第3話 インビジブルモンキー
部屋に戻って布団に入ったときはなぜか逆に興奮して眠れないかもと思ったりもしたがいつの間にか眠りに落ちて熟睡していたようだ。
目が覚めると身体は少しなまっている気もするが頭が軽い。
友達と夜通しカードゲームで遊ぶということにテンションが上がっておかしくなっていたのかもしれない。
トランプのことしか考えられなくなっていたのが思考能力が戻ってきた感じがする。
歯を磨き簡単に身だしなみを整えて部屋を出た。
身だしなみを整えること自体が何日かぶりだったのだが。
広間に行くと『ホワイトナイト』の3人はすでに揃っていたが全員長く待っていたわけではなく少し前に揃ったところのようだ。
カインも含めパジャマ代わりの服は変わっていないが女性たちはあぐらをかいているわけでもなく髪も縛り化粧もしてきちんとした身なりになっている。
カインもひげを剃りイケメンを取り戻して全員体力と思考力を取り戻したようだ。
「いやぁ、怖いな、賭け事って」
「本当に、国で広めようなんて馬鹿なこと言ったわ。そんなことしたらしたら国が潰れるかもしれないわね」
「ほんまや、あれはあかん。うちは2度と賭け事はせぇへん」
さすがにもう言葉遣いは戻さないようだがやたらと反省しているようだ。
「じゃあトランプも広めない方がいいかな?」
「どうだろう?あの昼にやってたババ抜きとかなら大丈夫なんじゃないか?ダメなのは賭けることだろう?」
「わからないけどティルはあれを広めるつもりなの?」
「いや、自分で積極的に広めるつもりはないけど誰かが知ったら簡単に作れるかなと思ったから、あまり見せたりしない方がいいのかなと思ってさ」
「まぁ当分は孤児院でたまに遊ぶぐらいにしといたほうがええやろ」
「あと、その、ティル、すまないが賭けの負け金はちょっと待ってほしい、いや、絶対払うから。でも今この金額を払ったら借金を返すためにかなりの時間働かなくてはならない。その時間がないんだ」
カインが申し訳なさそうに手を合わせる。
けっきょく勝ったのは俺でリモとニルは少しマイナス。
カインは王都で土地付きの一軒家が買えるほどのマイナスになっていた。
そりゃあそうだ、最後は1枚100万ゼゼのチップを賭けてたのだから負けもそれぐらいにはなる。
いかに第3王子といえども賭け事で国のお金を使うわけにはいかないというのは正しいだろう。
「チャラでいいよ。元々俺だけ知ってるルールだったんだから有利なのもあったし。疲れたけどなんだかんだで楽しかったしさ。ニルとリモもそんなにたいした額じゃないからもういいよ」
「いやいや、それはダメだ。それが許されるなら誰も俺を信用しなくなる。それは避けたい」
「うちらもそうやなあ。賭けたくせに払わなかったっていう評価は信用なくすで。それにティルは最初小さな額で遊ぼうって言ってたのにテンション上がってレート上げたんはみんなや」
「私も払う。カインの負け額が多すぎるから少額に思えるけど私もリモも数ヶ月遊んで暮らせるぐらいは負けてるんだよ」
『ホワイトナイト』がいつも節約してたのは知っている。
しかもそれが3人のためではなく国のためだということも聞いた。
それを俺が提案した遊びで無駄にさせるのが申し訳ない。
色々考えた末に1つ提案した。
「じゃあ、カインに1つ貸しってことでいいかな?」
「いや、それは全然いいけど金額とそれじゃ見合ってないだろ」
「そんなことないって。だって俺は元々スラムに住むようなガキなんだよ?それが王族の人たちに貸しを作れるんだよ?金で買えるようなものじゃないって」
「しかし・・・」
「ええんちゃうか」
「リモ、でもこの金額だぞ?」
「そやけど払うもんもないやろ。どうせ当分返せん借金になるだけや。それなら言葉に甘えてカインに余裕ができたときにそれだけの額になるぐらいの借りを返したらええんちゃうか?」
「そうね、払わずにいつ返せるかわからない借金よりはその方がいいかもね」
「じゃあ3人ともそれで」
「いや、私たちは払うわよ」
「いいって、3人が節約してるのも知ってるしさ。無理に払うことないよ。2人の本性も見れたことだし楽しかったよ。あんなふうに遊ぶ友達なんて初めてだったから嬉しかったし」
ベイルやリン、ミー姉たちは友達でもあったが保護者のような気持ちもあった。
ミリアは逆に俺の保護者の気持ちもあると思う、それは今後取り除かなくてはならないが。
モースさんとランケルさんとなら遊べるかもしれないがメインはお酒を飲むことになるだろう。
あの周りも一目置くほどの2人が打ち解けてくれたのだ。
それを思えば少々の金などどうでもいい。
「あ、あれは・・・その、ふだんはあんな格好友達の前でもしないからね」
あんな格好、寝不足とハイテンションで気にしていなかったがほぼ下着姿でうろうろしていたことを思い出す。
「あ、いや、本性ってそういうことじゃなくて。それも内緒にしとくから」
「なんや、うちらのあられもない姿思い出したんか?ティルも男やなあ。あっ、もしかして貸しにしてうちらにエロいことさせようって魂胆か?」
「だっ、ダメよっ!そんなことしないわよっ!?」
「しないって!!そんなことする気は全くないって!」
焦って否定したけど本当にそんな気持ちはない。
「それなら、あんなことになったことの口止め料も含めて借りておくわ。でもエッチなことはなしだからね?」
「本当にそんな気持ちないんだって」
「そんならうちも借りにさせてもらおうかな。あ、うちはちょっとぐらいならエロいこともええよ」
「なっ!!い、いや、だからしないって!!本当に!」
「ふふっ、今ちょっと悩んだやろ?ミリアさんに言っちゃおっかなあ」
「やめて!思ってないって!」
とりあえずこれで3人に貸しということになった。
カインもそうするしかないというのはわかっているようで最後は納得してくれたようだ。
「本当に何でも言ってくれ、できる限りのことはする」
と言う言葉は嘘じゃないだろう。
もっとも立場を隠して目的のために行動する第3王子と思ったら現実問題制限が厳しいだろう。
でもその言葉が嬉しかった。
話し合いも終え町に戻る準備をする。
あのバーベキューから10日たっている。
初日に『転移』で院長に無事なことと雨宿りしてから戻ることは伝えてあるので心配していることはないと思う。
伝えたことは『転移』に繋がることなので3人には言ってないがこんな関係が続くのなら話してもいいかなと今では思っている。
「せっかくなのでちょっと奥まで探索してたとでも言うしかないだろう」
「そうやな。あとティル、例の女の子のネックレスの準備もよろしくな」
「うん、それは大丈夫。すぐに作れるから」
来たときの服装に戻って『別荘』から出る。
雨が上がるどころかあれだけ降った後なのに地面はほぼ乾いている。
昨日やんだとかでもなさそうだ。
『別荘』は洞穴に隙間がないほどギチギチにはまっておりマジックバッグに戻したときに崩落しないか気にしておくことになった。
だがマジックバッグに戻してもそんなことはなく軽く洞窟の中を覗いてみるが崩れそうな感じはしなかった。
そのときニルが奥から魔力を感じる、と言い出した。
ニルは聖属性が強く魔力関知も得意のようだ。
奥は少し空間に余裕はあったはずだ、一応確認しようと崩れ落ちるとまずいので恐る恐る奥まで進んでみる。
一番奥に行くが何もないようだがぼんやりと何かが見える。
魔力を感じたというニルがさらに詳しく調べると見えにくいだけできちんと実体があるのがわかった。
それは4体のインビジブルモンキーの死体だった。
どうやらインビジブルモンキーたちも追いかけっこのときにここに逃げ込んでいたようだ。
あの雨なのだから魔物も外にいるのは危なかったのだろう。
姿を消して洞穴の奥にいるところを俺の『別荘』で洞穴をほぼ塞いでしまった。
10m四方ほどの空間に4匹、食料はなかったはずだが恐らくはそれより酸素がなくなったのだと思う。
死んだ後に魔力がなくなり始めてぼんやりと見えるようになってきていたのだ。
ニルがその内の一体の横に座り手をかざす。
魔力を流しているのだろう、手の先からインビジブルモンキーの死体が消えていく。
「凄い、こんなに完璧なインビジブルモンキーの毛皮が手に入るなんて初めてじゃないかしら」
「ほんまやな、しかも4匹。死体が腐らんうちに早く処理せな」
話し合ったところ簡単な処理なら3人でもできるが貴重な素材なのでなるべく完璧にしたい。
ギルドには手に入れたことを知られたくないので持ち込みたくない。
何でもこれだけ大きいと上手く処理すれば体をすべて覆って移動することができる、どんなところにも侵入可能になる装備になるというから驚きだ。
もちろんそんな装備を持っているというだけで盗難や暗殺の容疑者になってもおかしくない。
なのでできるだけ他の人間には知られたくないのだ。
ということでとりあえずはマジックバッグに4体の死体を入れておく。
後で俺の屋敷の地下の解体場で働いている解体場の親方スクワードを紹介することになった。
もちろんカインたちも顔見知りではあるが屋敷の地下のことは知らない、ここまできたら話してもいいだろう。
信用できるのかどうかはドラゴンの解体を任せているが他に漏れていないという実績がある。
聞いてみるとカインたちは俺が持っているのがドラゴンの肉の塊だけじゃなく1頭丸ごとというのに驚いていたがドラゴンに比べればインビジブルモンキーははるかにランクは下だ。
一応守秘義務の契約を交わしてからお願いしたいということだ。
4頭ということもあり取り分はひとり1枚ということになった。
俺が捕まえたようなものなのに心苦しいと言うが俺だけでは魔物の知識もないのでそんな装備になることもなく魔力を感じて洞穴の奥を見に行くこともなかったのだから全然かまわない。
何よりライムのネックレスがそばに落ちておりそれを取り返せただけでよかった。
町に戻ったのは夕方だった。
インビジブルモンキーを追いかけて雨期を魔の森で過ごしたことは噂になっておりギルドや周りからは馬鹿だなあとからかわれたが皆無事だったことを喜んでくれた。
キャロにも「この地域の雨期を舐めてるからだよ」と半分お説教のような心配をされる。それとともにメサイアがいなくなってバタバタとしているがギルドの上層部の監査が入って以前ほどの差別はなくなったことなどのお礼を言ってくれた。
地下に降りるとちょうどスクワードの体が空いていたので相談したいことがあると上に来てもらう。
俺とホワイトナイトの3人とスクワードだ。
インビジブルモンキーの解体の話をすると1も2もなく受け入れてくれた。
もちろん守秘義務込みでだ。
ドラゴンの解体も楽しいがインビジブルモンキーの解体はまた別の楽しみがあるようだ。
ドラゴンほど大きいわけじゃないので地下を小さく区切った1室で行えるし知っている人数を増やしたくなければ1人ででも1ヶ月あればできるそうだ。
もちろんドラゴンの解体も手伝いつつだと言うからちゃんと休んでいるかどうか気にしておこうと思う。
それから1か月、生活は元に戻ったかのように平穏に暮らした。
薬草なとの採取、魔物の現地での処理の仕方の勉強、モースやランケルとパーティーを組み近くの狩り場で魔物を狩る。
遠出して泊まりの依頼も受けたがもちろんひとりの時にだ。
『ホワイトナイト』の3人とは依頼を受けることはなかった。
もちろんあれから話しやすくなりギルドなどで偶然出会ったら立ち話などはしている。
その話している姿などを周りが見て以前ほどの孤高ぶりがなくなり『ホワイトナイト』が他の冒険者にも話しかけられているのはいいことだろう。
3人も喜んでいるが何かあったようでそれどころではなさそうな感じで半月もするとギルドに顔を出すことはなくなった。
あれだけ仲良くなったのだがあれから一緒に食事をしたことなどはない。
初めて友達ができたと思ってそういうことにも憧れたのだが事情もあり忙しそうなのは見ててもわかるので無理強いはできない。
少し寂しさを覚えたが自分も毎日が忙しいのと何かあっても深く聞き出すのも立場上難しいので静観していた。
もちろん何かできることがあれば手伝ってあげたいとの気持ちはある。
そんな折にインビジブルモンキーの加工が終わったとスクワードから連絡があった。
カインに伝えると今日にでも取りに行くということだった。
1枚は俺のものにしてくれると言うがすぐに使い道も浮かばずマジックバッグに入れておくことになる予定だ。
その日の依頼が終わると地下の解体場に向かった。
すでに『ホワイトナイト』は来ておりインビジブルモンキーの皮のできあがりを手にしている。
普通の装備なら皮を素材にしてから装備として加工するのはドノバンたちの役目だ。
だけど今回はできるだけ皮をそのまま残したいので加工はほとんどしていない、着たあとにつなぎ合わせるボタンが外からは見えないようについただけで皮そのものと言っていいだろう。
スクワードが表の毛皮はそのままに、裏は丁寧に処理をしている。
並の解体人だと皮を傷つけ魔力が流れなかったり裏の処理中に表まで破いてしまったり破くのを恐れて裏を残しすぎてやたらと重くなったりする。
だがさすがスクワードはギリギリの厚みで毛も痛めていない、完璧な仕上がりといえる。
できるだけ広範囲にできるだけそのままに。
それが『ホワイトナイト』たちの希望で俺の分も同じ使用にしてもらった。
丁寧に剥いだ皮は大きめのコートどころかお腹の部分が開くようにできた精巧な着ぐるみ
となっている。
「ティル、見といてや」
リモが皮を被り前を閉じる。
魔力を流したのだろう姿が消え始める。
すぐに全く何も見えなくなった。
驚いていると後ろから肩を叩かれる。
振り向くと皮から半分姿を出したニルが笑っていた。
「すっげー、全然わかんないじゃん、こんなの」
「やろ?ちなみにここまで完璧なのは世界中探してもないと思うで」
「死んだ後なら回収できたりしないの?」
「それはやな・・・えっと、ほら、ニル、教えたって」
「はいはい、まずは今回手に入れたような傷のない死体がまず出にくいのよ。インビジブルモンキーは老齢になると毛が抜けていくの。なので寿命のインビジブルモンキーの毛皮は役に立たない」
「なるほど」
「若い時に死ぬのはたいてい戦って負けたから、そのときの死体によるけど死んですぐでも傷だらけね。そして何より死んでもすぐに魔力はなくならないから見えないことが多いの。」
「死体が魔力を無くすまで待たないといけないんだね」
「そう、で、『魔力があって姿が見えない』状態から『魔力がなくて姿が見える』状態になるまでに『魔力が減っていって姿が見えかけてる』っていう状態があるのよ」
「あぁ、俺たちが捕まえたときの状態か。おぼろげに見えてる感じの」
「そう、その状態には段階があるの。『まだ魔力が残っててほぼ見えない』状態から『ほぼ魔力がなくてかなり見える』状態まで」
「うん、それはわかる」
「それの『まだ魔力が残っててほぼ見えない』っていう状況の時点で他の魔物の方が見つけるのが早いのよ」
「それは何で?」
「魔物の方が魔力に敏感だから。少しでも魔力を感じたら他の魔物が餌にしに来るの。特に昆虫系の魔物は敏感ね。今回もあのとき気付かなかったら他の魔物に食べられていたと思うし」
「あ~なるほど」
「それと人間が狩りをしてインビジブルモンキーを無傷で倒す方法は確立されてないの。この毛皮がどれだけ貴重かわかった?」
戦わずに捕まえるとなると餌で釣って罠にかけることや閉じ込めて衰弱死させることなどは思いつくがストレスでも暴れて毛が抜けるらしい。
なるほど、貴重だと言われているわけだ。
「でも、その存在しないものを探してたんだよね?」
「この時期はインビジブルモンキーの繁殖時期なの。ダメ元でも意識はしておこうっていうレベルだったけどね」
それがまさか完璧な状態で手に入ったというわけだ。
「そこで、なんだけど。あとの話はカインに譲るわね」
「そうだな、俺から説明させてもらおうかな」
カインの話ではこうだった。
エイト国の第2王子が『王の器』である盾を封印して逃げたことまでは聞いた。
『封印』とは第2王子の固有魔法で魔石を使って結界を作り外からは触れない、見えない、魔力の感知もできない状態になる。
『王の器』は今の王のこれも固有の魔法『固定』で盗難防止のため動かせなくなっていたので元々の場所にあるはずなのだがそれが見えない。
なので『王の器』を掲げての戴冠式もできず所有していることを証明できないのだ。
その『王の器』の封印を解かないと第1王子が王にはなれない。
厳密には王という立場にはなれるけど他の国には認められない。
なので封印の解除がしたいわけだが解除には封印した本人が決めた解除のためのアイテムがいる。
これは第2王子が封印した時につけた解除条件だからだ。
第2王子の魔法『封印』を解くには封印解除アイテムを使うか『封印』以上の例えば『解除』の魔法をもつ者に解いてもらうしかない。
そして最近第1王子は第2王子の潜伏先を突き止めた。
どうやらそれで忙しかったようだ。
第2王子はセブン国のある貴族に匿われている。
その貴族から第2王子を奪還しなくてはならない。
その貴族の領地は辺境にあり普通に考えると侵入不可能なほど厳重な警備体制をとっている。
おまけに10傑のうちの1人、炎帝が雇われていることが確認されている。
この警備をくぐり抜けて第2王子を奪還するのは難しいと考えてた折に例のインビジブルモンキーの毛皮が手に入ったわけだ。
インビジブルモンキーの毛皮で気配を消したまま侵入し第2王子を奪還して逃げる。
それが大まかな計画だった。
だがここに来て封印解除のためのアイテムが判明した、炎帝の持つ『炎の杖』だ。
この杖は元々はドラゴンを素材としたドラゴンの杖として作られたのだが炎帝が所有し炎の魔法と組み合わせて使うことで組み込まれた魔石が強い炎属性となりさらに威力が上がってそう呼ばれるようになった。
炎帝が10傑に選ばれたのもこの『炎の杖』を手にしてからになる。
ちなみに炎帝は10傑中第5席だ。
と言っても10傑同士がそうそう直接戦うわけではなく世間の評価みたいなところはあり炎帝は対人の戦闘は強いが第1席とは直接戦って敗北したので評価を下げて第5席になっているそうだ。
ミスターパーフェクトとも呼ばれる第1席だけは10傑の中でも格上で世界一の強さだと言われている。
そんな炎帝から炎の杖を奪うのは難しいが一日中隠れて張り付いていれば手から離した隙に奪えるかもしれない。
何より大変なのは奪った後杖を持ち出す方法だ。
炎の杖は全長3mほどありインビジブルモンキーの毛皮では覆えないので隠せないのだ。
そこで俺の大容量のマジックバッグの中に入れてほしいということだった。
敵になるのは隣の国の貴族、さらにその向こうの国の第2王子、炎帝。
味方になるのは2つ隣の国の第1王子、第3王子。
成功したときはカインの国で貴族待遇もできると言うが貴族になりたくないのはカインはわかっている。
今提示できるのは俺とミリアのエイト国での居住権、獣人差別ができる限り少ない町で。
あとは普通に暮らせば一生過ごせる程度の金銭は払えるそうだ。
それにプラスしてカインの借りがカードゲームの負けたときの1から2になるとのこと。
かなりの対価なのだがこれは失敗したときのリスクも大きいからだ。
失敗して正体がバレないで逃げられたのなら俺のリスクはほぼない。
俺が疑われる証拠はないし疑われるのは第1王子とカインたちだ。
問題は正体がバレて失敗したとき。
最悪はさらに第1王子が殺されて第2王子が王になったときだ。
国1つと隣の国の貴族と10傑の1人とこの先も敵対して生きていくのはなかなか難しいだろう。
失敗したが逃げ出せたときに正体がバレたらどちらかが勝つまで敵対した相手からいつ襲撃されるかビクビクしながら過ごさないといけない。
正直に言うと悩んだのだが結局は協力することにした。
理由として第2王子が王になったら獣人差別は加速するだろうということ。
最悪この国を捨てて移住も考えているのにその行き先がないのは困るのだ。
もうひとつの理由がカインたちのことを友だちだと思っていること、できれば助けてやりたい。
最後に雑な作戦だが隠れて杖を奪って帰ってくるぐらいはできそうなこと、何より『転移』を使えば逃げるぐらいはできると思う。
そういうことでカインを助けることになった。




