本編 宝石
米倉隆二は肩を竦めながら白羽根圭一を見ると
「塩沼由子か?」
と聞いた。
白羽根圭一は頷くと
「取り合えずね、その後に福山美鈴と川口亜美かな」
と告げた。
米倉隆二は車に向かいながら
「先ず一つは福山美鈴の犯人説を翻す気はないのか?」
凶器を川口亜美のところにあるのは大きいと思うが?
「それから塩沼由子の元が最優先の理由を聞きたいが」
普通は福山美鈴の近辺だろ?
と告げた。
白羽根圭一は頷いて
「先ず塩沼由子のところへ行くのは今回の事件じゃなくて野暮用」
それから福山美鈴が犯人だといった理由は
と車の助手席に座ると
「彼女の傷だけ浅かったから」
と告げた。
「塩沼由子の刺し傷は腹部と胸で二か所。川口亜美は胸」
2人とも致命傷だろ?
「でも福山美鈴は恐らく暫く意識が残っていたと思う」
米倉隆二はエンジンをかけてアクセルを踏みながら
「なるほどな、だが川口亜美のところへ持って行くほどではなかったと思うし例えばそうできたとしても血痕がノブにも床にもなかった」
拭き取った跡もな
と告げた。
白羽根圭一はクスッと笑うと
「それこそ、川口亜美もだろ?」
と返した。
米倉隆二は目を見開いた。
「え?」
白羽根圭一は背凭れに体を預けて前を見つめ
「川口亜美がまず自殺理由が分からない」
二人を殺したことはまだ彼女が死ぬ時点では誰も知らない
「何か理由があって覚悟の自殺なら……どうして自分が犯人だと凶器を持ちながら手袋をしてロッジの中の痕跡を消す理由があるんだ?」
と告げた。
「それこそ2人を刺して血に濡れた手でノブを回して車の中で自分を刺せばいい」
覚悟の自殺に痕跡を消す意味合いはない
「俺は福山美鈴は何かの理由があって2人を殺して覚悟の自殺をした」
ただ自分が死んだ後の家族のこととかを考えて誰か一番信頼できる人間に凶器の処理を頼んだんだと思う
「その人物の目星はついてる」
米倉隆二は車を走らせながら
「……誰だ?」
とそっと聞いた。
白羽根圭一は前を見つめたまま
「昨日の2時に最後の電話をかけてきた『夏』と言う人物だ」
と告げた。
「ただ、これはちゃんと調べないと断言まではできないけど」
米倉隆二はふっと笑むと
「と言うことは、携帯会社と福山美鈴の周辺だな」
と告げた。
白羽根圭一は頷き
「まあ、携帯を渡したから参内さんが先に動くかもしれないけど」
と告げた。
「カバンの中に麻薬と器具が入っていたからどちらにしても調べると思うけど」
米倉隆二は頷いて
「ああ、そうだな」
と答えた。
車は一時間ほど走り、都心にある塩沼由子の暮らしているマンションの前に着くと駐車場に停めて2人は彼女のマンションの管理人に話をして中へと入った。
部屋は2DKで入ってすぐ右手に脱衣所とユニットバスがあり左手にダイニングキッチンがあった。
そしてその奥に二つ部屋がある構造であった。
部屋の中は意外と片付いていた。
米倉隆二は見回して
「右手が仕事部屋で左が寝室か」
と告げた。
白羽根圭一は右側の仕事部屋の机の上のパソコンを立ち上げた。
自室のパソコンだったのでロックはかかっていなかった。
彼は息を吐きだすと
「手間が少し省けた」
と言い、メールを見ると
「やっぱり」
と小さく呟き机の中や本棚などを調べ始めた。
米倉隆二はそれを見ながら左側の寝室に入り
「何を探している?」
ヤクか?
と聞いた。
白羽根圭一は机の下なども見て息を吐きだすと
「ヤクは見つかるだろうね」
売る分がね
と言い
「それと宝石」
と告げた。
米倉隆二は驚いて
「宝石??」
と呟いた。
白羽根圭一は見つからない状態で息を吐きだしてダイニングキッチンに姿を見せると
「彼女、輸入会社で営業している」
恐らくその関係で海外から違法なものを入れたり出したりしていたんだと思う
と告げた。
「パソコンのメール」
そう言って指をさした。
米倉隆二はパソコンのメールを見て目を細めると
「なるほど」
と呟いた。
「ヤクはベッドのマットの間にあった」
だが宝石はなさそうだぞ
白羽根圭一は頷いてキッチンも調べ
「まさか……それも伝えたとか」
と呟くと脱衣所に行くと洗面台の蛇口を下げた。
が、水は流れなかった。
白羽根圭一は下を開くと排水のS字トラップの水抜きキャップを捩じって開けると
「二番煎じをしてくるとは思わなかったけど」
でもあの場所にいない人間なら分からなかったかも
と呟いた。
排水溝から袋を引きずり出して米倉隆二にいるキッチンへと姿を見せた。
「これ」
米倉隆二は袋を手に取り中を開けると目を見開いた。
「これは……宝石」
白羽根圭一は彼を見ると
「メールに海外の宝石ブローカーらしい人からのがあっただろ?」
恐らく違法に手に入れた宝石を売りさばいていたんだと思う
と告げた。
そして、拳大の一際大きなダイヤを手にすると
「これの持ち主は知っているんだ」
と言い
「こういうことがなかったら、探さなかったけどね」
と告げた。
米倉隆二は息を吐きだし
「誰か聞いておいておく」
ただ回収はさせてもらうからな
と告げた。
白羽根圭一は頷いた。
そして
「次は福山美鈴だね」
と告げた。
米倉隆二は頷き携帯を手にすると
「その前に鑑識と参内に知らせておく」
と告げた。
それに白羽根圭一は慌てて
「あ、だったら……さっき渡した携帯持ってきてもらうように言って」
と告げた。
米倉隆二は「わかった」と答えて電話を入れた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。