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偽物の勇者の旅立ち

僕は15歳になった。訓練を積み強くなって勇者として認められてきた時期だった。


「リオン、気をつけて行ってきなさい。」


と母が言ってくれた。笑顔で手を振りながら離れを出て王宮へ向かった。


実は今日聖剣を取りに王宮最深部に行くのだ。来月には魔王討伐の旅に出る。魔王を倒すのには聖剣は必須なのだ。王宮の入口には陛下の専属執事が立って僕のことを待ってくれていた。


「リオン様、お待ちしておりました。どうぞ中へ。陛下がお待ちです。」


執事は奥へ進んでいく、僕はこんな奥に来るのは初めてだ。執事の足がやっと止まったと思うとそこは陛下の自室だった。「お入りください」と急かされたので入ると書類に目を通している陛下が来た。


「へ、陛下?」


と声をかけると直ぐに書類仕事をやめこちらに駆け寄ってきた。


「リオン、久しぶりだな。こっちだ。」


と言うと陛下が先程まで座っていた椅子の横にあるレバーを下げると、椅子がずれ道が開いた。


「ここが王宮最深部への入口だ。」


「レバーを下げるだけじゃ見つかりませんか?」


「大丈夫じゃ。いつもは魔法で隠しておる。」


話をしているとすぐに最深部に来た。音が響いている。いきなり陛下は立ち止まり、僕に言った。


「これから先は一人で行きなさい。勇者となるための試験だ。わしはここで待っておる。聖剣を手に戻って来ることを信じておるぞ。」


陛下は珍しく笑顔を見せて僕を抱きしめてくれた。こんなことは初めてで陛下を突き飛ばしてしまった。怒られるのが怖くて先へ進んで行った。


薄暗かったので、勇者訓練の時に覚えた光魔法を使い進んで行った。奥に行くにつれて内装がボロボロになっていった。壁が崩れて叫んでしまって、その叫び声が反響して、また叫んでしまった。陛下に聞こえてたらどうしよう...と思いながら進んで行った。


扉があったので開けてみると、剣が置いてあった。錆ている剣、宝石がついているがボロボロだ。これが聖剣なのか?と思いながら手に取ってみると眩い光に包まれた。目を開けると宝石以外部分はピカピカになった。これが聖剣だと分かると聖剣を抱えて陛下の所へ戻っていった。


「おぉリオン。手に持っているのは聖剣か?見せてくれ」


満面の笑みで陛下は言った。なんでこんなに喜ぶが分からないが直ぐに見せた。


すると陛下の顔は青ざめていき、いきなり僕のことをビンタしてきた。何が起こったか分からないので戸惑っていると、


「リオン!わしがな昔兄上に見せていただいた聖剣の宝石の部分は綺麗な宝石だった!なのにお前はどうだ?ボロボロだ。お前は本物の勇者ではない!偽物だ!」


と言っている陛下の顔は真っ赤だった。そして、僕を置いて出ていってしまった。僕は聖剣を片手に持って陛下を追いかけた。王宮に戻ると陛下がいなくなっており、執事が「今日はお帰りください」と言って僕を追い出した。


離れに戻ると母様とアンが待っており、僕のことを暖かく慰めてくれた。


次の日の目覚めは母様の怒声だった。母様のあんな声は聞いたことがない。着替えて玄関に向かうと


「まだ1ヶ月待つと言ったでしょう!?なぜ今日なのですか!?」


「陛下のご命令です。理由までは存じません。けれどリオン様がに・せ・も・の勇者様だからじゃないですか?笑」


母様と兵士の会話だった。兵士が僕を侮辱する発言をするとほかの兵士も大声で笑っていた。


「街のものにも噂は広がっていますよ?諦めて連れてきてください。...おや?いらっしゃいますね。リオン様こちらの服にお着替えください。出発のお時間です。」


兵士が服を投げて渡してきた。僕なんて勇者だから今まで普通の態度で接してもらえてただけで本当は嫌われていたんだった。


「母様...僕着替えてきます!」


走って部屋へ行くと


「待ってリアン!」


と母様の声も聞こえたけれど振り切って逃げてきた。


僕が着替えて下に行くと出発する準備が出来ていた。母様とアン、ほかのメイド、使用人たちは泣いていた。僕のために泣いてくれて嬉しかった。


「今までありがとうございました」


深々と礼をして馬車へ乗った。僕は後ろを振り返らなかった。


王宮と平民街を分ける門を通ると馬車にたくさんの小石が投げつけられた。


「偽物!」

「嘘つき」

「俺たちを騙してたのか!詐欺師め!」


などたくさんの怒声が聞こえた。僕を応援する声なんてなかった。本当は4人で行くはずだった勇者パーティーも1人になってしまった。


僕の味方って本当に少ししかいなかったんだな。


「女神様、僕が幸せになるために頑張ってくれたんじゃないんですか?」

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