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5³㎤の転移無双  作者: 清白
第2章 冒険者

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第4話 バラッドの町


 


 「え?ここって王都じゃないの?」


 次の日の朝、オリビアに町を案内してもらっているときに思わず声を上げた。

出かける前に院長に説明を受けているうちに少し話が食い違っている気がした理由がこれでわかった。

どうやら思っていたより西側に到着していたようだ。

ここはバラッドという町。

国家横断道路という魔の森の端を沿うようにこの大陸の全ての国が協力して作った全ての国を通る大きな道路沿いにある町だ。

ちなみに道路のこちら側の終点はこの国の王都にある。

10kmほど道ぞいに西に行くと川が流れており大きな橋がかけられている、それが隣のセブン国との国境になる。

魔の森の地形の関係か1年に1度、雨期で家から出られないほどの雨がこの辺り一帯に数日間降るがそれ以外は過ごしやすいという。

考えてみればだいたいの方角だけで進んできたのだ、よく町のあるところにでたものだ。

そもそも森を出てからさらに歩いて王都まで行くつもりだったので森を出てすぐの町が王都のわけがない。

バラッドの町に着かなくても森を出たらバラッドとメダグリアの間の街道には当たるはずだがあの蚊の治療をしてもらえたのだからここについてラッキーだったとしか言い様がない。


 バラッドは王都ほどでは無いがかなり大きな町だ。

北側、つまり森に近い方向に孤児院などの弱い者の住み家があるのはシックス国と変わりが無い。

もちろんここでも冒険者登録ができるし冒険者も多くいる。

少しの間でもここで冒険者をして色々経験してから王都に向かった方がいいんじゃないだろうか。

というか王都じゃなければいけない理由がないのだ、ここで生活基盤を作ってもいいかもしれない。


 町の中を案内してもらうと隣の国が近く道路が整備されているだけに商人などの往来が多くいろいろな物が売っている。

この国家横断道路は戦争に使ってはいけないと国際ルールもできている。

戦争はなくても冒険者からしたら飯の種には困らないようで魔物退治以外にも護衛や人捜しなど依頼には事欠かないそうだ。

首輪をしている者もよく見る。

その多くが獣人なのは見たくなかったがこれが事実なのだろう。


 奴隷。


 奴隷には借金奴隷と犯罪奴隷がいる。

町中で普段見る首輪をしている奴隷は借金奴隷だ。

お金を借りて返せなかったので一定期間奴隷として働く、軽犯罪を犯して賠償金などが払   えずに奴隷になる、そんな場合が多い。

元の世界を知っている身としては奴隷と聞いただけで拒否反応を示してしまうがこの世界ではそこまでのことではないようだ。

自由はなく強制労働のようなものだが食事などは与える義務があり一応人権はある。

ミリアは違ったが自ら借金奴隷になってお金を病気の家族に渡すなどの話はスラムでは少なくはない。


 犯罪奴隷のほうはまた別物だ。

基本は重大な犯罪を犯したものがなる。

死刑にするぐらいなら犯罪奴隷になって少しでも役に立て、というレベルのものだ。

裁判などで犯罪奴隷になることが決まれば神官に魔石を使った道具で契約させられる。

なんでも首に刺青のような痣ができて契約した相手の所有物ということになる。

もちろん人権などはない上に魔石の効力で命令に逆らうこともできなくなるのだそうだ。

犯罪奴隷になって危険な鉱山で死ぬまで働かされる、戦争の時に最前線に送られる、などの末路をたどる。

貴族などが買って人体実験の道具にされるなどの噂もあるぐらいだ。

犯罪奴隷になるぐらいなら死んだ方がマシ、と言われているようだが命令に逆らうこともできないとなると事実なのかもしれない。


 これらの基本的なことを聞いたのだがそれだけではないそうで、借金奴隷に関してはあまりに酷い扱いはしてはいけないことになっているのだが人族相手ならばまだしも獣人の奴隷にはルールを破っても黙認ということも多いらしい。

それ以前に奴隷ではなくても獣人は虐げたれているのだ。


 どっちの奴隷も獣人が多いがこれには理由がある。

借金奴隷に落ちる原因は金銭問題が一番多い、金銭的に困窮しているのは獣人の方が多い。

そして何より犯罪の重さを決める裁判官も捕まえる警察もそれなりの立場の人族だ。

そんな者たちが罪の重さを決めたり捕まえたりするのだから恣意的にもなるだろう。

 

 立場が上になるほど獣人嫌いが増す。

貴族ともなれば獣人=奴隷と思っている者すらいる。

ふだん関わり合いにならないし見ることがある獣人は自分の家で働く奴隷である獣人だけとなるとそう思うのもおかしくはない。


 以前住んでいたメダグリアの寮やこの孤児院のようなスラム街に近いところほど獣人を見かけることが多い。

その分会う機会も会話をする機会も増えるので獣人とは付き合わないなどと言ってたら生活が成り立たなくなる。

それでも差別がないわけではない。

貧しい自分よりさらに貧しい獣人を見て安心する者。

自分より立場が上の獣人を見ると何で獣人のくせに、と思う者は掃いて捨てるほど存在する。

建前としては獣人も平等に裁いていると言うが同じ罪を犯しても獣人の方が罪が重くなることは多く、容疑者が人族と獣人なら獣人が犯人だとの前提で捜査が行われる。


 さらには新しい鉱山が見つかった時期あたりに獣人が捕まったときの罪が重くなるのは偶然ではないだろう。

食料の窃盗で捕まったのに警備隊の前で暴れて隊員に傷を負わせたということで重犯罪になり犯罪奴隷として鉱山送りになる獣人が増える。

俗に言う『獣人狩り』というやつだ。

これは戦争が起こったときや貴族が多くの奴隷が必要になったときなどに行われる。

それがまかり通っているということだけでおかしいが反対すれば自分も狩られる側になると思えば声も上げすらい。

何とも胸くそ悪い話だ。


 そんな話も聞きながらだが他にも冒険者ギルドの場所、入っては行けない貴族街、おいしくて安くて量もある食堂、この辺りでは雨期があるのでそのときは家から出られないから準備をしておかなければならないこと、などいろいろと教えてもらう。

そういえば王都でミー姉が定食屋を開きたいと言っていた、やっぱりいつかは王都へ行こう。


 この日はお昼前には孤児院に戻り昼は子供たちと食べた。

ドラゴンの肉はやめておけと院長に言われたのでウサギの魔物の肉だ。

ホーンラビットという名前らしい。

子供たちは1回ドラゴンの肉を食べたから他の肉はおいしく感じなくなる、なんてことはもちろんなくホーンラビットの肉も喜んで食べていた。


 残りのマジックバッグができあがるまで1週間ぐらい、オリビアに頼んでいるポーションもそれぐらいには全部できる、その間はここにお世話になることになった。

もっと長く住んでてもいいと言われるがここでお世話になっていて自立したとも言えないのでなるべく早く出て行こうと思っている。


 子供たちは俺がいるとご飯が豪華だからいてほしい、と直接的に言うが出て行った後も肉ぐらいなら差し入れをすることにしよう。


 午後からは森の『別荘』に戻った。

ここにはお世話になった、森を抜けようとしているときはどれだけここに来たいと思ったことか。

だけど拠点をあの町にすると決めたのだ、捨てるわけではないが来ることも少なくなるだろう。

マジックバッグの容量も増えたことなのでここに保存しているドラゴンを含め荷物を取りに来たのだ。


 今使っている転移属性にした魔石を持つと直径10mほどの分量をマジックバッグに入れることができる。

その球体を変化させるといくつかに切り分けて冷凍していたドラゴンの体ももマジックバッグに入れられることができた。

他の冷凍していたまだ解体していない大量の魔物の肉、布団にテーブルに棚などの家具、何トンあったのかわからないが余裕で入った。


 後は魔石、先日急いでマジックバッグにするために大きめの魔石をいくつか持って行ったがまだ残っている。

1番大きなもので20㎝クラス、たしか体長10mぐらいのライオンの魔物から取れたやつだ。

この『別荘』の元の持ち主の大蜘蛛、氷の属性の魔石と同じぐらいの大きさでドラゴンの魔石は使ったので今の手持ちではこの2つが最大だろう。

他にも10㎝クラスならまだ10個ほどあるがこれぐらいなら森の奥まで行くとよく見かける魔物から取れるのでそこまでレアなわけではない。

氷の属性の魔石はマジックバッグの中は時間経過がないのでもう必要ないがかなり役にたった。

この後もここまで大きくなくていいので冷凍庫は使うかもしれないので大切に持っておこう。


 全部回収して外に出る。

『別荘』を外から眺めて感慨に浸る。

元々は大蜘蛛の巣だったが今では初めて住んだ自分の部屋みたいなものだ、部屋と言うより家か。

1人暮らしのようで居心地もよかった。

『転移』の魔石は置いておくのでたまには遊びに来るつもりだが町で活動してたらそんなにこれるわけではないだろう。

名残惜しいな・・・

そんなことを考えていたときにふと思い浮かんだ。


 馬鹿な考えかもしれない、でも失敗してもなんともならないのならやってみたらいい。

『転移』を使った。

20㎝クラスの魔石を転移属性にして目一杯の大きさで。

その瞬間、二階建てのアパート並みの大きさの『別荘』は消えていた。

マジックバッグに入ったのだ。

ドラゴンどころじゃない、重量が何トンあるかなんて想像もつかない大きさに重さ。

それが丸ごとマジックバッグに、魔法の凄さを実感していた。

もし無理なら部屋の間を『消去』で切断して一部屋だけでも試してみようと思っていたのだがそんな必要はなかったようだ。


 これでこの先野宿するぐらいならこの『別荘』に泊まることができる。

遠出するような依頼も受けられるのだ。

野宿は2度としないと心に決めていた俺にとってありがたいものが手に入ったのだ。

今回は別々に収納したがこの先は『別荘』の中に家具などを配置したまま収納すれば取り出せばすぐに泊まれるのでかなり便利だ。


 この場所にも『転移』の魔石は置いていく。

何よりこれだけ大きな『別荘』を山の斜面などに出せないのだ、絶対に置ける場所として確保しておいた方がいい。

森の中はこことドラゴンを狩ったところ。

魔物の出方も違うしこっちの方が森の外に近い。

このあたりに出てくる魔物は大体わかるので狩りや素材などを集めるときにも便利だろう。


 『別荘』は無くなったので別のところに『転移』の魔石を隠さないといけない。

ドラゴンを狩った場所と同じように隠すことにする。

地中に埋まって動きそうもない大きめの岩の中を『転移』でくり抜く。

5×5㎝の大きさを8回くり抜いて10×10㎝の大きさにする。

今まで『別荘』の部屋に置いていた、2の数字を彫った魔石をその空間に『転移』させて完成。

ちなみに1は寮の近くの冷蔵庫前、3はドラゴンを狩った場所、4はバラッドの町の孤児院の裏の森の中だ。

 もちろん対象の魔石は常に持っているが違う用途に使ってしまったりどれがどれかわからなくなるとまずいのでわかりやすく数字を彫ることにしたのだ。


 これでいつでもここにこれる。

この場所には『別荘』ももう無い。

なのになぜがまだ少し名残惜しい気がするのは気のせいだろう。

新たに町で生活していくことを心に決め、4と彫られた魔石を取り出して魔力を込め、現れた魔力のドアを通りバラッドの町に戻った。

 








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