リオンの運命
僕が誕生して3日が経った。ここはコルトリア王国というらしい。
僕はコルトリア王国、第6王子のリオン・コルトリアらしい。けれど王子にしては質素な部屋でメイドや使用人も数人しかいない。
「リオン様お目覚めですか?」
この人は僕の専属メイドのアンだ。いつも僕の周りの世話をしてくれる。例えば
「ギャアアアアアアア」
と泣くと
「ミルクですね。少々お待ちください。」
と言って持って来てくれるのだ。すごいVIP待遇、前世ではこんなこと無かったのに。記憶は無いはずなのになんで覚えているんだろう、心がまだ覚えているのだろうか、とか考えているといきなり隣から
「お顔が不機嫌そうですね。そろそろ寝ましょうか。」
とアンが言うと子守唄を聞かせてくるのだ。結構気まずい。一応精神年齢は子供じゃないのでこの時は嫌いだ。
僕が寝たフリをするとアンが扉の方へ向かって、
「ジニー様、覗き見は良くないですよ。こちらへお越しください。」
どうやら母が来たそうだ。母の名前はジニー・コルトリア、第3王妃で元メイド。元々はメイドだったので後ろ盾もなく、王宮内では孤立している。だが、そんな辛い環境でも母はいつも笑顔だ。
「リオン元気だった?」
「とても元気で走り回っておられました。」
「それは良かったわ。……けれど深刻な問題が発生したの。リオンについてよ。」
いつも笑顔の母があんなに真剣な顔になるのは初めてだ。どんな問題なのだろう、と思っていると睡魔が襲ってきてしまった。この続きが気になるのに続きを聞くことは出来なかった。その内容を知ることが出来たのはなんと8年後。
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僕は8歳になった。色々なピンチがあったけれどここの生活になれることが出来た。今日は母様が直々に話したいことがあるそうなので庭園に来た。
庭園に生えている木は全て4年ほど前、母様と一緒に植えたものだ。あれから大きくなった。けれど目標の母様の身長までは届かない。この木が大きくなるのはいつ見られるのだろうか。
「待たせたわね」
母様はいつものワンピースではなく正装で来ていた。このあと何かあるのだろうか。
「大丈夫です。母様、何の用件でしょう?」
と言うと母は下を向いて、
「ごめんなさい!実は8年間いえなかったの!あなたはこれから勇者となるの。明日から勇者になるための訓練をするの。こんな直前になってしまってごめんなさい。」
いつになったら勇者の話が来ると思ったらまさかの訓練の直前だとは思わなかった。けれど僕は前を向いて
「母様。僕はその仕事受け入れます。僕のことが心配で黙っていてくれだでしょう?実はずっと前からその話は知っていました。僕も黙っていてごめんなさい」
すると母は穏やかな顔で
「この8年間であなたがこんないい子に育っていたなんて。母なのに気づいてあげられなかったわ。必ず元気な姿を見せてね。約束よ」
「えぇ。約束です」
母様と一緒に穏やかに笑った。