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5³㎤の転移無双  作者: 清白
第2章 冒険者

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番外編3 リゼ




 リゼ


 私の家は食堂をしている。

パパは料理が上手でできあがったものをママが運ぶ。

本当はママも料理が上手なんだけどお客さんは男の人が多いのでママが運んだ方が喜ぶんだそうだ。

ママは美人だからそれはそうだろうなと思う。

それにパパは顔が怖いって言われることが多いからかもしれない。

実際のパパは怒った所なんて見たことはないし私のことを甘やかしすぎるってママに怒られるぐらい優しいのに。

1度なんてパパがママにプレゼントした高い化粧品を私がこっそり使ったのがママにばれて怒られたのだけどパパがかばってくれた。

「大きくなったらリゼにも買ってあげるから。リゼはまだそんなことしなくてもじゅうぶん可愛いよ。でもママみたいに綺麗になりたかったんだよな?でも勝手に使ったことはごめんなさいしような」

そう言ってくれてママに一緒に謝ってくれた。

「もう、そんなこと言われたら怒れないじゃない」

って言ってママも許してくれた。


 そんなパパとママの食堂は小さな町にしては評判がいい。

パパは強くて自分で狩った猪の魔物を使った料理を作る、特にそれが有名だ。

遠くの町からわざわざパパの料理を食べに来るお客さんもいるほどだ。

私もお手伝いで料理を運んだりもする。

お客さんも私が運んだらありがとうって頭をなでてくれたりしたし大きくなったらママに似て美人になるだろうねと言われて嬉しかったりした。


 だけど私が7歳になった日に剣を持った怖い人が来てパパを連れて行った。

ちょうへい?といって戦争するための兵士を集めているらしい。

断ることはできないそうで私もママも泣いていた。

パパが出て行った日はご飯も食べずにふたりで泣いて何もできなかったと思う。


 「このままだったらパパが帰ってきたときに怒られちゃうね」


 ママがそう言って私にご飯を作ってくれた。


 「パパは優しいから怒らないよ?」


 「パパも怒るときがあるよ。リゼとママがずっと泣いてて病気になったりしたら怒られちゃう。頑張ってパパが帰って来るのを待とうね」


 パパが怒るところなんて想像もできなかったけどパパが帰ってきたときにまたすぐに前みたいに楽しく暮らしたい。

パパがいないときは私も頑張らないと。

次の日から食堂を再開した。

ママが料理を作って私が運ぶ。

私は運ぶお手伝いぐらいしかできてなかったかもしれない。

ママみたいに上手にはできなかったけどお客さんも手伝ってくれたので何とか食堂はつづけられた。


 2ヶ月ぐらいたったときに見たことのない怖そうなお客さんが2人来た。

戦争が終わりそうだという話を聞いてパパが帰ってくるまで頑張ろうという話をしていたところだった。

並んだ席だけど別々のテーブルに座ってたからお互いには知り合いじゃないと思うけど2人とも怒った顔で初めて来るお客さん。

その奥のお客さんに料理を運んで2人の間を通っているときに私はこけちゃって怒った顔の1人に料理をかけてしまった。

怖い顔のお客さんだから少しは緊張していたのはあったかもしれないけどでも横から押されたと思う。


 でもそんなことを言う前に「何をするんだ!」と怒鳴られた。

びっくりして涙が出ちゃったんだけど「泣いて許されることじゃないぞ!」とまた怒鳴られて頑張って涙を止めようと思ったんだけど止められなかった。

ママが謝って許してくれた。

許してくれたけど30分ぐらい怒られてたので他のお客さんへの料理を作ることはできなかった。


 次の日もそのふたりはお昼にきた。

今度は料理の中に髪の毛が入ってると怒られた。

またママがいっぱい謝って許してもらったけど他のお客さんへの料理は出せなかった。

いつも来るお客さんがかばってくれてそのふたりに文句を言ってくれたりもした。

でも次の日からそのいつも来るお客さんは来なくなって道で偶然会ったときは避けられている感じがした。


 そのふたりは何度もきて毎回怒鳴っていった。

スプーンに泥がついている、頼んだものと違う、変な味がする、色々な理由で怒鳴られて他のお客さんに料理をする時間がなくなった。

だんだんとお客さんが減っていった。

かばってそのふたりに怒ってくれたお客さんはみんな次の日には来なくなった。

夜起きてトイレに行くとママは泣いていた。


 その2人がまた来たときにママが「もう来ないでください」と言ってお店に入れなかった。

2人はニヤニヤしてたけどお店から出て行った。

次の日に違う男の人が2人きて「髪の毛が入ってるぞ!」と怒鳴った。

ママはまたいっぱい謝って許してもらった。

次の日にその2人がまた来て「スプーンに泥がついているぞ!」と怒鳴った。

ママはその場でしゃがんで泣いちゃった。

私が守ってあげないと、と思って2人に「もうこないでください」と言ったら凄く嫌な顔で手を握られて引っ張り上げられた。


 「誰に向かって口聞いてるんだ?あ!?」


 右手を捕まれて宙に浮いたままそう言われた。

怖かった。

泣いちゃいそうだった。

でもママが「申し訳ありません。娘には手を出さないでください」と謝って許してもらった。


 2人が帰ってお客さんもいなくなったときにママが泣きながら「ごめんね」と私に謝った。

ママが悪いわけじゃないのに。


 ママはお店を売ることにした。

パパを待ちたかったけどこれ以上お店を続けるお金が無くなったのだ。

お店を始めるときにお金を借りていてそれを返さないといけないのにこのままじゃ返せないらしい。

お店を売ってそのお金で返すことになった。

ママは他の食堂で働くと言っている。


 それになんであんな嫌がらせをするのかわかった。

このお店が邪魔らしい。

なんでも貴族の知り合いが近くで食堂をしていてそこのお客さんを私たちが奪っているようだ。

今まではパパがいたから怖くてこんなことはできなかったのかもしれない。


 お店を買ってくれる人がいると紹介してくれる人がいた。

その人に頼んで借金を返したら少しぐらいのお金は残る、できるだけ残してパパが帰ってきたらまた食堂を始めようとママが久しぶりに笑って言った。

私は嬉しくて「私も一緒に頑張る!」と宣言した。

そのためにはお金を残さないといけないしママがお仕事の間は家のことをいっぱいしないといけない。

でもまた家族で食堂をするためなら頑張れる。


 お店を売ったら引っ越ししなければならない。

新しい家はそんなに広くないので全部は持って行けない。

家の荷物をまとめたり処分したりして忙しかった。

「できるだけ荷物は少なくね」と言われたのでいるだけの服とか以外は売ることになった。

でもパパに誕生日にもらったペンダントだけは売らなかった。

私の1番大事なものだ。


 引っ越しが終わった。

新しい家は部屋は1つで狭かった。

だけどママとずっと一緒だし寝るときもギュッとしてくれたので嫌ではなかった。

パパが帰ってきたらちょっと狭いけど3人で並んで寝たら暖かいと思う。


 少しして食堂を買ってくれる人を紹介してくれる人が来た。

お店を買ってくれると言う人がやっぱり買わないと言ったらしい。

食堂が汚れすぎてると言われたらしいけど毎日掃除してたのだからそんなことはないはずだ。

何を言っても私たちのせいになってまた怒られた。

ママがまた泣いていた。


 お金を借りている人が来た。

食堂は借金の代わりに取り上げられたけど借りてたお金には足りないらしい。

お金を借りてお店を買っていくらか返してからそのお店を売ったのに足りない理由がわからなかった。

でも、りし?というものがあってそういうものなのだそうだ。

食堂は無くなったけど借金は無くならなかった。


 ママは毎日朝早くから遅くまで働いた。

私もできるだけ頑張ったけど働けるのはお手伝いぐらいしかなかった。

ママは大丈夫って言うけどあまりご飯を食べてないのを知っている。

たまに夜中に私の顔を撫でながら泣いているのも知っている。

私はどうしたらいいのかわからなかった。


 私は10歳になった。

なっただけで何もできない。

ママはずっと働いていてしんどそうで私もお手伝いなどをしたけど借金は返せそうになかった。

お金を貸してくれている人が借金奴隷にならないかと相談してきた。

なんでも借金奴隷になったら自由はなくなるけど決まった期間働けば借金が0になるのだ。

毎日働いても利子ぐらいにしかならないのでそれしか方法はないみたいだった。

ママだけという話だったけどそうなったら私は孤児院に行くかスラム街に住むしかなくなる。

ママと一緒にいられるならと私も借金奴隷になることになった。


 これから奴隷になる人が集められるというので馬車に乗せられて知らない村に連れて行かれた。

村の中でママと別れさせられる。

ひとりひとり契約しないといけないのだそうだ。

私の前に太った男の人が来て色々と説明をする。

わかったのは5年間借金奴隷として働かないといけないということだった。

私はまだ10歳だからできる仕事も少ないのでそんなにお金にはならないそうだ。

その分ママがお金を稼がなくてはならないので奴隷期間が増えたと聞かされた。

私のせいでと思うとママに悪い気がする。


 でも違う方法を教えてくれた。

私が借金奴隷じゃなくて犯罪奴隷になれば期間は1年間になるらしい。

本当は10歳で犯罪奴隷になるのは難しいのだけど特別にそういうことができる神官さんがいるらしい。

そう言われて優しそうなおじいさんが横に来た、この人が神官だそうだ。

犯罪奴隷は鉱山とかの危ないところで仕事をしなくてはいけないからすぐに死んじゃうことがあるって聞いたと言ってみた。

それは本当だけど10歳だと犯罪奴隷にはなれないことになっている、だからそういうところで働かせたらバレちゃうから逆に働けないんだよと言われた。

どこかの優しいお金持ちの家の中の仕事をしたらいいそうだ、命の危険はないらしい。

私が1年間そこで働いたらママは借金奴隷にもならなくていいと言われた。

私が奴隷になっている間にママはほかのお仕事でお金を稼いでたらパパが戻ってきたときに少しでも早く食堂を始められる。


 そう説得されて今まで私のために頑張ってくれていたママを助けるチャンスだと思った。

ママに聞こうかと思ったけど神官さんの時間がないそうなので犯罪奴隷になることにした。


 犯罪奴隷になるには魔石がいる。

その魔石を持って私の前に神官さんが立った。

本当なら裁判所などで罪を言い渡されて魔石が反応して犯罪奴隷になるそうだ。

だけど自ら罪を認めて犯罪奴隷になることを誓えば裁判所での審判はいらないそうだ。

魔石を持った神官さんが私に手をかざし「犯罪奴隷になることを認め誓いますか?」と言った。

教えてもらったとおりに「犯罪奴隷になることを認め誓います」と言うと何やら呪文が聞こえてきて魔石が少し光ったと思う。

神官さんの手から魔石はなくなっていて首に黒い痣ができていると教えられた。

これで私は犯罪奴隷になった。


 少し待ってるように言われた。

言われたら待ってるしかない、言葉に逆らえないのが自分でわかった。

今の私は神官さんの奴隷になっているらしい。

買われた人と奴隷契約をしてからその人の奴隷として過ごすのだそうだ。

じっと待ってたら女の人が来て私についてくるように言った。

言われた部屋に入るとママがいた。

ママの首にも黒い痣があった。

わけがわからなかった。


 「いやぁっっ!!な、何で、私が犯罪奴隷になったら娘は許してくれるって言ったじゃないですか!」


 「あぁ?母親が犯罪奴隷になって娘を1人だけ放り出したらかわいそうだろうが?生きていくこともできないなら奴隷になった方がましだろ?」


 さっきまで優しそうに見えたおじいさんの神官さんの顔がすごく怖い顔になっている。


 「そんな、約束が違う、私が借金奴隷じゃなくて犯罪奴隷になれば娘は奴隷にせずに解放して生活の面倒は見てくれると・・・」


 「そう思ったんだがなぁ、子供の犯罪奴隷は数が少ないんだ。そういう趣味の変態貴族に高く売れるんだよ。お前より価値があるんだぞ?解放するなんてもったいないじゃないか」


 「そ、そんなこと・・・お願いします、私は何でもしますから娘だけは許してください!」


 「ははっ、馬鹿だな、お前は。お前がどんなに頑張っても娘よりは安いんだよ。娘よりは安いがせめてお前も少しでも高く売られてくれよ」


 「せ、せめて娘と同じ人に・・・」


 「知らねえよ、娘は裏の特別ルートで売るからな。お前はオークション行きだ。同じ人間に買われることはまあないだろうよ」


 私は騙されていたことがわかった。

ママもだろう。

でももう2人とも契約して魔石が痣になった後だ、言うことには強制的に従わなければならない。

思わず涙が出てしまう、またママの邪魔をしてしまった。

ママが神官さんに襲いかかろうとした。


 「止まれ!」


 神官さんがそう言うだけでママの足は止まった。


 「跪け」


 ママが片膝をついてしゃがんだ。

こんな奴ら相手に逆らうことすらできないのだ。

絶望っていうのはこういうことなのかも、と思った。

他にも奴隷にしたい人がいるそうで神官さんが部屋を出て行った。


 どうしたらいいのかわからなくて何もできなくてママと一緒におびえていることしかできない。

そんなときに私と年齢の変わらなさそうな男の子が神官さんを引きずるように連れてきた。

商人さんと話をしているのを聞いていると私と同じような目にあいかけたけど反撃してやっつけたみたいだ、凄い。

しかも神官さんたちと話をして私たちまで奴隷になるのをやめさせようとしてくれた。

だけど犯罪奴隷になったら解放はすぐにはできないらしい。

結局神官さんたちの奴隷として売られるのではなくその男の子の奴隷になることになった、ママと一緒に。

さっき言われてた未来よりママと一緒なだけでも全然マシだ。

犯罪奴隷のままだけどホッとした。

あとはこの男の子が酷いことをしないことを祈るだけだ、命令には逆らえないのだから祈るしかできない。




 男の子の名前はティルといった。

私と同じ年ぐらいなのにもう冒険者として働いているらしい。

14歳っていうことにしてるから内緒でって笑ってた。

これからこの子の奴隷になるのだ、さすがに少し不安だけどママが「ティル様」と呼んだらそういう呼び方は照れくさいからしないでほしいと言われた。

それでママも私も「ティル君」と呼ぶことになった。


 隷属の首輪の解放方法がわかるまでは奴隷として過ごさなければならないけど命令するつもりはないと言ってくれる。

命令じゃなくて「○○してもらっていいかな?」みたいなお願いだと強制されずに普通に過ごせるようだ。

連絡がつくなら首輪の解放方法がわかるまで別のところで生活してもいいと言われたけどママが行く当てがないことを言ったらティル君の家に泊まらせてくれることになった。

モースさんとランケルさんという獣人の人たちもティルだったら大丈夫だと言ってくれた。

そこからティル君の家に着くまではあまり覚えていない。

疲れてたのか馬車の中でもずっと寝ちゃってたからだ。

ティル君とモースさんとランケルさんが住む町について別れるときに3人にお礼を言った。

「頑張ったな」と言ってモースさんが頭をなでてくれた。

私は自然に涙が出ていた。

横を見るとママも泣きながらお礼を言っていた。


 ティル君の家は凄く大きなお屋敷だった。

お父さんとお母さんがいるわけではなく自分で稼いだのだと聞いてびっくりした。

横には孤児院があってそこの子供たちとも仲がいいようだ。

奴隷になった私だけど私にはママがいる、そこの子供たちには親はいない、どっちが幸せなのかわからないけどそれでもみんな楽しそうに笑っていた。

最近泣いてばかりの気がする、私も笑って過ごせるようになりたい。


 オリビアさんとキャロさんという女の人たちに会ったときにティル君が奴隷を買ったと間違われて変な目で見られてた。

「ミリアさんに言ってやろ!」と言われてティル君が凄く焦ってたので恋人か何かかもしれない。

ティル君に「違うって説明してくれないかな?」とお願いされた。

こんなときでも命令じゃなくてお願いなのには少し笑ってしまったけどこれなら酷いことはされないだろうなって信用できた。


 屋敷には地下もあって何か作業をしているみたいだ。

ママが何か手伝うことがあったら、と言ったらそれよりご飯を作ってほしいと言われた。

作業をしている人たちの食事だけじゃなくてなんでも保存できるカバンがあってどれだけあっても困らないからというとママは腕によりをかけて作りますと張り切っていた。

久しぶりに料理を作る仕事、私もそのお手伝いをすることになった。


 作業をしている人たちは凄く食べるし作りすぎても保存できるということで余ることがない。

おまけにティル君は作ったことはなさそうなのに色々な料理を知っていてこういう料理を作ってほしいとかリクエストが来る。

失敗することも多いけど成功したら驚くほど美味しいものができたりするのだ。

材料はいっぱいあるし失敗しても怒られないし味見もかねて色々食べることができるし毎日が楽しい。

今の私のお気に入りは栗で作ったモンブランっていうケーキと生クリームのたっぷり入ったクレープ、あとは何のお肉か教えてくれなかったけど食べたことないぐらい美味しいお肉も食べさせてくれた。

ママは「もしかして?」と驚いた顔をして首をかしげてたけど心当たりがあるのかもしれない。

それを使ってお肉のサンドイッチをいっぱい作ったのも美味しかった。


 あとはママにも内緒のことがある。

ある日ティル君が屋敷の2階で嬉しそうに何かを作ってたのだ。

私はお掃除をしていたのだけどつい見てしまった。

そしてティル君が魔石を取り出したかと思うと身体が消えていった。

驚きのあまり声を出してしまったのだけどその声をティル君に聞かれてしまった。

身体が半分消えた状態のティル君が慌ててこっちに戻ってきた。


 「見た?」


 そう言われたらうなずくしかなかった。

だけどそれでも怒られることはなくちょっと悩んでいたようだけど話をしてくれた。


 「俺の特殊魔法なんだよ。あまり人に知られたくないからできれば内緒にしておいてほしいんだけどいいかな?」


 こんなときにまで命令をしないティル君に思わず笑ってしまった。


 「命令したらいいのに」


 それでもティル君は頭をなでて言った。


 「リゼもママも奴隷じゃないから絶対に命令はしないよ。できるだけ早く解放してあげるからね」


 みんながティル君を凄いって言うのがわかった気がした。

そして内緒にしておいて、と言って連れて行ってくれたところがまたさらに凄かった。


 部屋がいくつかあって2階もある建物の中に転移?という魔法で一瞬で移動した。

そこにはふかふかのベッドにソファー、広いお風呂に、台所には食べ物を冷やしたり凍らせたりする道具に見たことないコンロ、自動で掃除する道具や洗濯する道具に部屋を涼しくしたり暖かくしたりする道具、夢の世界に入ったのかと思うほどだった。

コンロや大きなお風呂などはお屋敷にもあってママが驚いていたのを覚えている。

今回手に入れたのはウォシュレット?とかいうトイレで使うものらしい。

なんでも特注で作ってもらって魔石を自分で組み込んだそうだ。

トイレの時に使うのだそうで使い方を教えてくれた。

便利だし使い心地はすごくいい。

でもたぶん新しい機械に魔石もいくつか使っているのでびっくりするほどの値段なんだろうなと思うと少し緊張した。


 さらには本棚があって色々な本まで並んでいた。

たまにここで本を読みながらひとりでゆっくり過ごしているのだという。

わたしもソファーに座って簡単な本を読ませてもらった。

ティル君が「口止め料だよ」と笑ってホットチョコレートという飲み物を入れてくれてそれはそれは甘くて美味しかった。


 それから私もたまにティル君と一緒にティル君が『別荘』と呼ぶここに来させてもらっている。

部屋の色々な道具の使い方を教えてもらって一通りは使えるようになったし新しくお風呂で使う細かい雨が降ってくるシャワーとか洗濯した後に外に干さないのに乾かす道具とかが増えていった。

この世の中にはこんなに便利なものがあるんだと驚いた。

でもここにはお店には売ってなかったりするものも多くて色々考えて自分で作った物も多いみたい。

1つの道具に高いって聞いたことのある魔石がいくつも使われてるそうなので珍しいのも当然だと思う。


 そんな道具は楽しいけど他にも一緒に本を読んだりするのも楽しい。

ティル君は文字とか計算とかも教えてくれて読める本も増えてきた。

こんな毎日なら犯罪奴隷のままでもいいかもなあ、と思ったりもする。

そんな気持ちもこの場所のこともママには内緒だ。

それにティル君との秘密の場所というのもなんだか楽しい。

でもいつかここでママと一緒に本を読んだりもしてみたいと思う。

 




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