戻ってきたけれど僕は贄だそうです
「お前が魔〇の兄であることは認めん!」「ふん!お前のようなやつが魔〇の兄だとは…魔〇様もお可哀想に。」「お前なんて居なければ良かったのに。お前は我が家の汚点よ!」
こんな記憶知らない。いやリオン・コルトリアになってからは聞いたことがない。きっと夢だろう。最後に
「お前が死んでくれて清々したよ」
といった男は何故か知らないが僕がとても慕っていた男だと思った。
「ハッ!」
目が覚めるとベットの上に寝かされていた。ここは…僕の部屋だ。いつの間に戻されたのだろう。僕の体は脂汗でびしょびしょだ。すると、
「リオン来たわよ…」
「母様!」
「リオン、目覚めたのね。良かったわ」
と言う母様の顔は青白い。
「どうかしたので」「あら!汗でびしょびしょじゃない!タオルを持ってくるわね」
母様は一度も僕の言葉を遮ることなんてなかった。本当にどうしたんだろう。時間が経つと母様が部屋に戻ってきて
「体拭くわね。」
「母様!やめてください!自分でふきます!」
と言ったけれど1歩遅かった。実は僕の体は戦闘などでできた切り傷やあざが沢山あったのだ。それを見ると母様はいきなり僕を抱きしめてきて
「あのまま逃げて欲しかった…あなたが逃げてもどうせ死ぬのは私くらいだと思うから。こんな目に会うんだったら逃げて欲しかった。」
「母様!やめてください。僕は母様に死んでなどほしくありません。生きていてほしいです。」
僕が優しく微笑むと母様は
「ありがとう。あなたには覚悟があるようね。母である私がこんな姿であってはいけないわね。本当の話をしましょう。」
母様は真剣な顔になってこちらを真っ直ぐ見てきた。そして懐から書状を出してきた。なにかの令状のようなものだ。
「コルトリア王国の君主 ガレリオ・コルトリア様へ 今宵勇者が我が城、魔王城へやってきた。そこでやつの様子を見ると私は気に入ってしまった。よって勇者を私にくれないか?ひとまず勇者は転移魔法で王都に送っておいた。強制では無いが返答によっては、我が軍を王都へ突入させることになるぞ。勇者が贄として再び魔王城に来るのを楽しみにしておる。魔王より」
読み終えると母は僕の答えを求めているような顔をしてきた。
「分かりました。いきましょう。僕はこの国が滅びる滅びないなどは知ったことではありませんが、母様のことは守りたいです。もちろんこの離れに仕えているもの達のことも。なんで僕に興味を持ったかは知りませんが、もうここに帰ることは難しいでしょう。母様、本当に15年間ありがとうございました。」
僕のことを見つめる瞳は潤んでいた。本当に僕はこの母の元に生まれたことは幸運だ。この離れのもの達にも挨拶をし、
いよいよ魔王軍が僕を迎えに来る日がやってきた。この日が来るまで一度も陛下は会いに来たことは無かった。
執事は来たがなんと内容は「聖剣を返せ!」だそうだ。大人しく返したが直接取りにも来ないことをしって本当に陛下…僕の父は僕のことを嫌っていることを知ってしまった。
僕はもう一度場所に乗り、正門へ向かい恐怖の魔王軍に会いに行った。扱い方は勇者送迎の時と変わらずだったが、今回は正門よりも前に降ろされた。きっと魔王軍に会いたくないのだろう。それを1番思っているのは僕だよ!とか考えているとあっという間に魔王軍が見える位置まできた。するとリーダーっぽい魔族が前に出て
「リオン・コルトリア様でお間違えないですね?」
「あぁ間違っていない」
「ではこちらへ」
魔法陣の上に来るように言われ魔法陣の上に立った。おそらく転移陣だと思われる。けれどこんな大人数で移動することができるとは、恐ろしいものだ。
「出発いたします」
視界が揺らいだ。