言いつけられてては待つこともできない。

戦争時以外はほぼ使われていない砦を第2王子を匿うだけのために利用しているのだ。

タングス侯爵自身もタングス領の別の町にある自宅から移動して砦で生活している。

少人数の単独行動で300人を相手にするのは難しい、できるのはSランク以上の人材だろうがそれも10傑の炎帝がいることでさらに困難になっている。

炎帝を抑えるのと同時に300人を相手にしなければならないのだ。


 このことにより目的は誘拐か暗殺になる。

インビジブルモンキーの毛皮が手に入ったことにより可能性が上がった。

さらにほぼ不可能だと思われていた炎帝からの『炎の杖』の奪取も俺のマジックバッグがあることにより可能性も出てきた。

第2王子がタングスの砦にいることがわかったときは第1の案も第2の案もほぼ不可能で暗殺者をどうにかして紛れ込ませるぐらいしか方法がなかったのだ。


 「ティル殿の協力、本当に感謝している」


 次の王様にそんなことを言われたら緊張してしまう。「こっ、こちらこそ」などと芸のない返事を返すしかできなかった。


 「しかもインビジブルモンキーの毛皮もティルがゲットしたようなもんや、ほんまに助かるわ」


 リモがおどけたように素の口調で話すのは緊張を解くためだろう。


 「まさにその通りだ。相手はセブン国でもやり手と呼ばれるタングス候、それが炎帝と組んだらこちらには手がないところだった」


 「まさに、タングス候は政略に長けると言われている。その手がエイト国まで伸びてきてはたまらん」


 「ティル殿、この計画が成功した暁には我々のできるだけのお礼はするつもりだ」


 次期王様どころかその両腕にまでそんなことを言われると少しは頑張ろうという気になってくる。

偉そうに命令するだけならカインに頼まれただけの協力を淡々とするつもりだったのだがそうではなさそうだ。

今回食事をともにしただけだが俺個人の評価は上がった。


 最初は実行役に第1王子自らが行くと言ったのだが側近の2人によりもちろん却下。

どうやら武勇にもかなりの自信があるそうだが炎帝のいるところにこちらのボスを向かわせるのは無謀というほかないだろう。

俺が行くことはマジックバッグがあることで確定。

インビジブルモンキーの毛皮はあと3枚だが第2王子を捕らえたときに隠すための毛皮がいるので実行役はあと2人。

第1王子の側近2人は第1王子が行かないのならそばを離れることはない。

カイン、ニル、リモの中からの人選だ。


 第3王子のカインが実行役になることはないとニルとリモに決まりかけたのだがカインが自分だけ安全なところにいることを許さなかった。

もちろんニルとリモもカインが危険なことをすることに反対する。

うん、俺1人だけ行くことが決まってるのだがそれはいいのか?という気持ちにもなるが王子と俺とで危険なことをするのに反対する人間の数が違うのは納得はできる。

しかも本人が行きたくないではなく行きたいと言っているのだから嫌な気持ちにはならない。


 ここで覚悟を決めて『転移』のことを話す。

マジックバッグの口が小さいのにそれ以上の物が入る理由、そして大きめの魔石があれば人間程度の大きさなら『転移』で移動できること。

なので4人で砦に向かって第2王子を拉致したら5人で『転移』で戻れること。

やばいと思っても4人で逃げることぐらいはできると思うということ。

6人は信じられないと言った感じで聞いている。


 仕方がないので実演してみる。

『転移』を付与して同期している2個の魔石を取り出す。

数字は彫っておらずフリーで持っている魔石だ。

片方を部屋に置いてニルとカインと一緒に隠れ家の外に出る。

50mほどはなれたところで魔石を置き魔力を流しゲートを作る。

そこをニルと2人で通ったら元の隠れ家の中に現れる。

さらに俺だけ再びゲートを作ってカインの元に戻る。

今度はカインも連れて隠れ家に戻る。


 リヴディ王子たちどころかカインたちもかなり驚いていた。

この魔法でかなり有利になる。

他言無用でお願いしますと言ったところもちろん了承してくれたし誓約魔法で誓ってもいいとまで言ってくれた。

一応こちらも信用して話しているわけなのでそこまでしなくてもいいと言ったのだがここまでの魔法だとこういうのはきっちりとしておいた方がいいと逆に説得された。


 誓約魔法とは聖属性の魔法でレベルの高いものだと口にしただけで命を落とすものもあるらしい。

さすがに王子たちにそんな誓約をするわけにはいかず破れば罰金ということに落ち着いた。


 他にも作戦に必要なことを説明してもらった。 

自分なりにタングスの砦の情報を整理してみる。

砦から川の方向以外の3方向にそれぞれ大きめの3つの村がある。

これらの村から砦に食料や日常品などが運ばれる。

当然村は監視されている。

最初に砦のことを聞いたときにはこの村に潜伏して砦に侵入するつもりだったのだがそれができない理由が監視されていること以外にもあった。

砦から東側の川方向以外、3方向の周囲10㎞が全くの平原なのだ。

人工的にだろう小高い丘の上にある砦の周りは壁で囲まれている。

入り口は東西南北の4カ所、東側は川なので基本閉ざされている。

残りの3方向がそれぞれ村につながる道ができている。


 道と言っても草や土が踏みしめられ少し歩きやすくなった程度のものだ。

砦から10㎞、大きな岩や木など視界を遮るものは一切ない。

これがタングスと炎帝の必勝の策だった。

伏兵を隠す場所がない、陣形も丸見え、防御壁と兵士で時間を稼いでいる間に炎帝の炎の魔法で高所から狙い放題なのだ。


 これがもし大軍を送り込める戦争などなら攻略は簡単だ。

3つの村を占拠し砦を取り囲んで兵糧攻めをすれば砦側には籠城することはできなくなる。

砦から出てくれば城壁も高所からの有利な攻撃もなくただの300名の兵士となる。

その300名の兵士だけならその場で決着はついたようなものだ。

炎帝がいるのでそこはさらに対処がいるだろうが平地で策を弄することもできないという地形ではさすがに炎帝といえど数の前に押しつぶされるだろう。

むしろこの状況でも炎帝に対する対処法がいるということが10傑を相手にするということの困難さを表している。

今回は戦争じゃない。

他国での少人数行動、時間の制限、というこちら側の縛りがある以上タングスの砦は難攻不落でタングス側ももちろんそれを知っての砦での時間稼ぎなのだ。


 俺たちの作戦が決まる。

作戦と言ってもできるだけ相手にさとられないように忍び込み第2王子の身柄か炎の杖の奪取というのは実行役がその場で判断して行動するしかないのでそれ以前の話だ。

隠れ家から馬車で3日で大きめの町に着く、そこまでは馬車が通れるように道は整備されている。

そこからさらに馬車では通れない道を徒歩で丸1日ほど進んだ先に3つの村の内の西側の1つがありその10㎞先にその砦はある。

第1王子一行には大きな町で待っていてもらうように提案したのだが任せきりにするのは申し訳ないと近くまで同行することになった。

何とか逃げ帰って来たという状態なら助けにもなれると言われると拒否のしようもない。


 大きめの町から一日遅れで第1王子は出発することになった。

砦付近の村は砦に食料を運ぶための拠点になっており警戒が厳しい。

その村に泊まるわけにはいかないのはもちろんあまり多くの人数でその村を目指すことも避けたいとのことでだ。

もっとも俺としては馬車での泊まりはまだしもその先の徒歩での野営はしたくないのでできれば『別荘』を知っているカインたち3人とだけの行動の方がよかったので助かった。



 俺とカインたち3人は大きな町を出た。

村の手前で道から外れ野営をする。

野営の道具は第1王子のものだ。

さすがに冒険者用の物とは違い高級品だが冒険者が普段使いできないほどにはかさばる。

俺のマジックバッグの容量が大きいことから預かることになったがこれを使って野営をしてそのまま残しておきその場所を第1王子の待機場所にすることになっている。

俺のマジックバッグから野営道具を取り出せば『炎の杖』を奪ったときに収納する容量は間違いなく空いているはずとも言われたが野営道具程度は俺のマジックバッグからすればほぼないような物だとは言わないでおいた。


 野営の場所は道から2㎞ほど外れた森の中の崖の下。

生い茂る草むらをかき分けると小さな洞穴の入り口があり外からは一見しただけでは見えないようになっているが中は5m四方ほどの広さがある。

もちろんこんな都合のいい洞穴が元からあったわけではない。

見つかりにくい場所を探し『転移』で土を移動させて掘ったのだ。

第1王子が何日か過ごす予定なのだ、できるだけばれない方がいい。


 ニルとリモが野営の準備をしている間に俺は洞穴の奥に『転移』の片方の魔石を設置する。

逃げるときはここに来る予定だ。

準備を終えると俺たちは『転移』でいつもの大蜘蛛に出会った魔の森の奥に行き『別荘』を取り出して中に入る。

カインたちは驚いてはいるが文句も言わずに中に入った。


 「ティルがここまで大規模な『転移』まで使えるなんてな」


 「あ~、うん、言ってなくてごめん」


 「いや、責めているわけではないんだ、むしろむやみに言わない方がいいしな。今俺たちに言ってくれたことが以前より信用してもらったと思えて嬉しいぐらいだ」


 「そうね、それよりここって魔の森のかなり奥よね?外にいたときの魔素の濃度が今まで経験したことがないぐらいだったのだけど?」


 「俺もよくわかんないんだよ。ほら、前に魔の森を探検してたことがあるって言ってたよね?あれが実は『転移』も使って毎日少しずつ奥に進んで行ってたんだよ。森の奥に向かって毎日少しずつ進んでたから距離とかはわからないんだ。前言ってたドラゴンと出会ったのはもっと奥だけどこの辺りでもたまにドラゴンを見ることはあるよ」


 「少なくともドラゴンの生息域には入っているということよね。しかも子供の時でしょ?よくこの魔素の濃度に耐えられたわね?慣れてない特に子どもは魔素を受け入れる器が発達仕切ってないから長くいたら危険なんだけど。何歳ぐらいの時なの?」


 「う~ん、そこまではなかったけど。5歳ぐらいから10歳ぐらいまでかな。あ、長くても毎日3時間ぐらいで家に帰ってたからかも?」


 「それよ!1日3時間ほどできるだけ高濃度の魔素を浴びて残りの時間で体に慣らす。そうすると普通に過ごすより体内の魔力量が飛躍的に伸びるって研究結果があるの」


 「あぁ、昔から子供の頃に魔素を浴びてると魔力量が上がるって言われてたけどそれを証明したやつだよな。特に5歳~10歳の魔力の器が形成されている時がベストだって」


 「なんで5歳~10歳なんだろう?それにその方法が証明されたっていうことはこの先みんなそうしたら魔力量の多い人間ばかりになるってこと?」


 リモがそれなりに詳しいそうなので説明を受けた。

なんでも5歳になるまでは魔力の器と呼ばれる体内に魔力を蓄えておくモノができていないそうだ。

魔力の器とは実際にある臓器ではなく体中で魔力を蓄えておくための器とされている。

なので5歳ごろまでは魔法を使える人間はあまりいない。

その魔力の器が5歳ごろにできはじめてから10歳ごろまで成長する。

この時期に濃い魔素を浴びると魔力の器が大きく育つのだ。

ただし長い間浴びすぎると魔力の器自体が壊れてしまうこともあるので注意が必要だ。

このバランスが1日3時間魔素を浴び残りの時間で身体を慣らすのがベスト、魔素は濃ければ濃い方が伸び率がいいと発表された。


 「魔力の器のことはこんな感じ、わかった?」


 「そやからこの先凄い魔力量の人間が増えるわけちゃうで?」


 「なんで?方法はわかったのに?」


 「元々小さい頃に魔素を浴びるのは効果があるのは知られてたことやからやる奴はもうやってるんや。それを証明したってだけで。うちもカインもリモも家の方針でそれぐらいはやってるで。だから何もしてない人よりは魔力量は多いんやで」


 「そうね、私は討伐してすぐの魔物が食事として出てきたり捉えた魔物がいたら近くに寄ったり魔素の多い所にはできるだけ行くように言われてたわ」


 「俺は城に魔力スポットがあって1日に数回そこに行くのは日課だったよ」


 「カインは王族やから住んでるところに魔力スポットがあるなんて特別やけどな、だいたいこんな感じで知ってるもんはやってることや。ただし討伐した後の魔物とかはやらんよりはマシってぐらいや。魔力スポットは場所によって差はあるけどもちろん魔の森外縁部から少し入ったぐらいの魔力しかあらへん」


 「じゃあ証明されたんだからもっと強い魔力の所に行くようになる、とか?」


 「そりゃあ行けるんならな。どうやって行く?魔の森外縁部でも冒険者が死ぬこともある場所や。10歳未満で行って死ぬ確率のほうが高いやろな。そんでずっと浴びるのもまずいんやで?3時間だけ濃い魔素を浴びるっていうのがありえへんやろ」


 魔の森は奥に行くほど魔素が濃くなる。

奥に行くほど魔物は強くなる。

魔素の浴びすぎは魔力の器ができあがっていないと危険。

どう考えても無理ゲーだ、俺みたいな『転移』がなければ。

偶然とはいえ魔力量を増やす特訓のようなものをやっていたことになる。

転生したときのボーナスかと思っていたがどうやら違ったようだ。


 「ティルの魔力量の多さはそれが原因ね、この辺りの魔素を浴びてたのなら納得だわ」


 「でも毎日3時間ほどの冒険っていうのも偶然なんやろ?危ないところやで、魔力の器が壊れてたかもしれんのやで」


 「そうだな、いくら魔素の強い場所と言ってもここまで強いことは想定してないだろうし、あぁ、外縁部から奥に向かって5年なら徐々に魔素も強くなっていったのかもしれないな」


 「完全に運やけどな」


 「一応自分では危ないことは避けてきたつもりだったんだけどな」


 「単独でドラゴンの生息域に入るような奴にそんな台詞を言う資格はない!」


 カインの台詞に他の2人も頷く。

どうやら不利なようだ。

マジックバッグからトランプを出して聞いてみる。


 「えっと、トランプでもする?」


 「「「しない!!」」」


 「明日の朝に前回みたいなことになったら王子を名乗ってる資格はないからな」


 元々俺を責めたいわけじゃないのだろう、危なかったと心配してくれているのだ。

あえて話題を変えたことに乗ってくれたのかもしれない。

ただニルがトランプから最後まで目を離さなかったことに気づいてしまった。

どうやら1番危ないのは彼女かもしれない。





 







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