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迷探偵  作者: 如月いさみ
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エピソード6

 晃は身体を起こし戸口に視線を向けた。

 柳原葵も身体を起こして2人で顔を見合わせた。


 ベッドに横になっていたが眠れてはいなかったのだ。


 晃は息を飲み込んで

「誰だ?」

 と呼びかけた。


 それに焦った声が響いた。

「わ、悪い。開けなくてもいいから話を聞いてくれ……俺、犯人がわかったんだ」


 それに晃と柳原葵は顔を見合わせた。


 桐生順一の声であった。

 彼は怯えるような声で

「2階に上がって直ぐに皿を置いておいたんだけど心配になって見に行ったら皿はそのままだし桑田の返事がなくてきっと部屋に何か細工されていたんだと思う……それで犯人が分かったんだ。このままじゃ皆殺されるかもしれない」


 確か桑田聖子に焼肉の皿を持って行って置くのを見ている。

それが置きっぱなしで返事もないなんて最悪の想像が頭をよぎる。

 

 細工なんて矢と同じような何かがあったのかもしれない。


 晃は冷や汗が流れるのを感じた。

 恐らく同じ気持ちなのだろう。

 柳原葵も晃と同じように動けないでいた。

 犯人もわかったと言っているし、皆が殺されるってどういうことなのか。


 桐生順一は扉の向こうから

「もし、俺に何かあったら村岡に注意してくれ。考えればこのロッジの場所の情報を知っていたのは村岡だけだったんだ。連れてきた白羽根ってやつは村岡の仲間だと思う」

 と告げた。

「俺の部屋に開けて直ぐに細工できたのは場所を知っていた村岡だけなんだ」


 晃は「確かに」と思った。

柳原葵もハッとすると

「どうする? 晃」

 と告げた。


 それぞれ『誰が』来ても開けない、と言う話だった。

 だが。

 だが。

 それも犯人の片割れである白羽根圭一の忠告だ。


 柳原葵は息を吐きだして

「気になるけど」

 と呟いた。


 桐生順一は息を吐きだし

「俺は今から確認に行ってくる。後のことは頼む……2人は……明日の朝まで頑張れ」

 と告げた。


 柳原葵は「待ってくれ」と言うと

「わかった、俺らも付き合うだけ付き合う」

 と告げた。


 晃も息を飲み込むと

「そうだな、付き合った方がいいな。一人だけ行かせるわけにはいかないよな」

 と言い、扉を開けた。


 薄暗い廊下に桐生順一の姿があった。

 が、彼の顔には陰りがあって晃は彼の手にあるものに目を見開いた。


「ま、さか」

 晃がそう言った瞬間に脇腹に痛みが走った。


 晃は崩れ落ちながら桐生順一の顔を見上げた。


 まさか。

 まさか。

 心の何処かで肯定と否定とが交じり合いスパークした。


 倒れながら見つめる晃に桐生順一は表情を消し去って

「多田さんが『一見無関係に見えて実は他で関係があったって可能性もある』なんて言うからびっくりしてた。でもそれを向けた相手は俺ではなかったのが救いだったよ」

 と抑揚のない口調で告げた。


 晃は痛みを堪えながら足を掴んだ。

「に、逃げろ!! 葵!!」


 だが、柳原葵は舌打ちして晃を蹴ろうとした順一から庇うように抱きしめた。

「こいつは関係ないだろ!! やめろ!! それに戸田だって殺されるいわれはない!!」


 それに桐生順一は顔を歪めると

「お前も加担したくせに!!」

 屋上へ話し合いするとか言って呼び出したんだろ!!

 とナイフを振り上げた。


 晃は薄れゆく意識の中で

「やめろ―――!」

 と叫んだ。


 まさか。

 まさか。

 本当にまさか。


 桐生順一……彼がこの旅行を計画して戸田恵美子を殺したなんて。

反対に犯人を見つけてくれたと思ったのに。


 視界の中で自分の血に濡れたナイフの切っ先が部屋の電灯で煌めき空を走る。

 

晃は自分を庇う葵に

「逃げろ!!」

 と叫んだ。


 その時、扉が開く音が響き

「村岡くん! 白羽根さん!!」

 と桑田聖子が叫んだ。


 瞬間にそのナイフの動きが止まった。

 桐生順一は驚いて振り向き

「まさか!?」

 と動きかけて、吹っ飛んだ。


 戸口の方を見ると村岡翔一が蹴りの姿で立っていた。

 そして、隣に駆け付けた白羽根圭一が

「安心してください。もうすぐ救急と警察が来ます」

 と告げた。


 晃は意味が分からなかった。

2人ともずぶ濡れであった。


 村岡翔一は晃と柳原葵を守るように立ち

「俺は……犯人は柳原、お前だと思ってた」

 と告げた。


 柳原葵は目を見開き

「何故!?」

 と叫んだ。


 村岡翔一は桐生順一を睨み

「九条美姫を屋上へ呼び出したときに戸田と桑田と一緒にいたのは俺だ」

 と告げた。


 桐生順一は目を見開くと

「お、お前が……美姫を!!」

 と叫んだ。


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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