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5³㎤の転移無双  作者: 清白
第3章 ホワイトナイト

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28/50

第2話 雨宿り




 入り口から下に降りるとまずはリビング。

絨毯をしきテーブルとクッションが置いている。

戸棚の中には食器やナイフにフォークなどが入っているがこれはセンスがないのを自覚しているので高級品ではないが使いやすいもの、洗いやすい形を選んで入っている。

そばの氷の魔石を使った小型の冷蔵庫の中には紅茶やコーヒー、ミルク、バターなどが入っている。

マジックバッグから出せば何も置かなくてもいいのだが様式美みたいなものなのと冷蔵庫ごとマジックバッグに入ってるので出したときに腐らせないようにと言う意味も一応ある。

キッチンとして魔石を使った簡易な水道とコンロも3つ設置して、たまにリゼにホットチョコレートを温めてやったりしている。

将来はミリアとかベイル、リンたち信用できる者しか呼ばないつもりだったし予定外にリゼを入れることにはなったが秘密にしてくれている、なので元の世界を参考に思いっきり贅沢に居心地よくしたのだ。


 そしてその奥の個室に向かって右の最初の部屋は風呂場に改造している。

部屋に入ってすぐが2畳ほどの脱衣所になっており、仕切りを作ってその先には床は岩肌だが排水口に水が向かうように削って整えた。

湯船は木で作られたものを置き水の魔石と火の魔石でお湯が出る装置でお湯を溜める、足を伸ばせるほどの広さだ。

体を洗う場所にはベンと作ったシャワー付きで排水と換気は転移の魔石で『別荘』の外へ。

こんな雨なら排水後の水の心配はいらないはずだ。

風呂場も元の世界を参考にかなり贅沢に作り込んでいる。

石けんにシャンプーにリンス、この世界では高級品だったがこれも手に入れた。

もちろんタオルにバスタオルも肌触りのいいものを用意している。

さらに脱衣所には魔石を使った洗濯機とこれも最近できた乾燥機もあるので風呂に入っている間に洗い、出てから乾かしたらちょうどいいと思う。


 次にその奥の部屋がトイレになる。

部屋や浴室の換気は自分で2つの魔石に『転移』の魔力を込めて『別荘』のすぐ外に片側の魔石を取り付けて空気を入れ換えている。

しかしトイレの排泄物は『別荘』の外にむやみに出すわけにはいかないので流した水ごと魔の森の奥の方の川に流しているのだ。

元の世界なら環境に悪いと言われるかもしれないが使用後の紙も水に溶けることを確認したし大丈夫だろう。


 その奥には個室が並ぶ。

風呂とトイレに2部屋使ったのであとはその奥と向かいの3部屋の合計4部屋。

奥にはこの『別荘』の元の持ち主の大蜘蛛が座っていた広めの部屋もあるが今のところはここは使っていない。

最初は奥を自分の部屋にしようとしたのだが貧乏性なのかネットカフェを思い出すのか狭い方が心地よく過ごせた。

なので寝泊まりするときはトイレの横の奥の右側の部屋を自分の部屋として使っている。

残りの空いている奥に向かって左側横、並びの3部屋を『ホワイトナイト』に貸し出せる。

部屋と言っても布団があるぐらいで他には何も置いていない。

布団だけは高級品だが。


 使い勝手はいいと自分では思っている。

だけど見かけはシンプルなのは調度品などを選ぶセンスがないからだ。

そのあたりはそんなに焦ってはいない。

『ホワイトナイト』の3人に一応説明をする。


 女性たちに先にお風呂に入ってもらおうとしたのだが部屋主から入るように言われたので先に入らせてもらう。

みんなずぶ濡れなので風邪を引く前に早く上がった方がいいだろう。

だけど脱衣場で一応『転移』で孤児院にこっそりと戻って院長にだけ事情を話した。

森の奥まで入ってしまったので戻れないけど雨宿りしているから心配しなくていいと。

実際に孤児院で会って帰れないと話をするのもおかしな話だが『転移』のことをホワイトナイトの3人には今のところ内緒にしておきたいのでそう説明した。

院長には他の人たちに心配しないように説明してもらう。

ライムのお守りは取り返せなかったが新しいお守りは渡せるということも。

院長に「気をつけなねぇ」との言葉をもらい、風呂場に戻って急いで体を洗って風呂から出た。


 次にカイン、カインなら女性たちに先に入らせるかと思ったがすんなりと先に入った。

そのカインが出てくるまでに着替えを用意する。

ジャージみたいな部屋着だ。

これも地味な見た目だがもちろん肌触りだけにはこだわった一品だ。

女性たちにも用意している、ジャージ型かワンピース型を見せたのだが2人ともワンピース型を選んだ。

この世界ではオーソドックスなものだ。

下着までは準備していないので今のを洗って乾かして使ってもらうことになる。


 カインが風呂から出てきたので温かいコーヒーを入れる。

女性たちは一緒に入った。

なんでも豪華な風呂を堪能したくてゆっくりつかりたいから後にしたいと希望したようだ。

ならその間に食事の準備だ。


 体が冷えるていのなら鍋にしようと思い準備をする。

カインも手伝ってくれて女性2人の長めのお風呂から出てきたときにはカインは待ちくたびれていた。


 「あ~、やっと食べれるよ」


 「申し訳ありません、こんな立派な食事で待ってもらってると思ってなかったもので」


 「大丈夫ですよ、とりあえず食べましょうか」


 話している暇があったら食べたそうな感じだったのでリモが謝ろうとするのを止めて食事にする。

お昼にバーベキューはしていたが食べ終わってだいぶたつ、お酒を飲む人はダラダラと食べていたが飲まない人は子供と遊んだり話をするかだった。

そこにサルが襲ってきて追いかけっこをしてずぶ濡れになっている。

お腹も空いてたのだろう落ち着くまでは4人ともほぼ会話なく鍋をつついた。


 「それにしても美味しいな、これ」


 「本当に美味しいです、ティルさんが作ったのですか?」


 リモはまだ一心に食べている。


 「あ、いや、例の奴隷になった母親のほうの人が料理上手くてですね、やっぱり下処理とか出汁の取り方とかが上手ですね」


 マリンさんの技術が高いのは確かだ。

だけどミー姉と同じで知りもしないものは作りようがない。

それで俺は雑な知識だが下味の付け方、出汁の取り方、うろ覚えの料理の作り方やできあがりの姿と味などをなるべく伝えた。

マリンさんは知らない料理やその料理法に興味を持っていろいろ試してくれている。

それで出来上がったいくつかのうちの1つがこの鍋の出汁なのだ。

もちろん合う具材も厳選されている。

だけど美味しいと感じるのはそれだけじゃないだろう、ニルがお腹が落ち着いたのか改まってお礼を述べる。


 「ティルさん、今回はありがとうございます。魔の森もここまで入れば普段の依頼なら野営をしてもおかしくない距離です。まさかここでお風呂に入って温かいものを食べて布団まであって魔物におびえずにゆっくりできるなんて思ってもみませんでした」


 「そうですよね、インビジブルモンキーは手に入れたい魔物の素材のひとつだったので普通なら完全に私たちのミスです。この洞穴で何とか火を起こしてずぶ濡れのまま魔物に怯えて空腹で眠れない夜を過ごす、しかも雨がやむまで何日も。生きて帰れるだけでもありがたい状況になるところでした、感謝してもしきれません」


 「そんなに気にしないでください、俺も昔魔の森をさまよい歩いてその辛さはわかってます。なので2度とこの森で野営はしないと誓ったんです」


 「それでこんなものを用意するのがティルのおかしなところだよなあ」


 「それにしても私たちも見たことがないような魔道具がいっぱいあるんですけど」


 「あ、わかる!あのシャワーって何?すごくないか?お風呂も火をおこさないでもぬるくならないのは魔石だろうけどかなり高級だろ?それにトイレ!あれはいいな!」


 トイレにはもちろんベンと頑張って作ったウォシュレットが設置されてる。

この世界でもやはり評判は上々だ。

色々と聞きたいこともあるけどここに最低3日はいないといけないし慌てる必要もない、まずはゆっくりさせてもらおうということで食事を終えた。

食事の後にチーズケーキを出してみたら女性2人はこっちの方が我慢できなくなったようで作り方を聞いてきた。

なんとなく教えたけどほぼマリンさんが仕上げたものだしケーキなどはレシピ通りに作るのが重要だとなんとなく覚えている。

詳しくは知らないと言うと後でマリンさんに作り方を教わらせてほしいからと会わせることを約束させられた。


 3つ目のチーズケーキを食べ始めたリモに質問された。

あのトランプのことだ。

どうも気になっていたらしい。

マジックバッグにしまってあったもう一組をその場に出す。


 「これ、面白そうだって思ってたんです、子供たちがやってたのは何だったっけ?ババ抜き?でしたっけ?」


 「あ、はい、あれでもいいけど他にもいくつか遊び方があるので教えましょうか?」


 「今の俺たちにちょうどいいかもな。教えてくれよ、ティル」


 「はい、どうしようかな、じゃあ『カブ』っていう遊び方を、あ、実際にお金じゃなくていいんですけどチップを掛け合うゲームなんです。聖職者が賭け事ダメだとかはないですか?」


 「大丈夫です、でもお金をかけるとなると私たちは今はお金も必要なので節約もして貯めています。大金を賭けるとかでないのでしたら」


 「大丈夫です、そうですね、とりあえずこれをみんな100枚ずつ渡します」


 マジックバッグからトランプを作ったときに出た余りの部分でできた直径1㎝ほどのチップを配る。

石に直径1㎝の穴を開けてポイズンフロッグの汗を入れて固めてから取り出して薄く切ったものでトランプほどの薄さはない。

3人とも不思議そうな目でそのチップを見る。


 「これが1枚1ゼゼにしましょう。全部負けても100ゼゼです。子供でも何とかなる額です」


 「それぐらいなら全然大丈夫です、リモが買い食い1つ我慢すればいいぐらいですね」


 「ちょっと、ニルだってついでに買ってこさせるや・・・ゴホン」


 いつもビシッとした女性たちのふとした素の表情に思わず笑みがこぼれる。


 「ティルの前でぐらいいつも通りでいいじゃんかよ」


 カインの言葉にも2人ともそんなわけにはいかないと拒絶する。

まぁ無理矢理させることではないので文句はない。


 トランプのルールを説明する。

『カブ』、『オイチョカブ』とも言われるものだがゲームの名前はどうでもいいので『カブ』と説明する。

ルールが覚えやすいし何度かやったらすぐに楽しめるだろう。

飽きたらポーカーや7並べなど他のゲームを教えればいい。

3回ほどやってみるだけでルールは把握したようでゲームを始めた。

俺にしても前の世界で友達と家でトランプして遊ぶなどという経験はなかったのでかなり楽しみでテンションは上がっている。


 気がついたら夜中になっていた。

4人とも思ったより夢中になってしまったみたいだ。

ニルなどは「これは簡単な計算の練習になるし国全体に普及したらいいのでは?」などと規模の大きな話をしている。

ちょっと小腹が空いたね、と1時間ほど前にも誰かが言ったが手を止めずにゲームを続けていた。

誰かが「今調子いいから止めたくない」と言い出すのだ。

そこでマジックバッグの中のサンドイッチを思い出す。


 「これだったら食べながらできるんじゃない?」


 素早く食べられるようにマジックボックスからサンドイッチを取り出してそれぞれの間に並べた。

マリンさんに作ってもらったものをその場でマジックバッグに入れたのでもちろんできたてだ。

中身はハンバーグサンド、カツサンドなどのガッツリ系からベーコンレタスサンドや卵サンドなどの定番に生クリームとフルーツを使ったデザート系やホットサンドまで色々とある。

マリンさんにできるだけ多く作り置いておきたいから大量に作って欲しいと注文するとひとりでは1ヶ月かけても食べきれないほどの量ができあがったので食べてもらって少し消費してもらおう。

ずっとマジックバッグに入れててもいいのだが出し惜しみすることもないしまた作ってもらえばいい。

元々サンドイッチはカードゲームをしながら食べるのに作られたものだったはずだ。


 ゲームを続けながらも色々な会話をする。

『ホワイトナイト』が他の国から来たのはある目的があること、そのうちの1つがインビジブルモンキーの毛皮だったがまさか生きているインビジブルモンキーに遭遇するとは思っていなかったこと、大容量のマジックバッグもだがこれは作れる人がいるという噂を聞いていたらしい。

他にもいくつかの話をしているが目的自体の話はわからない、俺に協力して欲しいがどこまで話していいのかわからないといったところか。

そんな3人がサンドイッチを食べているとカインが咳き込んだ。

辛子代わりの香草が苦手だったのだろうか?

そう思ってカインを見ると手に持っていたのはステーキサンドだった。


 「これ、まさか・・・」


 忘れてた、ドラゴンの肉もサンドイッチにしたんだった。

孤児院で食べさせたときもわかったのは院長だけだったし食べたことのない者が何の肉かわかるはずもない。

そう思ってあまり気にしてなかったこともあるが何よりやっぱり美味しいのだ。

カインはどうやら食べたことがあるようだ。

ここまで少しだが一緒にいていい奴で信用してもいいかなと思っていることもあり素直に肯定した。


 「あ~、うん、想像通りだと思う」


 「やっぱりドラゴンの肉かよ、俺も数回食べたことあるだけだって、それがこの分厚さでこの量・・・」


 「「ドラゴン!?」」


 女性2人の声がハモる。


 「どういうことなの?まさかこんなところにドラゴンの肉があるなんて、各国の王族とか上位貴族とかしか食べたことないって聞いてるのに」


 「美味しいなと思っていっぱい食べちゃったんだけど、え?マジでドラゴン?ほんとに?」


 さすがの2人も素が出るようなもののようだ。

しかし王族や上位貴族しか食べたことがないとニルが言っているのにカインは数回食べたことがあるらしい。

これはカインがそういう立場にいるということだろうか?

追求するのもな、と何も言わずに次のゲームに移ろうとしたがカインが自分からバラした。


 「ここまできて隠しててもしかたがないよな。一応俺、エイト国の第3王子なんだよ」


 「王子様?本物?」


 まるで王子様だ、カインを見てそういう印象を持った女性たちの感想を何度も聞いた。

それがまさか本物だったとは。


 「カイン様・・・」


 「大丈夫だって、2人もだいたいわかってるだろ。ティルに嘘をつくより仲間になってもらった方が絶対にいい」


 「それはなんとなくわかりますが・・・」


 「ちなみにこの2人はお目付役みたいなものだけど幼なじみでもあるんだよね。普段は普通に会話してるけど王族に馴れ馴れしすぎるみたいな批判を浴びて今頑張ってるところで距離を置いてるように感じたらゴメンね」


 「えっと、俺、いや、私はどうしたら、カイン、様?」


 「やめてくれよ、仲良くなれると思ってバラしたのに。それに第1王子が次期王位につくのがほぼ決まってるから俺はそんなにたいしたものじゃないんだよ」


 国の内情まで聞いてしまった。

なんでも今の王が病に伏せって第1王子が即位する準備をしていた。

ところが納得がいかない第2王子が即位の儀式に必要な『王の器』を封印した上にここの隣の国セブン国に逃げ込んだ。

第1王子の部下は追いかけたがまだ捕まっていない、この国に逃げ込んだというあまり信憑性のない噂も出てきたのでカインたちがここに来たという。

それ以上に信憑性の高い噂としてセブン国の上位貴族にかくまわれているという噂もありそっちが本命だ。

他国の上位貴族にかくまわれているのを何とかするための魔道具も探していていくつかの候補があるがそのうちの1つがインビジブルモンキーの毛皮であり大容量のマジックバッグでもあったという。

特にインビジブルモンキーの毛皮は発見は難しいのがわかっていてあわよくば見つけたい程度だったものが実際に目の前に現れて深追いしすぎたそうだ。


 「全部じゃないけどだいたいこんなものかな」


 「えっと、何だが王位のゴタゴタとか現実味が全くないんだけど、けっきょく『王の器』って何?」


 「あれ?それはみんな知ってるものと思ってたよ。前に少し説明したけどこの世界の国の王はみんな『王の器』を持ってるんだよ。それがないと王とは認められない。俺たちの国の『王の器』は盾だね、この国の『王の器』は槍」


 「へえ、そうなんだ、そう言えば親方にも国宝かドラゴンの槍だとか聞いた覚えがある」


 「それは別だね、むしろ『王の器』が槍だったから手に入れたドラゴンの素材を槍にしたんだと思う」


 「そりゃあそうか、ドラゴンの素材を手に入れたのは『王の器』に比べればごく最近と言うことになるし。国の威厳みたいなものか」


 「ここの国の王は元冒険者のSSSランクもしてたからね。王になってから10傑からは外れたけど実力は今も遜色ないんじゃないかと言われている。『王になりたければ俺を倒して証を奪ってみろ』とか言ってる人物だからね」


 「そんなこと言って暗殺とか盗難とかにあったらどうするの?それに強いだけのヤバい人物に負けたりすることもあるんじゃない?」


 「槍と言っても普段から見せている訳じゃないよ。魔法を使ってでも隠してる王が多いんじゃないかな。王自身に認められたら1対1で『王の器』を賭けて戦おうと言ってるんだ。まぁその権利は実質は王子ぐらいにしか与えられないと思うけど」


 「それだと豪語してる意味がないような・・・」


 「実際に強いのは確かだよ。暗殺しようとして返り討ちにされた者も相当数にのぼるみたいだし実際に挑まれて戦ったことがあるはず、もちろん王が変わってないんだから勝ったというか圧勝だったみたい。負けた者があんな化け物に勝てるわけがないと言ってたという噂もある」


 「う~ん、まぁ俺には関係ないからその辺はいいや。あ、あとカインが王子様でエイト国には獣人差別が少ないんだったらカインの国に住ませてもらったり?」


 「このまままっとうに第1王子が即位したら王都に家ぐらいは紹介できるけども、でもティルならそれぐらいのお金はあるだろ?そりゃある程度優遇はできるけど権力での優遇を求めてるとは思えないし」


 「う~ん、ミリアが笑って暮らせたらそれでいいんだけど。この国では難しいかなって」


 「そうかもね、俺もここに来て思ったけど想像以上に獣人差別がひどいよ。あと獣人って生まれた国からあまり出たがらないって聞くからそのあたりも考えてみないとだね」


 「あ、そうなの?旅をするには知識も技術もない、みたいなことは聞いたんだけど」


 「国を移る獣人もいるから一概には言えないけどね、あ、ティルが協力してくれて第1王子が感謝するほどの活躍を見せたら貴族に取り立ててくれるかもしれないよ?」


 「貴族になんてなりたくもないよ!」


 「ちょっ!俺にそんなこと言うの!?」


 王族なんて貴族の親分みたいなものだろう。

本当は俺がこんなことを言ってはダメなのかもしれないが3人とも笑ってくれた。

カインが王様になってる国でなら楽しく暮らせそうな気もする。


 「協力して欲しいとは思ってるけどすぐに答えを出せとか何かしろとか命令する気もないよ。ゆっくり考えてくれたらいいから。それより続きをしよっか、俺負けてるんだよな」


 「じゃあそろそろみんな慣れてきただろうからレート上げてみる?今までの勝ち負けは別に書いておいて今からこのチップは1枚2ゼゼってことで」


 「それでも全部負けても屋台の串数本ってとこか。了解、そうしよっか」


 「まぁそれぐらいならいいんじゃないですか?」


 「そうですね、私は勝ってますけどこれ以上勝てるってことですね」


 微々たるものだがレートを上げた。

一応ルールの追加として『レートを上げるのは全員の許諾がいる』も追加した。


 結局初日は夜中遅くまでトランプで遊んでいた。

最低でも3日は雨がやまないはずなので遅くまで寝ていても何の支障もない。

昼前に起きたリモが入り口まで行って外を覗く。


 「すごい雨ですね、やみそうにもないですよ」


 「仕方ないな、時間はたっぷりあるんだからまた『カブ』するか。昨日負けたままなんだよな、でもわかってきた気がする。今日は勝てると思うよ、レート上げる?」


 「あれ?昨日もそう言ってましたよね?もっと負けたいのなら上げてもいいですよ」


 ニルは今1番勝っているので余裕のようだ。

ちなみに俺が僅差の2位でプラス、リモは3位で少しマイナスと言ったところだ。

全員がはまり始めているのはわかっている。

雨の間することができてよかったぐらいだ。

昼と夜もリモは外を見に行ったがさすがにみんなが家から出ないと言われているほどの雨季だ、少し先も雨で見えないままのようだった。




 「どう今日は?」


 「全然、やむ気配もないよ」


 「そっか、じゃあ続きしよっか。私ちょっと負けが込んできてるんだけどレート上げようよ、ね、カインも負けてるしいいよね?」


 「そうだな、なんだかんだで結局ティルか勝ってるんだよなあ。ティル、いいよな?」


 「いいよ、どうせ勝つんだから」


 3日たつが雨はやみそうにない。

昨日の朝見たときと雨の勢いは変わっていないようだ。

1日ほぼトランプをしている。

食事の時間もほぼ毎回サンドイッチになった。お腹の空く速度はみんな違うのでマジックバッグから出しておいてお腹が空いたら勝手に食べる形式にした。

それだと誰かが食事をしていてもゲームを中断しなくていいからだ。

レートが上がるのでさらに気合いを入れないと、と思い両手で頬を叩いてから子のカードを並べ始めた。






 「とんがれとんがれとんがれ・・・よっしゃ、とんがった!!親のクッピンで総取りや!!ほら、全員チップよこさんかい!」


 「うわっ!ここで来るの!?リモあなたいかさまじゃないの?」


 「証拠もなく疑う前に自分の腕を疑ったらええんちゃうか?ほら、親続けんで!どこに張るんや?」


 「ちょっと待ってくれ!レートを上げようぜ!やっとわかってきたんだしこのままじゃ借りを返せない。いいだろ?なあ、ティルも」


 「俺はいいよ、2人は?」


 「また負け増やすだけやで!それでもええんやったらうちはええで!」


 「私も、カインには負けないと思うし。ティルに追いつくために上げていいよ」


 さらに日が経つとみんな敬語ではなくなった。

こっちの方がお互いの素が見える感じで仲良くなった気がしてよかったと思う。

リモは出身地が地方のようで素の言葉は訛りがあった、どうやら丁寧な話し方はこの訛りを隠すためというのもあったようだ。

ニルも口調が砕けた上にきっちりとと言うか凜としていた雰囲気も砕けたようだ。

今はあぐらをかいていてワンピースの部屋着はまくれ上がっている。

もちろん下着のままということはなく楽な下にはくものが欲しいと言ったので麻の短パンのようなものははいている。

最初は焦ったがそのうちリモも同じような格好になったし隠すそぶりなども一切ないのでこっちも意識することはなくなった。

カインは無精ひげが生えているがそれでもイケメンは劣化していない。

どうやら賭け事には向いていないのかもしれない、1番熱くなって勝つときは小さく負けるときは大きいというときが多い。


 「よしっ!じゃあそろそろ取り戻すぞ、倍プッシュでよろしく!」


 「オッケー、じゃあこれでチップ1枚200万ゼゼね。まずはリモの親落とそっか、ほら、寝てたら勝手にめくるからね!」


 「あかん!寝てへん!まだまだ親続けんで!でもちょっとまってぇや、顔洗ってくるわ」


 「さっさと戻れよ、時間がもったいないだろ」


 「わかってるわかってる」


 フラフラとリモが顔を洗いに行く、と思ったら入り口に向かった。


 「そっちじゃないよ!寝ぼけてんの?顔洗ってさっさと戻ってきなさいよ!」


 ニルの言葉にも入口で立ちつくしたままのリモ。

10秒もたってないだろうがゲームの続きを待てないカインが声をかけようとしたときリモがこっちを向いた。


 「あかーん!!!」


 「何言ってんだよ、あかんのはリモだろ?さっさと顔洗ってこいよ」


 「ちゃうねん!お前ら、今何日や?ここに閉じこもって何日になる?雨降ってるの確認したんいつや?」


 「あぁ?3日、ぐらいか?個室で2回ぐらい寝たよな?雨は朝にリモが確認したんじゃねえか?」


 「もうめっちゃ晴れてる、晴天や、ピーカンや、ドッピーカンや!ティル、カレンダーとかないんか?今日の日にちわかるやつや」


 「えっと、あるけど・・・たしか魔道具がその辺に」


 棚にある魔道具のカレンダーを取り出してくる。


 「そんなわけないだろ、俺に逆転されるのが怖くて逃げようとしてるんじゃないのか?」


 「えっと、今日は雨の月の17日、ここに来たのが雨の月の8日だから・・・えっ?9日もたってる?」


 「はっ?嘘だろ?そんなわけないだろ、俺たちはずっとここでトランプしてただけだぜ?何でそんなにたってんだよ?」


 「いや、考えてみいや、もうずっと風呂も入らず食事は腹が減ったらティルが出したサンドイッチ食ってただけや。カインは自分のヒゲ顔見てみいな。ニルも何日風呂も入ってないんや?うちも人のこと言えんけどな」


 「うおっ、なんだこのヒゲ!待て待て、マジかよ」


 「えっ、お風呂入ってないのに気持ち悪くならないなんてあり得ないんだけど、意識したら体ベタベタしてるかも」


 「あかん、マジでやばいで。オマケにここ何日かほとんど寝とらん。判断力もボロボロのはずや」


 「さっさと町に戻ろう!」


 「いや、このまま戻ってもどないもなれへん、ちょっと落ち着け」


 お互いをよく見ると目はくぼんでクマができており髪はボサボサで不健康そうな顔、腹も出てきている気もする。

9日間動かずにほぼ寝ずに食べてトランプをしてただけの結果かこれだ。

とにかく1度風呂に入って寝ることにした。

今回は女性たちもゆっくり風呂を堪能するというわけにはいかなかったが何度も髪も体も洗ったという。


 起きて体力を回復させたら集合ということにしてそれぞれの個室に向かった。




 

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