エピソード3
だから、彼女が戸上雄三を恨む理由はあった。
状況。
動機。
どう見ても彼女が犯人で決まりであった。
もっとも彼女の年齢は17歳。
未成年だ。
兄を彼の言葉を元に失っている。
情状酌量もある。
ただ。
ただ。
参内満男と同じ捜査一課の刑事で米倉隆二は
「彼女の話をよく聞いた方がいいな」
と告げた。
彼の懇意にしている……いや彼が持ち上げている迷探偵と言われる現場をいつも混乱させている白羽根圭一は
「彼女は殺人犯じゃないよ」
と防犯カメラなどを見てもあっさり告げている。
参内満男にすれば何時も外れ推理をする白羽根圭一の言葉通りにして探偵として扱う米倉隆二が理解できなかった。
だが米倉隆二は事件を解決する一手を打つのだ。
所謂、できる刑事である。
参内満男は息を吐きだし
「だから混乱するんだよなぁ」
と小さくぼやきながら座り直して。
「話を詳しくお聞きしたいんだが」
と告げた。
中島皆実も静かに頷くと
「私、兄を爆弾で死なせながら罪に問われていない戸上雄三を許せなかったんです」
と告げた。
「父はがっくりと力を失って後を追うように死んで……家をめちゃくちゃにしておきながら胸も傷めずのうのうと生きているんです」
参内満男は目を細めた。
その気持ちは全くわかるとは言わないが人として感情的には理解はできる。
中島皆実は息を吐きだし
「それでマッチングアプリで戸上雄三を見たという話を聞いて、私は彼にそのアプリで声をかけてホテルへ……睡眠薬入りのビールを飲ませて眠った後に手足をタオルで縛って爆弾を仕掛けて部屋を出ました」
と告げた。
「わかっています! 頭ではやってはいけないと分かっています! でも、許せなかったんです」
参内満男は少し考えて
「それで?」
と先を促した。
中島皆実は俯いて
「私が戸上雄三を殺して爆弾で部屋を爆破しました。私一人でやりました」
と言いハッとすると
「あ、爆弾はネットで購入して組み立てました」
と付け加えた。
彼女の背後の窓からは昇り始めた太陽の陽光が射し込み、少しして彼女の母親が警察官に付き添われて姿を見せた。
母親は蒼褪めて泣きながら彼女を見ると思いっきり頬を叩いた。
「なんて、馬鹿なことをしたの! 人様の命を奪うなんて!」
中島皆実は顔を歪めると
「だって、お兄ちゃんは殺されたんだよ! なのに警察は捕まえなかったんだよ!? どうして!? どうして!? お父さんだってお兄ちゃんが死んだせいで死んじゃって……なのにあの人女の子引っ掛けてラブホで笑ってるのよ!」
と悲しみをぶつけるように泣きながら叫んだ。
「悔しい! 悔しい! お母さんだってだからお兄ちゃんの命日にお墓いってあげないじゃん!」
母親は唇を噛み締めて中島皆実を強く抱きしめると
「ごめんなさい。貴女にこんな風に人を呪ったり憎んだりし続けてほしくなかったの」
と告げた。
「私だって悔しいし悲しいけど、だからってこんな事したら負けだと思ったのよ。もっとつらい目に合うと思ったのよ。ちゃんと言うべきだったわ」
中島皆実は喉を引き攣らせて座り込むと、両手で顔を覆い暫く泣き続けた。
「ごめんなさい……ごめんなさい。ごめんなさい」
漸く本当の言葉が心と声で出たのである。
参内満男は視線を伏せると深く息を吐きだして二人を立たせると待っていた警官に引き渡した。
裁かれるべき人間が裁かれず。
被害者が加害者として裁かれる。
理不尽だと思う。
だが罪は罪だ。
ひんやりとした冷気が足元から立ち上り何処かやりきれない気持ちを静寂が包み込んでいた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。