エピソード6
それに桑田聖子が
「違うわ!!」
と告げた。
「確かに最初は村岡くんが仲立ちしてくれていたけど……彼が去った後に恵美子が演劇部をやめるって言って文化祭なんか潰れればいいって去りかけたのよ!」
私もそう思って言いかけたけど彼女が恵美子を掴まえてもみ合いになって彼女が恵美子の腕を掴み損ねて過って落ちたのよ!」
彼女は息を吐きだすと
「ごめんなさい、私……犯人……実は柳原だと思ってた」
と告げた。
村岡翔一も息を吐きだして
「俺も柳原、お前だと思ってた」
と告げた。
それに柳原葵は驚いて
「何故!?」
と叫んだ。
村岡翔一は彼を見ると
「俺は演劇部の内紛をどうにかしたかった。でも柳原は我関せずだし、桐生は新入生だっていう九条ばかり庇うし、俺は3人を冷静に話し合わせるために集めたんだ」
だが
「九条は2人を見下して自分には絶大な味方がいると自分の言うことを聞けば良いと……柳原さんも私に逆らえないと言ったんだ」
晃は驚いて首を振ると
「葵は違う! 俺は……葵にずっと聞いてた。戸田さんや桑田さんの気持ちもわかるってずっと言ってた」
と叫んだ。
そうだ。
同じ演劇部で同じ苦労をしてきたから突然役を意味なく奪われる悔しさが分かっているのだ。
村岡翔一は頷いて
「ん、ごめんな……柳原。でも白羽根が犯人を教えてくれて……携帯が繋がらないのは何処かにジャミング装置があってその範囲外なら通じるかもしれないって電話を掛けに行く間に何かあったら頼むって言われて……気をかけていたら影が階段の手前に見えて白羽根を呼びに行きかけたらちょうど戻ってきて慌てて二人で駆け付けた」
と告げた。
白羽根圭一は息を吐きだし
「桐生さん、貴方と九条美姫さんが近隣で家族ぐるみの兄妹のように暮らしていたことも分かりました」
と言い
「そして、貴方が先生に無理やり頼み込んで桑田さんの主役の座を彼女に渡したんですよね。脚本家としての立場を利用して」
と告げた。
「その後の言い争いの時に九条美姫さんは過って落ちてしまった。貴方は演劇部の戸田さんと桑田さん、そしてもう一人男子部員が関わっていることを彼女から聞いていた」
桐生順一は座りながら
「ああ、美姫は屋上へ行く前に俺に電話をしてきた。俺に頼んでいたけど自分で男子部員を味方につけると言ってた。戸田や桑田に負けないと言っていたけど……飛び降りだと……絶対に落とされたんだと確信した」
と言い
「戸田と桑田と……そして、柳原だと思っていた。だが、本当のところ誰か分からなかった。だから探ろうとした」
と告げた。
白羽根圭一はそれに
「先ほどの会話でどちらがいたのかを確認しようとしたってことですね」
と告げた。
晃ははぁ~と息を吐きだした。
「そんな……」
柳原葵は晃を強く抱きしめて
「晃、本当にごめん」
と告げ、村岡翔一に晃を託すと桐生順一の元へ進み殴りつけた。
「桐生!! お前が悪いんじゃないか!! お前……役者が練習して練習して意味なく突然役を奪われる悔しさが分かってねぇんだよ!! 桑田だって戸田だってちゃんと理由があれば我慢もしたさ! でもな、意味もなくお前のわがままで役を奪われたらそりゃ腹もたつさ! 二人がやったことは間違っていた。だが最大の原因はお前が九条のわがままを聞きすぎたせいだ!! 戸田も桑田も許されないことをした。だがお前に復讐をする!? そんな権利は一ミリもない!! お前こそ一番の原因だ!!」
晃は激怒する柳原葵を見つめて小さく笑みを浮かべた。
「あの時も……そうやって怒ってくれたな。俺が本の虫だって…協調性のない子供はダメだって…先生に責められた時も……」
幼稚園で。
小学校で。
ずっと守ってくれていたのだ。
晃は笑んで見つめながらそのまま瞼を落とした。
俺の推理は外れっぱなしだったな。
俺にはきっと探偵は向いてないな。
晃は泣き叫ぶ柳原葵と村岡翔一の声を耳にクッタリと倒れ込んだ。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。